絶対に終電を逃さない女による、ドラマ『おいしい給食 season2』全話レビュー連載。今回は第3話「ナウでヤングなアメリカン」を振り返る。
第2話の神野の給食アレンジはジャブだと書いたが、やはり第3話では本領を発揮してくれた。献立は給食のおばさん(いとうまい子)曰く、「私も長いことやってるけど、こんなセットは初めて。なんていうか、アメリカのレストランみたいな」、ジャンバラヤ、アメリカンドッグ、コーンスープ、牛乳、コーヒーゼリー。
大好物が揃った献立に張り切る甘利田は、いつもの校歌斉唱を「みなぎる血潮はヘルシーに〜トゥギャザー伸びゆく〜黍名子Jr.ハイスクール〜」とルー大柴風にアレンジし、マイ箸も封印。「ニューオリンズの郊外に佇む深夜まで営業しているレストラン」をイメージし、欧米っぽいジェスチャーを交えながら、「とにかく食うんだよ。繊細な味など関係ない。彼らにとって大味ではない食は食ではない。口の中を気持ち良い味で満たしてくれる固形物を山ほど入れる欲望。それこそがアメリカンスタイル」と、とにかく豪快に食べる。
メニューに合わせた正統派な食べ方をした甘利田に対し、あえてマイ箸で挑む神野は、アメリカンドックを分解し、ソーセージをジャンバラヤに、皮をクルトン風に四角く切ってコーンスープに投入するという斬新なアレンジを披露。さらに、持参したシェイカーで牛乳とコーヒーゼリーをシェイク。season1にもいちご味のミルメークといちごジャムと牛乳をシェイカーで混ぜる回があるため、これは予想できたものの、神野のドヤ顔シェイクは何回見ても面白い。
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「もはや商品開発」な神野のアレンジ
しかし、同じアレンジでは終わらせないのが3年生になった神野だ。おもむろに取り出した太めの透明ストローで、ゼリーを吸い上げながら飲み始める。
その姿を見て衝撃を受けた甘利田の、「なんか面白いではないか! いつか将来、そんな感じの飲み物が流行る気さえする」というセリフは、2000年代後半に流行したドロリッチや、近年のタピオカドリンクを指しているのだろうか。そう考えると、さらに飲みやすく改良する神野の姿勢は、もはや商品開発の域に達していると言えるかもしれない。大人になった神野がドロリッチを作る未来さえ見えてくる。
もちろんそれは過去を舞台にしたフィクションならではの予言に過ぎないわけだが、『おいしい給食』には、妙に先見性がありそうな気もしている。2019年に放送されたseason1の「ヤキソバ・パンデミック」と題された7話では、甘利田と神野らのクラスが何らかのウイルスに集団感染する(という甘利田の勘違い)という、翌年以降の新型コロナパンデミックを想起させるエピソードがあるのだ。もしかすると神野の数々の給食アレンジの中から、将来似たものが本当に流行るかもしれない。そういう意味でも見逃せない作品だ。

絶対に終電を逃さない女
1995年生まれ、都内一人暮らし。ひょんなことから新卒でフリーライターになってしまう。Webを中心にコラム、エッセイ、取材記事などを書いている。『GINZA』(マガジンハウス)Web版にて東京の街で感じたことを綴るエッセイ『シティガール未満』、『TOKION』Web版にて『東京青春朝焼恋物語』連載中。
Twitter: @YPFiGtH
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