近頃気になる街歩き用のスニーカーは、シンプルなローテクタイプである。ダッドスニーカーもハイテクスニーカーも、ひとまず靴棚に休ませておきたい気分だ。時代は巡るもので、タイムレスなアイテムでもそのとき旬なものがある。日本が世界に誇るムーンスターのキャンバスシューズがまさしくそのひとつ。人気が復活してきたエレガントな服装にも、ウィズ コロナの社会情勢で屋外志向が広がったアウトドアウエアとも抜群に相性がいい。
さらに大人に嬉しいのが、音楽やストリートといったサブカルチャーがバックボーンにないこと。「セレブの誰々が着用」といった宣伝情報が飛び交う昨今のファッションシーンにおいて、余計な上乗せがなく履く人の個性を引き出すムーンスターの存在が心に響く。
ここではそんなムーンスターを代表する、アッパーと靴底を熱接着するファインバルカナイズド製法のラインアップから5型をセレクト。仕上がりは丁寧で美しく、型崩れが少なく、薄い靴底なのに歩きやすい。履けば彼らのモノづくりの素晴らしさを実感できる。どれか一足持っていれば、毎日の足取りが軽くなること請け合いの傑作揃いだ。
永遠のムーンスター① もっともベーシックな「ロー バスケット」
スニーカーの歴史的な基本形といえるローカットモデルがこの「ロー バスケット」。名の通りクラシカルなバスケットボールシューズだ。爪先を保護するトゥキャップつきで、紐留め部分は幅調整がしやすい外羽根式。スニーカーらしいカジュアルな表情を求めるなら、ファインヴァルカナイズドのシリーズの中でこの一足がベストチョイスになるだろう。色展開が黒、ベージュといったシックなもの中心なのが大人のセンスだ。
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永遠のムーンスター② スマートな足元の「ジム クラシック」
ジム(GYM)の名を冠するこのモデルは1960年代のトレーニングシューズから着想されたデザイン。前述のロー バスケットと比べ靴紐の結びが幅の狭い内羽根式になっており、スカート姿の女性にも似合いやすい上品な印象に仕上がっている。ステッチもより多く入れられ、足元を服装のアクセントにしたいとき、人に差をつけるキャンバススニーカーを履きたいときにぴったりの一足だ。色バリエーションは豊富でカラフル。
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永遠のムーンスター③ ローファーのごとき佇まい、「サイドゴア」スリッポン
脱ぎ履きしやすいようにアッパーの側面につけられたゴムをサイドゴアと呼ぶ。この名称で呼ばれるスリッポンがこのモデルだ。ムーンスターのスリッポンは、紐靴に匹敵する独特の風格がある。形が美しく整えられ、ゴムソールの圧着精度もイージーなスリッポンだからという手抜き感がまったく見られない。革靴のローファーに置き換えてブレザージャケットに組ませて履きたくなる、完成度が高い逸品である。
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永遠のムーンスター④ 旬のトレンドブーツ、「オールウェザー サイドゴア」
レディストレンドに敏感な人はご存じのように、2021-22年秋冬の最注目シューズはサイドゴアブーツだ。女性には厚底でボリュームのあるものが人気のようだが、男性も今年はぜひこのブーツを履きこなそう。上写真はアッパーの下部をゴムで覆った「オールウェザー」シリーズの一足である。都会的なデザインの美しさはムーンスター随一といえる出来栄え。色によりモード風にもカントリー風にも表情を変えるので、好みのものを探し出したい。
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永遠のムーンスター⑤ 画期的な全天候型モデル、「オールウェザー」
2015年にデビューした、ラギッドなアウトドアシューズのイメージを覆すスタイリッシュな「オールウェザー」。ヒール部分のクッション力も反発力も高く街中でも歩き続けられる。サイズ選びにはコツがあり、ゴムで覆われた箇所が固いから、きつく当たらないように大きめをおすすめしたい。ゆるすぎたら市販のインソールを入れて調整しよう。吸湿タイプを選べばゴムシューズ特有のムレも軽減されるから一石二鳥だ。
ファッションレポーター/フォトグラファー
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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