時計とクルマのコラボレーションは珍しくないが、これほどアバンギャルドなモデルは、さすがロジェ・デュブイというほかない。2017年からランボルギーニのレース部門であるスクアドラ・コルセと提携し、独創的なスタイルの限定モデルを発表してきたが、今回新たに登場したのはカーキグリーンにオレンジのアウトラインで彩られた「エクスカリバー スパイダー ウラカン EVO2」だ。
「エクスカリバー」はベゼルが特徴的なロジェ・デュブイのシグネチャーコレクション。「スパイダー」は新しいスタイルのスケルトンシリーズを意味する。それに続く「ウラカン」(スペイン語でハリケーンの意味)はクルマ好きには説明不要だが、V型10気筒5.2リッターエンジンを搭載した大排気量のスーパーカー。なかでも「EVO」は世界で転戦するワンメイクレース仕様を意味しており、「EVO2」はその進化形ということになる。
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ダイナミックで複雑かつ完成度の高いデザイン
ロジェ・デュブイの「ウラカン」は2019年から加わったシリーズであり、地表に漂う空気を切り裂くように疾走するクサビ形モンスターマシンのデザインコードを随所に導入。ダイヤルはダッシュボードの雰囲気をアレンジしている他、正面でクロスするブリッジはV10エンジンのストラットバーをイメージ。その背後には、横長の六角形を連ねた「ウラカン」特有のハニカムモチーフ(蜂の巣)が見られる。6時位置の日付表示もスピードメーターと同じフォントを使用。ケースサイドのリューズもレーシングナットを模している。
カタチだけでなく、ケースの素材も「ウラカン」のモノコックシャーシなどと同じSMCカーボン(炭素繊維)を採用。ベゼルだけはチタンをDLC加工して表面硬度を高めており、傷がつきにくい。いずれも超軽量で耐久性にも優れている。
ムーブメントは「キャリバーRD630」を搭載。12時位置のテンプを手前に、12度の角度で沈めたように配置していることも際立った特徴だ。時計を腕に着けた際に、テンプが重力の影響を受けにくい水平位置で往復振動するように設計されたという。主ゼンマイを収めた香箱をふたつ備えたツインバレルでパワーリザーブは約60時間だが、これらの要素をすべて左右完全対称にレイアウト。ダイナミックかつ複雑ではあっても、バランスの取れた完成度の高いデザインになっている。
こうした「ウラカン」のスタイルを堅持しながら、新作はカーキグリーンをベースカラーとして、各所を鮮烈なオレンジで縁取りしている。時分針の先端と秒針もオレンジ。モンスタースーパーカーにふさわしい過激で前衛的なスタイルに、不撓不屈のファイティングスピリットが加わったといえるかもしれない。直径45㎜のラージケースも強靱でパワフルな印象を与える。
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ランボルギーニとのコラボで進歩を“加速”
ロジェ・デュブイは、スイス・ジュネーブで1995年に創立。天才時計師のロジェ・デュブイと稀代の起業家がコンビとなり、トゥールビヨンをふたつ搭載したスケルトンなど、時計通も驚愕する革新的なモデルを展開してきた。2008年からリシュモングループに参加しているが、20数年という短期間になんと33種類にも及ぶムーブメントを自社開発・製造してきた異色のマニュファクチュールだ。
来夏発売予定の「エクスカリバー スパイダー カウンタック DT/X」でも、ふたつのフライングトゥールビヨンをそれぞれ90度の角度を付けて斜めに配置した。上方に跳ね上げるシザードアをイメージさせる奇想天外な構造を実現している。洗練されたアバンギャルドを追求する伝統にいささかも変わりないが、新時代にふさわしい最先端の機械工学や材料学などが加わったと解釈できる。ランボルギーニとのコラボレーションが、その進歩をまさに“加速”させたといえるだろう。
問い合わせ先/ロジェ・デュブイ TEL:0120-151-995