今年は、地元燕三条に凱旋。新潟・燕三条の『Tsubame-Sanjo Factory Museum』の見どころは?

  • 文:山田泰巨 写真:「燕三条 工場の祭典」実行委員会
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操業を終了した旧工場を利用した2000平米におよぶ展示会場の風景。昼間、そして夜と展示は表情を変える。金属製のスクリーンに製作過程などの関連映像が投射される。

金属の街として全国的に知られる新潟県燕市・三条市を中心とする燕三条地区。400年近く金属加工を主な産業としてきた街が『燕三条 工場の祭典』なるイベントを始めたのは2013年のことだ。ものづくりを担う「工場」、農業の「耕場」、物品を販売する「購場」という3つの“KOUBA”を一般に広く開放することで、ものづくりの魅力を広く発信してきた。こうしたオープンファクトリーを主体とする一方で、彼らは東京、ロンドン、ミラノ、シンガポールなどで同イベントの内容を凝縮した展覧会を開催してきた。今年は、地元燕三条に凱旋するかたちで展覧会『Tsubame-Sanjo Factory Museum』を開催している。

舞台となるのは、三条市にある研磨用機械を製作していた工場跡地。会場では「製造のプロセス」「製品の多様性」「今昔製品比較」という3つのテーマを立て、35の展示で来場者に燕三条のものづくりを伝える。製品はもちろん、製造や加工に使用される器具や材料をも展示。たとえば曲尺を制作してきたメーカーは現在、レーザー墨出し器を製作するなど、「測る」ことを継承しながら、最新機器を製造していることがわかる。役割ごとに異なる大量の鑿や包丁などもまた、この街はプロフェッショナルから一般ユーザーまで幅広いニーズに応えるものづくりの街であることをよく伝えるものだ。また18点におよぶ巨大な金属製スクリーンでは、オープンファクトリーでも近づけないほどの至近距離による製作風景の映像などが投射され、職人の技術、炎の踊る工程に目を奪われることは間違いない。

実行委員長の山田立さんは「これまでの展示の集大成ともいえる内容になっています。歴史や文化を掘り下げてきたことで、地元の方々に胸を張って地元の産業を語っていただけるような展示となりました。地元だからこそ実現できたスケールです」と語る。同じくプロジェクトマネージャのの横山裕久さんは「これまでとは異なるアプローチで、ぜひこの街の未来をつくる子どもたちにも見てほしい」と語る。展示は残念ながらこの週末まで。この週末、新潟まで足を伸ばしてものづくりの神髄をぜひその目で確かめてほしい。
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会場はかつて研磨用機械を製造していた野水機械製作所の旧工場を使用する。使い古された工場で臨場感ある展示を実現した。

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『Tsubame-Sanjo Factory Museum』の会場内部。左はものづくりの街の歴史のはじまりである和釘、右はリサイクル工場の映像とともに圧縮された缶などが展示される。

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こちらは北海道から九州まで、各地で使われる鍬を一挙に展示したもの。もともとは野鍛冶と呼ばれる鍛冶屋が各地にいたが、時代の変化とともに彼らは姿を消し、燕三条のメーカーが日本各地の鍬の製造を一手に担う。土地の特徴にあわせて形状、刃先が違っている

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手前展示は左より包丁、鑿。道具の形状はそれぞれの役割に応じて変化している。展示用什器は製作現場で使われている運搬・保管用のコンテナボックス。奥に見えるのは、燕三条のものづくりの歴史をまとめた年表「燕三条の系統樹」。

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明治時代より金属製カトラリーの製造を始める。カイ・ボイスンの名作カトラリー、今年のオリンピックの選手村で使用されたカトラリー、ノーベル賞の晩餐会で使用されたカトラリーなど、それぞれに貴重なカトラリー類が並ぶ。

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Tsubame-Sanjo Factory Museum or 燕三条 ファクトリーミュージアム

会場:新潟県三条市西大崎1-1-18(野水機械製作所 旧工場)
会期:2021年11月21日(日)まで
開館時間:10時〜20時
https://kouba-fes.jp