いまの世界のワイン造りのトレンドを表すキーワードといえば、「フィールドブレンド」「オレンジワイン」「ペットナット」だろう。今回は、Pen Onlineの連載「ワインは、自然派」でも何本も登場している、フィールドブレンドのワインをご紹介したい。マンズワイン小諸ワイナリーで造られた「SOLARIS LE CIEL (ソラリス ル・シエル)」だ。
つい数年前までは、ワインは単一の品種で造られるものが多かった。おまけにこうしたほとんどのワインが、「シャルドネ」とか「ピノ・ノワール」とか、品種名をワインの名前に冠していたのだ(こうした傾向が生まれたのは、1940年以降のことなのだが、この話はまた別の機会に触れたい)。
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フィールドブレンドのワインとは?
それに対して、最近増え出しているのがフィールドブレンドのワインだ。フランスの伝統的なワイン産地の一つ、アルザス地方でも、ある造り手がフィールドブレンドのワインを造っており、人気を博している。フィールドブレンドとはどういうワインかと言えば、ある範囲内の土地で育てられている様々なブドウを同時期に収穫して、一つの発酵容器の中で一緒に醸造する混醸という方法で造るワインのこと。しかし、複数の品種をブレンドしたワイン造りの定石は、各品種ごとに収穫して、別々に発酵させて、最後に味わいのバランスを見ながらブレンドするというものだ。
日本でまずこのフィールドブレンドの造りを採用したのが、ナカザワヴィンヤードのクリサワブラン。その後、少しずつフィールドブレンドのワインが増えてきたが、小規模な造り手ばかりだった。ところが、今年初めて大手メーカーのマンズワインのフィールドブレンドのワインが発売になった。マンズワイン小諸ワイナリーで造られた「ソラリス ル・シエル」だ。
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エレガントな味わいに驚く1本
「近代ワイン造りにおいて、それぞれの品種ごとの成熟に合わせた収穫・仕込と言うのがスタンダードになっていましたが、私たちも土地の個性、テロワールを表現するワイン造りの追求をしようとする中で、混醸に挑戦してみようということになりました。品種ごとに収穫すると、全体の調和というよりも、それぞれのブドウの状態に目が行きがちです。またブレンドの際にはどうしても造り手の好みが強く出てしまうと感じていたからです。本音をいうと面白そうだと思ったのもあるんです」と語るのはソラリスの栽培醸造責任者の西畑徹平さん。
「それに混醸にすることで、それぞれの搾った果汁の成分が互いに作用し合い、発酵させた後でブレンドするのとは異なる変化が生まれるとも考えました」と西畑さん。
品種はシャルドネ、信濃リースリング、ソーヴィニヨンブランの3品種で、いずれもワイナリーに隣接する同一区画の畑のものだ。9月下旬に一度に収穫して、全て一緒に房ごと搾って発酵させている。
美しく輝くワインを一口飲んてみて、一口でそのおいしさがわかった。エレガントな味わいに非常に驚いた。メリハリのある豊かな果実味が広がった後には、なんともエレガントなフレーバーが立ち上る。そして、それが長く続いていくのだ。3品種が混醸されたことで、シャルドネ単独のワインより、瑞々しさが感じられ、信濃リースリング単独のワインより、高貴な印象があり、そしてソーヴィニヨン・ブラン単独のワインより、たおやかさがある。唯一無二の魅力があるのだ。1人でも多くの人に飲んでもらいたいワインだ。