1964年の東京五輪でセイコーは公式タイムキーパーを務めた。開催国の時計メーカーだから当然と思うかもしれないが、1961年頃のセイコーはスポーツ計時の経験も知識もほとんどゼロ。にもかかわらず、セイコーは日本を代表する国産ブランドとして、公式計時に取り組むと宣言した。その実力を証明するために独自開発したのが「ハートカム」を備えたストップウォッチだ。
当時のストップウォッチは、テン輪をレバーで押さえることで秒針を止めていたので、停止位置によってヒゲゼンマイの状態が異なっていた。このため、次にスタートする時にはレバーがテン輪を蹴り出すように初期振動を支援する仕組みだったが、これでは誤差は避けられない。セイコーではテンプの軸にハート型のカムを装着することを考案。これをレバーが叩けば、ハート型の凹みのところで必ずカムとテン輪の往復振動が止まる。ヒゲゼンマイのエネルギーが最も残った状態でテン輪が止まるようにセットしておけば、スタート時点でのズレを完全に解消できるわけだ。1962年に完成品が国際陸上競技連盟に持ち込まれ、誤差がまったく生じない高精度が絶賛された。連盟の承認を得てセイコーはIOCに公式計時を申し入れ、認可されたのは開催の僅か1年半前といわれる。
このハートカムによって、東京大会では1/100秒単位まで正確に計測できる高精度ストップウォッチなどが活躍。そして5年後の1969年に、垂直クラッチを搭載した世界初の自動巻きクロノグラフ「1969 スピードタイマー」が発売されたのである。
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1960年代の情熱を継承する新生「SPEEDTIMER」
こうした輝かしいスポーツ計時の歴史と技術、そして情熱を継承する新コレクションとして「SPEEDTIMER」が登場した。生まれかわった「SPEEDTIMER」は、1964年のハートカム付きストップウォッチのデザインを色濃く受け継いだ自動巻き限定モデルと、チャコールグレーダイヤルの自動巻きレギュラーモデル、そしてソーラークオーツの3タイプがある。
自動巻き限定モデルはホワイトのダイヤルで、クロノ秒針が外周のタキメーターまで届くほど長い。しかも先端をダイヤル側に曲げることで、目盛りとの距離が接近。判読性を限界まで追求していることが特徴だ。ムーブメントも新開発の「キャリバー8R46」を搭載。「1969 スピードタイマー」の垂直クラッチやコラムホイールなどを、最新技術でさらにブラッシュアップしている。付属のカーフストラップ裏側に縫い目を隠す「コンシール加工」を施し、汗や皮脂による劣化を防いで耐久性を高めるなど、細かな工夫も見逃せない。
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クラシックモダンな機械式と、スポーティなソーラー
自動巻きレギュラーモデルは、ムーブメントやブレスレットは限定モデルと共通だが、ダイヤルはチャコールグレー。シャープな形状の時分針とインデックスが研ぎ澄まされた印象を与える。特徴的なハンマー型のプッシュボタンなど、多くの要素が1964年に登場した国産初のクロノグラフからインスパイアされている。ヴィンテージ調の蓄光式蛍光と合わせて、クラシカルとモダンがうまく調和している。
ソーラークロノグラフは4種類のカラーバリエーションがあり、いずれもスポーティな仕上がり。ダイヤルには砂目調のパターンを施して陽光の反射を抑えるなど、本格クロノグラフにふさわしく視認性にも優れている。
1960年代はセイコーの計時技術が劇的に飛躍した10年といえるだろう。その遠く懐かしい記憶から颯爽と現代に甦ったクロノグラフが、新生「SPEEDTIMER」なのである。
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