明確な目的がなくても、つい足を向けてしまう場所や店は誰にでもあるだろう。東京の大人スタイルを代表するファッションブランドのオーラリーを一手に担う岩井良太デザイナーの場合は、それが仕事場のごく近くにある。古着とモードが一体になり、さらにドレスウエアも加わりノンジャンルな世界を形成する「ストリップス エスティー」である。
「個人的によく行く店です。週イチくらいで行くのではないでしょうか。僕にとってはコンビニより親しみがある場所なんです」
そう語る岩井デザイナーは若い頃に古着店でアルバイトしていた。現在の作風もミリタリーウエアやワークウエアなど歴史的な衣服のエッセンスが色濃い。ただし彼がこの店に行くのは、仕事のリサーチが目的ではないらしい。いわく、「気分転換になります」。
「デザインの仕事で煮詰まっていても、ここに行くと純粋な気持ちに切り替わる。古着は上品で、仕入れに意志を感じます。服の量があるのではありませんが、大きい古着店でものを見るよりもいい気分でいられるのです」
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玄人ウケする店、と岩井デザイナーが称するようにファッション全般に関心があり、どのジャンルもフラットな目線で眺められる人に向く店といえるだろう。大阪の古着店「フェザーズゴッファ」らを手掛ける会社が2019年に東京・南青山に誕生させたコンセプトショップだ。
古着は1950〜60年代から現在に至るまでの、状態がよく高品位なもの。モードはウェールズ・ボナーやジャックムスらの海外の新進気鋭を扱う。さらに本格的なドレスウエアまで取り扱われ、コンパクトな店内が多様なメンズウエアでひしめき合う。まさしく“服好き”が一着一着見て回りたくなる濃い品揃えだ。
取り扱いブランドのなかでとくにユニークなのは、19世紀末から20世紀初頭の衣服を蘇らせるフランスのオーダー服、リュテス。たとえ高額になっても生地から縫製までフランス製を追求するこのブランドの品を、レディメイドで購入できる。
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実は岩井デザイナーに都内のお薦め店を幾つか挙げていただいたとき、「ここが皆さんにご紹介したい第一希望」と言われたのがストリップス エスティーだった。なぜなら「僕が本当によくいく店だから」。不器用なまでにモノづくりに没頭する彼が心底愛するこの店があるのは、骨董通りから一歩曲がった路地沿い。あなたが“服好き”なら、きっと足を運ぶ意義がある。
strips st
東京都港区南青山5-17-13櫻井ビル1F
営業:13時〜19時
定休:水曜
TEL:03-6427-4529

ファッションレポーター/フォトグラファー
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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