美術館や話題のショップで賑わう清澄白河に自転車ブランド、トーキョーバイクの旗艦店「トーキョーバイク トーキョー」がオープンした。築58年の、もと倉庫をリノベーションした3階建ての店内は、ベンチを兼ねた大階段がフロアを緩やかにつなぐ開放的なつくり。地元で人気のコーヒーロースターやメルボルン発のプランツショップも入店し、気軽に立ち寄れる複合ショップとなっている。
内装およびファサードの設計を手がけたのは、鈴野浩一と禿かむろ真哉によるトラフ建築設計事務所。それぞれ著名建築家のもとで実績を積んだ後、2004年に共同で設立した。10年の発売以来、国内外で広く認知されるきっかけとなった「空気の器」をはじめとするプロダクトのデザインや、空間インスタレーション、舞台美術など、建築的思考をベースに、さまざまな領域を縦横無尽に駆け抜けながら独自の表現を続けている。
なかでも多くの代表作があるアパレル店舗の設計では、商品を引き立たせるコンセプチュアルな什器のデザインや型にはまらない自在な素材使いでブランドのもつ世界観を表現。建築と家具の境界線をなくし、双方からのアプローチでつくられる独創的な空間は、エルメスのウィンドーディスプレイやイソップの店舗設計に長年携わってきたように、グローバルブランドからも高い評価を得ている。ふたりの感性が融合して生まれる柔軟なデザインが、国境を超えて多くの人から注目されている。
---fadeinPager---
トラフが携わってきた代表的な建築
【アパレル店舗の空間演出】
商業施設や美術館の展示、インスタレーション作品を手がけるなど“見せる”空間演出を得意とするトラフ。さまざまなアパレルブランドの店舗設計に携わり、商品や什器も空間を構成するひとつの要素として見なし、テーマに沿った空間づくりを行う。
【イソップ】
2012年から長年設計に携わるオーストラリアのスキンケアブランド。藍染めされた木板が連なる「ニュウマン横浜店」やファサードに溶融亜鉛メッキ仕上げの鋼材を用いた「渋谷店」など、特定の素材にフォーカスし、店舗ごとに趣向の異なる空間を表現。
【プロダクトデザイン】
「空気の器」は同心円状に切り込みを入れた一枚の紙でできており、空気を含むように広げることで強度が増し、花瓶や小皿など自在に姿を変える。身に着けるうちにゴールドの下地が現れるリングなど、建築的な視点でデザインしたプロダクトも製作。
TORAFU ARCHITECTS
鈴野浩一と禿(かむろ)真哉により、2004年にトラフ建築設計事務所を設立。建築、インテリア、展覧会の会場構成、舞台美術、プロダクトデザインなど活動は多岐にわたる。15年、「空気の器」がモントリオール美術館の永久コレクションに認定。
※こちらはPen 2021年12月号「腕時計、この一本と生きる」特集よりPen編集部が再編集した記事です。