カリブ海の国々で砂糖製造の副産物としてつくられてきたラムは、トラディショナルラムとアグリコールラムとに大きく分けられる。前者の原料はサトウキビの搾り汁を煮詰めて砂糖となる結晶を取り出した後に残る糖蜜で、後者はサトウキビ100%のジュースからつくる。手間とコストがかかる後者の生産量は、世界で流通するうちのわずか数%にすぎない。
1.口の中いっぱいに広がる、サトウキビの爽やかな甘さ
沖縄県伊江島でつくられるそんなアグリコールラムが、同島の伊江村産サトウキビを使った「イエラム サンタマリア クリスタル」。一面のサトウキビ畑が目の前に広がるような、甘くフレッシュな香りと芳醇な味わいが特徴の、飲み方を選ばないホワイトラムだ。
2.かつての一大サトウキビ産地、南国高知で生まれた樽熟ラム
一方、菊水酒造の「セブンシーズ ゴールド」は、高知県黒潮町などで栽培されるサトウキビのジュースをシロップ状に濃縮したハイテストモラセスを原料につくられる。オーク樽での熟成に由来するクリーミーな香りや、サトウキビの優しい甘さが感じられる、まろやかな味わいの琥珀色のゴールドラムだ。
3.国産ラムの実力派が贈る、華やかな香味のゴールドラム
もう1本、紹介したいのが、滋賀県大津市でつくられる「ナインリーヴズ エンジェルズハーフ」。原料には沖縄産の黒糖を使用。モルトウイスキー同様に銅製ポットスチル(単式蒸留器)で2回蒸留を行った後、オークの新樽で熟成させた香り高きラムだ。
寒い冬にはホットラムなど、さまざまな飲み方を楽しめるのがラムの魅力。とはいえこちらは、まずはストレートやロックでその香味を堪能してほしい。
●今月の選酒人:西田嘉孝
ウイスキーライター。ウイスキー専門誌『Whisky Galore』や『Pen』などのライフスタイル誌、ウェブメディアなどで執筆。2019年からスタートしたTWSC(東京ウイスキー&スピリッツコンペティション)では審査員も務める。
※この記事はPen 2022年1月号「CREATOR AWARDS 2021」特集より再編集した記事です。