いまおすすめのダイバーズウォッチ5選。時計ブランドの"本気"を体感しよう

  • 文:篠田哲生
Share:

ダイバーズウォッチは時計ブランドの本気が漲る実験場

高級時計の世界では、デザインや歴史、カラーなどが話題の中心になるが、ダイバーズウォッチだけは徹底的にスペック主義である。開発のきっかけは、1950年代に潜水器具アクアラングが開発され、水中を自由に行動できるようになったこと。空気タンクの残量や浮上する際の時間経過を確認するための正確な計器として、ダイバーズウォッチが開発されたのだ。あくまでも“計器”であるため、故障するとダイバーを危険にさらすことになる。そのためデザインや性能には厳密なルールがあり、“ダイバーズウォッチ”を名乗るためには、ISOなどの国際規格に準拠する必要がある。つまりダイバーズウォッチは、時計ブランドの本気が集まるジャンルなのである。

ブランパン「フィフティ ファゾムス・オートマティック」

5015-1130-52_front[53].jpg
ブランパン「フィフティ ファゾムス・オートマティック」自動巻き、SSケース、ケース径44㎜、セイルキャンバス ストラップ、シースルーバック、300m防水、各1,573,000(税込)/ブランパン ブティック銀座 Tel:03-5148-2174

モダンダイバーズウォッチの原点とされるのが、ブランパンの「フィフティ ファゾムス」。当時のCEOジャン-ジャック・フィスターはダイビング愛好家だったが、潜水時間が分からなくなり何度も遭難しかけた。そこで水中でも使える時計の開発を思い立つ。そのプロジェクトにフランス海軍も参加し、ロック機構付きの回転ベゼルやシンプルな表示が採用されることになった。ちなみにモデル名は水深の単位であるファゾムを用いており、「50ファゾムス(約100m)」が初代モデルの防水性能だった。現代の「フィフティ ファゾムス」は2007年に復活。オリジナルのデザインを継承しながら、防水機能を300mにスペックを上げ、いまもダイバーズウォッチの金字塔である。

---fadeinPager---

チューダー「ペラゴス LHD」

M25610TNL-0001_black_95820T_FB_sRGB (1).jpeg
チューダー「ペラゴス LHD」自動巻き、チタンケース&ブレスレット(ブラックのラバーストラップを付属)、ケース径42㎜、パワーリザーブ約70時間、500m防水、¥521,400(税込)/日本ロレックス / チューダー Tel:0120-929-570

多くの軍隊や冒険家から愛されてきた「チューダー」。その堅牢性は、ブランドロゴの盾のマークに現れている。同社には過去のスタイルを継承する人気ダイバーズウォッチ「フィフティ-エイト」が有名だが、今回紹介したいのは「ペラゴス」。「ペラゴス LHD」は、1970年代にチューダーが、フランス海軍の要請を受けて9時位置側にリューズを配する左利き用のダイバーズウォッチを開発したことに由来している。デザイン的にはリューズが逆にあるだけなのだが、そこにはダイバーたちをサポートするための潜水計器を作るという強い信念が見え隠れしている。道具のようなタフな存在感が宿っており、まさに本気のダイバーズウォッチなのである。

---fadeinPager---

ジン「UX」

Sinn UX.jpg
ジン「UX」クオーツ、Uボート・スチールケース、ケース径44㎜、ラバーストラップ、5000m防水、¥418,000(税込)/ホッタ Tel:03-5148-2174

地表の7割は海である。そしてまだ解明されていない謎は、宇宙よりも多いという。それゆえ人は、より深く潜りたいと願い、実際には人体が耐えられないにもかかわらず、600m防水や1000m防水といったダイバーズウォッチが次々と生まれた。ジンの「UX」はその究極形だろう。高い水圧でケースが潰されないように特殊なオイルをケース内部に封入して、防水性能は5000mを実現した。しかもオイルのおかげで光が屈折せず、どの角度からも針が判読できるようになった。さらにケース素材に潜水艦に用いられるUボート・スチールを使うなど、すべてで究極のタフを目指した。使いこなせる性能ではないが、その秘密兵器のようなスペックには惹かれてしまう。

---fadeinPager---

セイコー「プロスペックス マリーンマスター プロフェッショナル SBDX038」

名称未設定のデザイン (29).jpg
セイコー「プロスペックス マリーンマスター プロフェッショナル SBDX038」自動巻き、チタンケース、ケース径52.4㎜、パワーリザーブ約50時間、シリコンラバーストラップ、1000m飽和潜水用防水、¥440,000(税込)/セイコーウオッチお客様相談室 Tel:0120-061-012

潜水計器であり、手堅く作るのがセオリーだったダイバーズウォッチに、常識外れの発想を持ち込んだのがセイコーだった。100m以上も潜る際には、潜水病の危険を防ぐために事前に血中にヘリウムガスを溶け込ませ、飽和状態にしておく「飽和潜水」という方法がある。しかしその際に時計内部にヘリウムガスが侵入してしまうので、プロ用のダイバーズウォッチにはガス抜きのバルブが必要となる。ところがセイコーは特殊なL字型パッキンを使うことで、ヘリウムガスの侵入を許さない時計を開発した。当然防水性にも優れており、ケースの外側には、外胴と呼ばれるプロテクターも備える。ぽってりとした愛嬌のあるデザインだが、その性能は超一流なのだ。

---fadeinPager---

パネライ「サブマーシブル」

Pam683_Cat_Dett01_C_1799603.jpg
パネライ「サブマーシブル」自動巻き、SSケース、ケース径42㎜、パワーリザーブ約3日間、ラバーストラップ、300m防水、¥1,210,000(税込)/オフィチーネ パネライ Tel:0120-18-7110

潜水時計の歴史を語る上で、「パネライ」は避けて通れない。1940年代にイタリア海軍特殊潜水部隊のミッションウォッチとして開発された当時は、回転ベゼルという概念は存在しなかった。しかし大きな針や明るく光る夜光塗料といった実用的な機能は、隊員たちの暗い海中での隠密行動をサポートし、大きな戦績を収めてきた。まさに戦う男のための海の時計は、現在では逆回転防止ベゼルを備えた「サブマーシブル」へと進化し、本格的なダイバーズウォッチとして人気だ。もちろん肉厚なクッションケースや外的衝撃から守るためのリューズプロテクターなど、歴史と実績のあるディテールも健在。つけているだけで気持ちが昂る時計になっている

---fadeinPager---