Pen クリエイター・アワード、2021年の受賞者がいよいよ発表! 今年は外部から審査員を招き、7組の受賞者が決定。さらに審査員それぞれの個人賞で6組が選ばれた。CREATOR AWARDS 2021特設サイトはこちら。
審査員特別賞 川上典李子 選
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今後の発展が期待される農業とテクノロジー分野。農家の抱える課題をテクノロジーで「変えてしまう」のではなく、現場の小さなニーズを拾い、既存の仕組みで解決するアイデアに共感。
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農家や工事現場でお馴染みの通称「ねこ車」。傾斜地や凸凹道を人力で押すのは重労働だが、電動ならもっと楽に移動できるのではないか。そんな現場のニーズに応え、なおかつ「後付けできる汎用のキットなら、誰もが手持ちのねこ車を電動に改造できる」という、目からウロコの発想をかたちにしたのが、ねこ車電動化キット「E-Cat Kit」である。
考案したのは、不整地用ハードウェアの開発を手がける「キューボレックス」代表の寺嶋瑞仁。高専ロボコンで全国準優勝の経験もある寺嶋は、大学在学中に雪国生活の不便さから、クローラー(無限軌道・キャタピラー)をスケートボードに取り付けた電動スケボー「CuBoard」を製作。世界最小の雪上移動手段として発表すると、あのジェームズ・ダイソンにも絶賛された。
既存の道具を電動化するE-Cat Kitの発想と、不整地に強いモビリティであるCuBoardの技術とを併せもつのが、ラジコンで操作ができる汎用クローラーキット「CuGo」シリーズだ。最新作の「CuGoMEGA」は、コンテナを4つ搭載できる大型モデル。農地での運搬はもちろん、林業など山間部への導入や、草刈り刃を装着して自動除草機にカスタマイズしたり、レーダーを載せて被災地の地中探査ロボットとして運用されたりと、既にさまざまな現場で活躍し、支持を得ている。
「完成品ではなく半完成品とすることで現場での即時対応力をもたせられるのがキット販売の目的」と、寺嶋は語る。たとえば、ねこ車は地域や作業内容によって形状が異なるため、電動式を普及させるにはマーケットがニッチすぎる。そこで、規格化されていない他社製品にも後付けでき、農家などエンジニアでない人が簡単に扱えるような仕組みをつくった。
「不整地で求められるものは一律ではありません。現場は無限にあるので、対応力を上げるには、普段からそこで使われているものと接続できることが重要です」
E-Cat KitはJAでも取り扱いが広がり、CuGoMEGAはゼネコンや大学からも「使ってみたい」というオファーや問い合わせが引きも切らない。
「現場からフィードバックをもらい、新しい要素や技術を取り入れて、キットをさらにカスタマイズできるようユニット化していくのが目標です。僕らは顧客を開発仲間だと思ってますから、顧客が自らどんどんつくり込んでいけるような、ものづくりのサイクルをつくれれば最高です」
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※この記事はPen 2022年1月号「CREATOR AWARDS 2021」特集より再編集した記事です。