持ち家もクルマも資産ではない⁉ 確実に資産形成するために必要な「3つの要素」

  • 文:川畑明美
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資産は現金だけではない。資産価値のあるものを資産と呼ぶに値するが「売ればお金になるもの」を資産というのだ。takasuu-istock

ひとことで「資産」と言っても、その種類は様々ある。「売ればお金になるもの」を資産というのならば、車や家を売ればお金にはなる。だが筆者はマイホームやマイカーは資産だとは考えていない。保有しているだけでお金を生み出す「真の資産」をもつことが、安定した将来のためには必要だ。ところで、「資産」とは何だろう。筆者の言う「資産」の定義は、保有しているだけでお金を生み出すものだ。

そう考えると、マイホームやマイカーは資産には入らない。家や車は経年劣化するため、購入時と同じ価値を常に維持することは不可能だからだ。資産価値は時とともに下がってしまう。また「保有しているだけでお金を生み出すもの」とは、保有していれば値上がりするものを指すのだ。もちろん立地も管理も良く、ビンテージマンションと言われるほどの住宅ならば、資産になる可能性は高いが、そういう物件は希少価値だ。購入時よりも高く売れる車となると、もっとハードルが高い。

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マイカーを保有すると生涯で3,720万円お金がかかる

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マイカーを保有しているだけでランニングコストがかかる。しかも購入時よりも高く売るのはかなり難しい。負債と考えるべきだ。show999-istock

例えば、マイカーを「資産」だと考えた場合を考察してみよう。マイカーを保有すると、駐車場代や保険などランニングコストがかかる上に売却の際に価格が下がっていることが多い。そこを考えると費用がかかる「負債」と考えられる。クルマを所有すると生涯で約3,720万円もかかると試算できるのだ。


例えば20歳から70歳の50年間、マイカーを所有した場合で考えてみよしょう。クルマの買替えを7年に1回、250万円の車を買替えた場合、車両費だけで1,750万円。ガソリン代は月8,500円程度とすると510万円。自動車保険と車両保険で490万円。駐車代月1万2000円として、720万円。自動車税や自動車重量税で約250万円。合計すると3,720万円だ。月々に換算すると6万2000円にもなる。さらに外出時の高速代や駐車代も入れるともっとコストはかかる。


もちろんこれは、ある一例を試算したものであって、必ずこうなるものではないが、マイカーを所有することでランニングコストは、かなりかかる。マイカーは資産というよりは負債に近い。

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リセールバリューを考えて購入する

マイカーを購入する時は、「リセールバリュー」も意識して欲しい。リセールバリューとは、「購入したモノを再販する時の価格」のことだ。ここを意識すると新車ではなく中古車を選択した方が良くなる。皆が乗っている、いわゆる大衆車は新車で購入して3年で売却しても、リセールバリューは半額程度になってしまう。それよりもリセールバリューが良いクルマを買うことだ。中古でも欲しいという人が多い車種を購入することだ。


よくベンツの中古が良いと言われるのはこのようなことからだ。ベンツだったら、中古車でも欲しい方はたくさんいる。ただ、中古車でもベンツは高額だから必ずしもベンツが良いということではない。リセールバリューを意識して車種を選んで欲しいということだ。


クルマが趣味という方も少なくない。マイカーは負債にはなってしまうが、憧れのクルマに乗ることで得られる価値が高いのならば、自己投資になるだろう。お金は使うためにあることも考慮すべきだ。考えるべきは、人生で使えるお金には限りがあるということ。優先順位をよく考えて、あなたが一番欲しいものを購入することだ。

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マイホームの現在価値を調べよう

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マイホームも購入時よりも高く売れれば「資産」と言える。そのためにもマイホームの価格を定期的に調べることも重要だ。MarioGuti-istock

筆者は毎年資産表を作ることをお勧めしている。その資産表の中に、できればマイホームを売却したらいくらになるのか? それも調べて記載して欲しい。マイホームの価格の調べ方だが、レインズマーケットインフォメーションを活用するといい。国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営しているサイトで、直近一年間に売買された価格情報が検索できる。このサイトでおおよその価格が把握できる。


