コム デ ギャルソン・オム プリュスが、ナイキの「エア フォームポジットワン」を再解釈

  • 文:小暮昌弘(LOST & FOUND)
  • 写真:宇田川 淳
  • スタイリング:井藤成一
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オリジナルのブルー×ブラックの鮮やかなカラーリング、それに続いて復刻したモデルもカラフルだった「エア フォームポジット ワン」に比べると、ホワイトとブラック、それぞれ単色でまとめられたところがこのブランドらしい。テーマの”DARK ROOM”に合わせてことだろう。各¥57,200(税込)/コム デ ギャルソン・オム プリュス

「大人の名品図鑑」スニーカー編 #7

スニーカーブームが続くなか、2021年10月にはマイケル・ジョーダンが現役時代に履いたシューズが史上最高額の約150万ドルで落札された。まだまだスニーカーにまつわる話題は尽きない。今回は好評だったスニーカー編の第二弾をお届けする。

2021年1月、世界的なコロナ禍を受け、いつものパリではなく東京の本社で行われたコム デ ギャルソン・オム プリュスのファッションショー。テーマは“DARKROOM”。「私たちはいま、闇に包まれたこの世界で、新しいものを見つけ出さなければならない」と、コレクションノートにデザイナーの川久保玲が書いている。ショーは暗闇が広がる会場にスポットライトが当てられて、ミニマルなモノトーンカラーのジャケットやコートを纏ったモデルが登場した。アメリカのコンテンポラリーアーティスト、ウィリー・コールとのコラボレーションによるハイヒールを頭上に乗せたヘッドピースが、強烈な印象を残す。そして、多くのモデルたちの足元を飾ったのはナイキの「エア フォームポジットワン」だ。

このモデルは、1997年に誕生したバスケットボールシューズ。「素材を液体にしたものを容器の中に入れ、その中に足を浸して、足の周りを覆うことができたらそうなるだろう」という、ナイキのデザイナー、エリック・アヴァールの発想から生まれたモデルだ。『ナイキ・バッシュ・コレクション』(双葉社)によれば、当初ナイキは製品化に躊躇していた。しかし、このシューズを見たNBAのスター選手、アンファニー・“ペニー”・ハーダウェイがひと目で気に入り、製品化に向かったという。だが、彼の名を冠したシグネチャーモデルはほかに存在したため、ペニーが試合でこのシューズを履いたのはプレーオフのいくつかの試合だけだった。

光沢ある鮮やかなブルーとブラックのコンビネーションが特徴的なカラーリング。アッパー全体が波紋のように立体的にデザインされている。それまでのバスケットボールシューズの常識を覆す未来的な外見に、スニーカーファンの多くが衝撃を覚えた。その後も何度か復刻モデルがリリースされているが、2014年には人気ブランドのシュプリームとコラボレーション。このモデルはアッパーをキャンバスに見立てて大胆なグラフィックが施され、発売前から注目が集まり、情報のリーク合戦まで起こったと記憶している。

今月発売されたばかりのコム デ ギャルソン・オム プリュスとのコラボレーションモデルは、オリジナルをベースに、合成樹脂素材のアッパーに渦のような紋様が刻まれている。混沌としたいまの時代を表現しているのだろうか。このモデルでオリジナルの型からアレンジしたのは、コム デ ギャルソンが初である。世界中で争奪戦になることは間違いない。

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スパイク・リーの映画『ラストゲーム』に登場

「エア フォームポジットワン」が登場した映画がある。リリースの1年後の98年に公開された『ラストゲーム』という作品で、監督は前回も紹介したバスケットボール好きのスパイク・リー。主人公のジェイクをデンゼル・ワシントン、その息子・ジーザスを当時現役のNBA選手だったレイ・アレンが演じている。

レイ・アレンは1996年から2016年までミルウォーキー・バックスやシアトル・スーパーソニックスなどで活躍した選手で、NBA屈指の3ポイントシューターと言われている。そんな彼がバスケットボールのシーンはいうまでもなく、シリアスな演技まで見事にこなしていることに驚く。

物語のはじまりは、服役中のジェイクがバスケットボールで将来を嘱望される高校生の息子ジーザスを、刑務所所長が望む大学に進学させることができれば刑期を短縮させてやると言われ、1週間の期限付きで出所が許される……というもの。エリート選手を取り巻く環境や問題点に焦点を当てながら、父と子の絆が修復される過程を描いた秀作だ。

劇中、ジーザスがストリートバスケをしているときに履いているのが、白のアッパーにシューレース部分がブラックになった「エア フォームポジットワン」だ。映画中盤までジーザスはこのシューズを履いている。ちなみに同じ場面でジェイクが履いていたのは、「エア ジョーダン13」。刑務所ではキャンバスシューズでバスケットボールをしていたジェイクは、出所してすぐに靴屋で97年に発売されたジョーダンシリーズの最新作「エア ジョーダン13」を買い求める。このモデルはマイケル・ジョーダンがシカゴ・ブルズでの最後のシーズンに着用したモデル。そういえば、「エア フォームポジットワン」を履いたアンファニー・“ペニー”・ハーダウェイは「ネクスト・マイケル・ジョーダン」と評された人物。映画では、奇しくもNBAのレジェンドが履いた2足のスニーカーの共演となった。

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ナイキのアイコンとも言える「スウッシュ」が入っているのは、シューレース部分の先端のみ。その小ささも、このモデルの特徴だ。

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本来波のようなアッパーの文様を、渦巻のようなデザインに変更している。アッパーのデザインまでアレンジしたのは初だ。

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ブランドのマークが入るのはヒールの部分。こちらも小さい。

問い合わせ先/コム デ ギャルソン TEL:03-3486-7611
https://www.comme-des-garcons.com/stores/

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