【着る/知る】Vol.120 オーラリー岩井良太デザイナーが足繁く通う、古着×先端モードの名店

  • 写真・文:高橋一史
Share:
東京・南青山の路地奥にひっそりと佇む、「ストリップス エスティー」。

明確な目的がなくても、つい足を向けてしまう場所や店は誰にでもあるだろう。東京の大人スタイルを代表するファッションブランドのオーラリーを一手に担う岩井良太デザイナーの場合は、それが仕事場のごく近くにある。古着とモードが一体になり、さらにドレスウエアも加わりノンジャンルな世界を形成する「ストリップス エスティー」である。
「個人的によく行く店です。週イチくらいで行くのではないでしょうか。僕にとってはコンビニより親しみがある場所なんです」
そう語る岩井デザイナーは若い頃に古着店でアルバイトしていた。現在の作風もミリタリーウエアやワークウエアなど歴史的な衣服のエッセンスが色濃い。ただし彼がこの店に行くのは、仕事のリサーチが目的ではないらしい。いわく、「気分転換になります」。
「デザインの仕事で煮詰まっていても、ここに行くと純粋な気持ちに切り替わる。古着は上品で、仕入れに意志を感じます。服の量があるのではありませんが、大きい古着店でものを見るよりもいい気分でいられるのです」

DSC00387-ARW_DxO_DeepPRIME.jpg

トルソーが着ているジャケットはフランスのリュテス。作家エミール・ゾラが着ていたジャケットが再現されたもの。

DSC00400-ARW_DxO_DeepPRIME.jpg

店内奥の部屋は主に海外の気鋭モードのセレクション。ガラスケース内にはビンテージ眼鏡やジュエリーが並ぶ。

---fadeinPager---

玄人ウケする店、と岩井デザイナーが称するようにファッション全般に関心があり、どのジャンルもフラットな目線で眺められる人に向く店といえるだろう。大阪の古着店「フェザーズゴッファ」らを手掛ける会社が2019年に東京・南青山に誕生させたコンセプトショップだ。

古着は1950〜60年代から現在に至るまでの、状態がよく高品位なもの。モードはウェールズ・ボナーやジャックムスらの海外の新進気鋭を扱う。さらに本格的なドレスウエアまで取り扱われ、コンパクトな店内が多様なメンズウエアでひしめき合う。まさしく“服好き”が一着一着見て回りたくなる濃い品揃えだ。
取り扱いブランドのなかでとくにユニークなのは、19世紀末から20世紀初頭の衣服を蘇らせるフランスのオーダー服、リュテス。たとえ高額になっても生地から縫製までフランス製を追求するこのブランドの品を、レディメイドで購入できる。

DSC00450-ARW_DxO_DeepPRIME.jpg

エルメスの古着ダッフルコート。いますぐ着たい感性の一着だ。¥132,000(税込)

DSC00452-ARW_DxO_DeepPRIME.jpg

ノーネーム品からメゾンブランドまで、わけ隔てなく取り扱われている。

DSC00454-ARW_DxO_DeepPRIME.jpg

配色とウール生地の乾いた風合いが秀逸な70年代ラコステのブルゾン。¥38,500(税込)

DSC00458-ARW_DxO_DeepPRIME.jpg

60年代フランスのスラックス。股上が深くタック入りで現在のファッション傾向によく合う。¥22,000(税込)

DSC00462-ARW_DxO_DeepPRIME.jpg

マーベルトつきでボタンフロントの丁寧な仕立て。

---fadeinPager---

DSC00474-ARW_DxO_DeepPRIME.jpg

イギリスの若きメンズブランド、ウェールズ・ボナーのラインアップ。70年代的感性が息づき、世界的に注目度が高い。左から、ニット¥47,300(税込)、カーディガン¥95,700(税込)、パンツ¥68,200(税込)

DSC00483-ARW_DxO_DeepPRIME.jpg

系列グループが運営する大阪・心斎橋パルコ内の店「Q」のオリジナルウエア。ハリスツイードのジャケット2点ともに、¥107,000(税込)

DSC00492-ARW_DxO_DeepPRIME.jpg

取り扱いの日本製ドレスウエア。シャツは大阪・中ノ島に居を構えるビスポークシャツのレスレストンへの別注品。手前¥47,300(税込)、奥¥49,500(税込)。その奥に並ぶスーツは大阪・北浜にビスポークテーラーショップがあるサルトリア・ラファニエッロへの同じく別注品。

実は岩井デザイナーに都内のお薦め店を幾つか挙げていただいたとき、「ここが皆さんにご紹介したい第一希望」と言われたのがストリップス エスティーだった。なぜなら「僕が本当によくいく店だから」。不器用なまでにモノづくりに没頭する彼が心底愛するこの店があるのは、骨董通りから一歩曲がった路地沿い。あなたが“服好き”なら、きっと足を運ぶ意義がある。

strips st

東京都港区南青山5-17-13櫻井ビル1F
営業:13時〜19時
定休:水曜
TEL:03-6427-4529

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。