「O」のひと文字で、スポーツカーが昇華する

  • 文:多田潤
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富士スピードウェイにイタリアから空輸された6台のSTO

レースも可能なランボルギーニ・ウラカン

スポーツカー史に燦然と輝く車名のひとつに「GTO」という名前があります。各社で何度か使われてきた名前ですが、フェラーリがレース仕様の市販モデルにつけた「250 GTO」が最初でしょう。1960年代、フェラーリはGT選手権に参加するためにはFIA(国際自動車連盟)の認証をとろうとしました。市販モデルをベースにレースに勝つためにボディを変え、エンジンをチューニング。でもこの認定は12カ月で100台の生産したモデルでしかとれません。凝ったつくり250GTOはたった33台しか生産できませんでした。そこでフェラーリは市販モデル「250ベルリネッタGT」の派生モデルと主張し申請。なんとかレース出場認定をFIAから得たのです。そのため名前は「GT」のあとに「O」をつけて「GTO」。GT選手権出場認定という意味をもっているのです。

こうしたレース機材の申請をフランス語で「Homologation(ホモロゲーション)」といいます。なぜ、フランス語か、というとFIAの本拠地はフランス・パリにあるからです。そしてこのホモロゲーションをイタリア語にすると「Omologato(オモロガート)」となり、その頭文字が「O」となります。

ランボルギーニ・ウラカンの最新車種に「STO」というモデルがあります。「スーパートロフェオ・オモロガート」の頭文字をとったモデルで、ランボルギーニが主催するワンメイクレースであるスーパートロフェオが認定するモデルという意味です。カーボン素材のパーツをボディに多用し、軽量化とエアロダイナミクスを追求。日本のブリヂストンが専用タイヤを開発し、通常のウラカンより強力なブレーキを搭載したサーキットユースを考えたモデルです。

生産が始まったばかりのこのモデルをイタリアから6台空輸し、富士スピードウェイで乗る試乗会がありました。もともとレーシングカーとしても通用する馬力にサーキット向けのパーツが多用されたこのモデルは、サーキットを思う存分走らせることができます。創業以来、市販車としての性能を磨き続けてきたランボルギーニですが、最近ではデイトナ24時間レースで優勝するなどレースにも力を入れています。このSTOは自宅からサーキットまで自走し、サーキットを楽しんだあと家まで帰れる特別なモデル。1960年初頭に誕生した250GTOと同じように市販の特別モデルでレースを楽しむことができるのです。ただし大きく違うのは生産台数。通常、スーパーカーのこうした限定モデルは生産台数を少なく限定しています。ゆえにプレミアついたりするのですが、このSTOは台数はとくに決められていない平等な生産だそうです。ただし実際の売れ行きはかなりいいそうで、デリバリーまで待てる忍耐力も必要のようですが、、、

レース参加認定の意味をもつ「O」のひと文字。イタリアのスポーツカーにとっていまでも特別な意味をもっています。

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プロドライバーからメディア関係者、ランボルギーニオーナーなどがハンドルを握って富士スピードウェイで試乗が行われた。かなりのペースでラップを重ねても車両に問題が起きないのもすごいところ。ブレーキの温度もコクピット画面で確認できる。

多田 潤

『Pen』所属のエディター、クルマ担当

1970年、東京都生まれ。日本大学卒業後、出版社へ。モノ系雑誌に関わり、『Pen』の編集者に。20年ほど前からイタリアの小さなスポーツカーに目覚め、アルファロメオやランチア、アバルトの60年代モデルを所有し、自分でメンテナンスまで手がける。2019年、CCCカーライフラボよりクラシックカー専門誌『Vマガジン』の創刊に携わった。

多田 潤

『Pen』所属のエディター、クルマ担当

1970年、東京都生まれ。日本大学卒業後、出版社へ。モノ系雑誌に関わり、『Pen』の編集者に。20年ほど前からイタリアの小さなスポーツカーに目覚め、アルファロメオやランチア、アバルトの60年代モデルを所有し、自分でメンテナンスまで手がける。2019年、CCCカーライフラボよりクラシックカー専門誌『Vマガジン』の創刊に携わった。