未来と自然、時代を切り取るクリエイティビティ【Penクリエイター・アワード審査員特別賞 YOSHIROTTEN】

  • 文:佐野慎悟
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Pen クリエイター・アワード、2021年の受賞者がいよいよ発表! 今年は外部から審査員を招き、7組の受賞者が決定。さらに審査員それぞれの個人賞で6組が選ばれた。CREATOR AWARDS 2021特設サイトはこちら。

審査員特別賞 真鍋大度 選

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いまの東京を知る上で注目すべき存在。ストリート的表現を軸に着実に作品を発表しつつ、今年度は大小問わず幅広い案件に挑戦し、領域横断的な活動で各方面に存在感を示した。

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YOSHIROTTEN●1983年生まれ。グラフィック、映像、立体、インスタレーション、音楽など、ジャンルを超えたさまざまな表現方法での作品制作を行い、アートディレクター、デザイナーとしても活動。ロンドン、ベルリンでの個展を経て2018年には大規模個展『FUTURE NATURE』を開催。デザインスタジオ「YAR」代表。

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審査員の真鍋大度が寄せた推薦の辞に、「いまの東京を知る上で」とある。確かに、YOSHIROTTEN(ヨシロットン)の仕事を俯瞰してみると、そこには音楽があり、ファッションがあり、ポップカルチャーがあり、アートがあり、いま東京で実際に起こっていることのすべてが、縮図となって現れているように見える。リアルなカルチャーと密接に関わりながら影響を与え合うスタイルが、いわゆる「ストリート的」であり、企業から一方的に発信される広告的な世界観とは一線を画している。

「仕事とプライベートの境目がないような生活をしているんです」

そう本人も語るように、学生時代から自身でもDJとして活動しながら、数々のクラブイベントを手がけてきた。シーンの内外で築き上げたアーティストやクリエイターたちとの信頼関係も厚く、そのつながりから仕事が生まれていくケースが多いという。そのことから、見る角度によっては〝アンダーグラウンド〞と捉えられることも多かったが、ここ数年は目に見えて仕事の規模が拡大し、メインストリームのシーンでの活躍も増えている。そのブレイクスルーを支えた要素のひとつとして挙げられる実績が、2018年に開催した大規模な個展「FUTURE NATURE」だ。

「普段の仕事や自分の活動だけでは表現できないことがいっぱいありすぎて、400坪ぐらいの大きなスペースを使って、平面だけでなく映像も、立体も、空間もと、とにかくやりたいことを全部、思いっきり表現してみました」

巨大空間にプロジェクションやレーザーの光が走るダイナミックなインスタレーションや、寝そべりながら体感する没入型映像作品、アルミニウムを造形した立体作品など、そこでYOSHIROTTENが見せた多角的、または総合的な表現の数々は、以後の活躍の場をさらに深いものにしていく後押しとなった。

「新しいものをつくりたいという意識は常にありますが、突拍子もないものではなくて、少しだけ未来的な部分を想像することが面白いんです。『FUTURE NATURE』というコンセプトも、自然が身近な環境で育ったことと、そこから夜の街に出て、新しいカルチャーに魅了されていった原体験の延長線上にあります」

昨年から今年にかけても、地方のスーベニアショップから国民的ミュージシャンや世界的ビッグメゾンまでそのクライアントは多様で、まさに「いま」を表すためのビジュアルづくりにおいて絶大な信頼を得ていることがうかがえる。アンダーグラウンドもメインストリームも、ジャンルの違いも大きな問題ではない。彼が実際に体験したことの断片が、そのまま抽出されてかたちになっていくのだ。それは東京の縮図であり、時代の縮図でもある。そんな率直でリアルなクリエイティブは、人々の心を惹きつけてやまない。

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RADWIMPS「SUMMER DAZE」/MVアートディレクション

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RADWIMPSの野田洋次郎が、友人でありクリエイティブディレクターの野村訓市と制作をスタートしたミュージックビデオ(2021年8月)。YOSHIROTTENはアートディレクターとして参画。「これは仕事という感覚ではなくて、友人同士で好きなようにつくった作品。それぞれが仕事を終えた深夜に集まって、夜通し部活のような雰囲気の中でつくり上げました。カメラマンの川上くんがフィルムを回し、僕はiPhoneで光のパートを撮影。YARの笠井が映像監督として参加しています」

