スニーカーの語源とは? アメリカの老舗シューズブランド、ケッズの歴史を振り返る

  • 文:小暮昌弘(LOST & FOUND)
  • 写真:宇田川 淳
  • スタイリング:井藤成一
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ケッズに残されていた古い広告資料を元にして、シップス エニィとダブルネームで特別に製作されたデッキシューズ。モデル名は「メインセイル」。プレッピーファッションで注目されたデッキシューズのデザインを踏襲。キャンバスのアッパー素材に、ラバーソールを備えた内羽根のデザイン。どんなボトムスやスタイルにも合う汎用性を持つシューズだ。「どんな人にも、どんな場所にも、どんな時にも似合う服」を謳うシップス エニィらしいセレクションではないか。¥9,680(税込)/シップス エニィ×ケッズ

「大人の名品図鑑」スニーカー編 #12

スニーカーブームが続くなか、2021年10月にはマイケル・ジョーダンが現役時代に履いたシューズが史上最高額の約150万ドルで落札された。まだまだスニーカーにまつわる話題は尽きない。今回は好評だったスニーカー編の第二弾をお届けする。

クラシックな佇まいを備えたローテクスニーカーの多くは、「バルカナイズ製法」で製作される。これは、靴底にゴムを高温接着する技術を指すが、この製法が発見されたのは偶然からだった。早くからゴム製品の加工に挑んでいたアメリカのチャールズ・グッドイヤーは、1839年、硫黄とゴムを混ぜて実験している最中に、ストーブの上にその混合物を落としたままにしてしまう。気付いて拾い上げると、ゴムは適度な弾力をもっていた。これにヒントを得て、グッドイヤーはシューズ本体とソールの間にまだ固まっていないゴムをはさみ、専用の釜に入れて高温で圧力を加えながら、硫黄などの加硫剤を加えてゴムを硬化させるという「バルカナイズ」製法を開発した。当初は自転車などのタイヤ製造工場が余ったゴム素材でシューズを製作したが、これがスニーカー製造の始まりと言われている。

アメリカで自転車やクルマのタイヤを生産していたゴムメーカー9社が合併し設立したのが、USラバーカンパニー。その会社から1916年に誕生したシューズブランドがケッズだ。ブランド名は“kids(子供)”と“ラテン語の”ped(足)”を組み合わせたもので、発売当時は相場の1/10の価格帯でシューズを発売し、「アメリカの子どもはケッズで育つ」と言われるほど人気を集めたブランドだ。

ちなみに、スニーカーとは英語の「sneak(忍び寄る)」という言葉に起源をもつとよく言われる。柔らかいゴム素材のソールなら音もなく忍び寄ることができることから、「スニーカー(sneaker)」という言葉が生まれたのだ。そして、ケッズが「スニーカーという言葉を作った」という説も喧伝されているが、それは事実ではないとするのが『スニーカーの文化史』(フィルムアート社)の著者ニコラス・スミス。同書には、イギリスで1874年に発行された小説『イン・ストレンジ・カンパニー』で、アメリカでは1893年から95年に刊行された辞書『スタンダード・ディクショナリー・オブ・ザ・イングリッシュ・ランゲージ』にすでに「スニーカー」という言葉は掲載されていると書かれている。ともあれ、ケッズは「スニーカー」という言葉を作ったわけではないかもしれないが、それをアメリカで一挙に広めたブランドであることは間違いないだろう。

誕生以来、ケッズのシューズはテニス、野球、サッカーなどのトレーニング用、あるいはスポーツという枠組みを超え、カジュアルシューズとして男性にも女性も履かれるようになり、1949年にはプロ仕様のケッズとしてプロケッズを展開した。同じころケッズと人気を二分していたのがコンバース。ニューヨークを中心にした東海岸ではケッズ、西海岸のカリフォルニアではコンバース派が人気だったことから「東のコンバース、西のケッズ」と呼ばれていた。ちなみにプロケッズの「ロイヤルプラス」の復刻バージョンは、80年代から90年代にかけてコロンビアで生産されていたモデルが終了する。そのシューズを90年代に藤原ヒロシが「ラストコロンビア」と命名したことで、マニアはこぞって買い集めた。90年代がブームのいま、再度注目されてもいいモデルかもしれない。

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マリリン・モンローからテイラー・スウィフトまで

このケッズを愛用していた有名な女優がいる。

マリリン・モンローだ。1926年ロサンゼルス生まれ、『ナイアガラ』(1953年)『紳士は金髪がお好き』(53年)『七年目の浮気』(55年)などの代表作をもち、“永遠のセックス・シンボル”と言われた女優だ。そんな彼女が履いたのがケッズのブランド第一弾モデルである「チャンピオン・オックスフォード」。耳付きのジーンズをロールアップさせて、ダークカラー(たぶんネイビーだろう)のこのモデルを履いているモノクロ写真が多く残されている。ちなみに最近では、アメリカの人気歌手テイラー・スウィフトがこのモデルを履いたことで注目を集めている。

今回紹介するのは、古い広告写真からひも解いてシップス エニィが別注にした「メインセイル」というモデルだ。1960年代から70年代にかけてアメリカだけでなく、日本でも人気を集めた「デッキシューズ」と呼ばれるデザインを採用している。「チャンピオン・オックスフォード」と同じ、内羽根のクラシックなデザインにアッパーの素材はキャンバス製。ソールにはヨットなどの甲板=デッキで滑らないように、溝が入っている。古き良き時代のアメリカを感じるデザインと雰囲気。アイビー好き、プレッピー好きには堪えられないキャンバスシューズではないだろうか。

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ケッズとシップス エニイのダブルネームがプリントされたインソールのデザイン。アメリカの古き良き時代を彷彿させるファニーなデザインも特徴だ。

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デッキシューズらしい切れ込みが入っている。これは水を効率よく排出することで、乾いた状態と変わらぬグリップ力を発揮するため。今回のコラボモデルはブランド初期に使われていたエメラルドグリーンのカラーを採用した。

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ネイビーに加えて、オフホワイトとベージュをラインナップ。ホフホワイトはソールにネイビーのパイピングが入り、万能に使える。ベージュはパイピングも同系色。大人っぽい配色なので、ウール素材のパンツを合わせてもいいだろう。各¥9,680(税込)/シップス エニィ×ケッズ

問い合わせ先/シップス エニィ 渋谷店TEL:03-3496-0382

https://www.shipsltd.co.jp/label/shipsany/

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