マイホームは一生ものだと思っている方も多いのだが、家も古くなれば修繕は必要だ。管理が徹底しているマンションならば良いのだが、管理が悪いマンションの価値が下がる。マンションを建て替えて新しくすることも可能だが、マンションの建て替えの事例は、全国でみても100件もない程度と本当にわずかだ。さらに建て替えの費用も必要になる。マンションも車と同じく「リセールバリュー」を意識することだ。ただし購入時よりも高く売るれるマンションを購入するには、立地を十分に吟味する必要がある。

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日本のマイホームは消耗品と理解する

再販する時に高く売れるとは、どんなマイホームなのか? まずマイホームを家と土地で考えてみよう。日本の場合、建物は「消耗品」と考えられている。どんな建物でも毎年価格が減少していく。税制では法定耐用年数が定められている。木造住宅では22年、鉄筋コンクリートで47年などだ。


つまり木造住宅の場合、22年で価値がなくなってしまい売却するのには土地の価格のみになってしまうのだ。大事なのは「値上がりする土地」にマイホームを購入しないと再販しても高く売るのは難しいということ。また、不動産価格も変化していくので毎年どのくらいの価値になっているのかを調べるのは、保有資産を管理する上で重要だ。


そういう理由で毎年1回ご自身の住むエリアでの売買価格を把握しておく必要があるのだ。新駅ができるなど再開発になると土地の価格も変化していく。売り時を逃さないようにすることも大切だ。もちろん筆者もマイホームの価値を調べている。ちなみに、以前住んでいたマンションは筆者が売却した価格よりもさらに高値で売りにでていた。

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資産形成するために必要な「3つの要素」

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マイカーやマイホームを資産とするのはハードルが高い。株や債券を運用する方が少額からトライできる。JGalione-istock

資産形成とは、自分の資産を増やす目的で貯蓄したり、投資したりすることをいう。運用するほどの資産がない人は、まず運用するための土台を作る必要がある。金融資産が1000万円までは、資産運用の前段階の資産形成と言えるだろう。資産形成するために必要なのは次の3要素だ。


1)積立期間

2)適用金利

3)積立金額


資産を形成する時に重要なのが「期間」だ。期間が短い場合、金利や投資金額を増やさなければいけない。資産形成をするタイミングが遅くなるほど積立金額が大きくなる。さらに積立の期間が短いほど、高い金利で運用することにもなるだろう。高い金利で運用するというのは、それだけリスクも大きくなる。


このように話すと、60歳代以上の方は高い金利で運用しなければならないと誤解してしまう。そうではなく、リスクが取れるのは、労働収入がある人と考えて欲しい。既に労働収入がないのならば、高い金利のリスクを取ると資産そのものを失ってしまうこともあると理解するべきだ。くれぐれも誤解のないように。

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パーキンソンの法則を上手く利用する

大きなリクスを取らなくても確実に資産を増やしていく方法はある。まずは、お金を貯められる習慣を作ろう。お金が貯められない人は、収入から支出を差し引いた残りを貯めようとする傾向にある。人間は目先の利益に目が行きがちなのを知ることだ。「お金を残す」というのは、とても難しい作業なのだ。


パーキンソンの法則をご存じだろうか。「支出の額は収入の額に達するまで膨張する」という法則だ。人は、与えられたものを残すことなく使い切ろうとしてしまう性質があるのだ。だから上手にお金を貯めて行くには、ある程度強制力のある仕組みを作ることだ。つまり、貯蓄する分を収入から先取りすること。


使う前に貯蓄に回すということで「最初からもっていないお金」として考えるからだ。先に貯蓄に回すとパーキンソンの法則のように残ったお金でやりくりして生活しようとするのだ。「使えるお金が減ってしまう」と嫌がる方もいるが、実際にやってみると案外ストレスを感じることは少ない。逆にお金が貯まっている喜びの方が大きいものだ。

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/