HERMÈS/表参道店オープニングビジュアルデザイン

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エルメス銀座店以来20年ぶりとなる、21年2月にお目見えした「エルメス表参道店」オープニング・キャンペーン・ビジュアルを制作。エルメスの社史を漫画化した『エルメスの道』の著者・竹宮惠子のイラストレーションを使用。店舗オープン前のグラフィックシートをはじめ、街頭広告、東京メトロ駅構内の広告やサイネージなど表参道の街全体で展開され話題となった。

SHINJUKU_RESOLUTION/アートワーク、展示デザイン

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20年8月に、伊勢丹新宿店で開催された展覧会。写真家の森山大道によって切り撮られた「新宿」を再解釈し、イメージを拡張したコラボレーション作品を中心に、メインビジュアルと空間デザインを担当。同シリーズの作品を展示したエキシビションは、中国・広東省の美術館He Art Museumと、上海のブックショップZiWU誌屋にも巡回した。

TOKION/陶器コレクションデザイン

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カルチャー&ファッションメディア『TOKION』の企画で、有田焼の陶器コレクションを制作(21年4月)。YOSHIROTTEN自身が、国内各地のそばの名店巡りをするほどのそば好きということで、そば用の大皿やそば猪口など、計4種類を2色展開で用意。“新しい東京のお土産”をテーマに、市松模様や松皮菱(まつかわびし)など、日本の伝統的な柄をアレンジした。

ABA ISLAND SOUVENIR CLUB/店舗アートディレクション

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沖縄・宮古島に、国内外のアーティストがデザインしたオリジナルアイテムを展開するスーベニアショップを21年8月にオープン。現地の言葉で“ワオ!”という意味を指す“アバ”から名付けられた「アバビル」の1階に位置し、ファサードテントはもとからあったものを活用。観光客と地域文化が交流する、ハブとしての機能を目指してデザインした。

john masters organics/アートバッグ、映像インスタレーション

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“地球に敬意を one earth”をスローガンに掲げるジョンマスターオーガニックが思いをともにするブランドやアーティストとコラボする企画“green beauty community collaboration”の一環で、アートバッグ、映像インスタレーションのディレクションを担当(21年7月)。バッグの柄に採用した雲のデザインを、映像作品では夜間の自然風景に投影した。

Mickey Mouse Now and Future/空間ディレクション、アートディレクション、アートワーク

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(C)Disney Artwork by YOSHIROTTEN

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(C)Disney Artwork by YOSHIROTTEN

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(C)Disney Artwork by YOSHIROTTEN

現在、渋谷のPARCO MUSEUM TOKYOで開催されている展覧会『Mickey Mouse Now and Future』の空間ディレクション、キービジュアルのアートディレクションを担当。アーティストとしても参加し、アートワークの世界に入り込んだミッキーマウスを3DCGで表現した平面作品と、新たな手法で制作した立体作品の2点を発表。展覧会は2021年12月19日まで開催されている。

Mickey Mouse Now and Future

OTHER WORKS

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G-SHOCK「MUSIC NIGHT TOKYO」(2021)
東京の夜の音楽シーンをイメージし、デザインした時計とキービジュアルを手がけた。

ヒップホップアーティストkZm「叫悲 (Prod. KM) 」ミュージックビデオのアートディレクション(2021)
ドイツのリキュールブランド「イエガーマイスター」との協働プロジェクトで、Instagramのフィルターを活用したファン参加型のビデオを制作。

ヒップホップアーティストKOHH 「No Makeup" Official Video|BnA_WALL」ミュージックビデオのアートディレクション(2021)
撮影場所は2021年に日本橋にオープンしたホテル「BNA」だ。YOSHIROTTENがデザインした一室が舞台となっている。

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※この記事はPen 2022年1月号「CREATOR AWARDS 2021」特集より再編集した記事です。