近年、ナチュラルなワインづくりに挑戦する生産者が日本で増加中。そんな彼らが、今年初めてリリースする銘柄を紹介しよう。
1.ふくらみのある果実味と酸、かすかな苦味が絶妙なバランス
「kodou」は、白桃やマスカットの香りが豊かに香る、飲み心地よい微発泡酒。アルコール度数も低めで、私はつい杯を重ねて、気づいたら1本を飲み切った。つくり手の浦本忠幸は31歳という若さだが、同業仲間からは醸造センスが抜群だと言われている。さっぽろ藤野ワイナリーの醸造責任者を経て、北海道にて今秋に独立し、自身の名を冠したワインを発売する。
2.干しアンズやリンゴからなる、コンポートのような魅惑的な香り
中根拓也は知る人ぞ知るつくり手。山梨、北海道のワイナリーで実績を積み、一昨年から山梨のケアフィットファームワイナリーで醸造責任者に。山梨のワイナリー勤務時につくった「Toxic」は妖艶なメルロとして日本ワインマニアを魅了した。「Naked Kohaku」は彼自身が育てた甲州のオレンジワイン。アンズのコンポートの甘い香りにもそそられるが、香りに負けない果実味の深みと複雑さは唯一無二の魅力を放つ。
3.渋みがきれいに溶け込み、身体に染み入るような飲み心地
「keshiki」は長野県上田市のセイルザシップヴィンヤードの田口航がつくった。ワイン名には「景色」と「気色」というふたつの意味が込められている。立ち上ってくるバラのような香りはなんとも魅惑的で、身体にすーっと染み入る味わいには透明感がある。日本でもたぐいまれな立地条件の土地で育まれた、ブドウの魅力が無理なく引き出されている。3本とも自信をもってお薦めできるワインだ。
●今月の選酒人:鹿取みゆき
日本の食とワイン造りの現場の取材を続ける。近年は日本ワイン産業の支援のため日本ワインブドウ栽培協会を各地の造り手とともに設立。Pen Onlineでも連載をもつ。『ワインの香り』(虹有社、共著)などワイン関連の著書多数。
※こちらはPen 2021年12月号「腕時計、この一本と生きる」特集よりPen編集部が再編集した記事です。