香水はもはや化粧の一部でも、着飾るためのアクセサリーでもない。豊かな暮らしに欠かせないマストアイテムになった。部屋の壁に爽やかな絵を飾るように、ドリップしたコーヒーをゆっくりと口に含むように、玄関やカーテンにシュッと一吹きする。たったそれだけで空気の流れが大きく変わる。肌につけて身体にまとわせなくても、日常を潤す様々な使い方ができるのだ。生活への意識が劇的に変化したニューノーマルの時代において、心を支える香水の役割は大きい。
その人気の原動力となる存在が、まだ歴史が浅い新進気鋭のフレグランスブランド。かつての香水は男女の色香が重要なテーマだったが、現代の発想は違う。Tシャツのようにクリーンでニュートラル。性別に囚われずジェンダーレスなのも特徴だ。使う人のパーソナリティを引き出せるように、種類が豊富なのも新進ブランドのスタイルである。
この系譜に属し、香水好きから絶大な支持を集める2ブランドから新作が登場した。アメリカのル ラボと、スウェーデンのバイレードである。各新作は、オリエンタリズムに基づく香りという点で共通している。外出制限が続く社会情勢において、各国のファッションシーンでもカントリーウエアをはじめとする旅気分の服装が増えている。まさに異国に憧れる現在を象徴するフレグランスといえるだろう。
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ル ラボの「マッチャ 26」は、名の通り日本の抹茶から着想された香り。ただし我々がよく知る抹茶そのもののとは少し距離がある。イチジク(フィグ)のフルーティさにウッド調の落ち着きが加わり、ビターオレンジの苦味が深みを出す。これはル ラボが捉えた抹茶文化のトータルイメージを香りで表したものなのだ。
一方でバイレードの「ムンバイ ノイズ」は、インド最大の都市ムンバイの雑踏が表現された香り。ダイレクトな調香が得意なバイレードらしく、街で焚かれたお香の印象が前面に打ち出されている。ウッド調の深い落ち着きもあり、日本の和室にもよく似合いそうだ。外出時に服やバッグに振りかける使い方も最適だろう。
この2品のボトルは装飾を廃したミニマルデザインで、男性の身の回りともよく調和する。中身が高濃度のオード パルファムなだけに決して安価ではないが、これひとつで生活空間がフレッシュに姿を変える、入手する意義がある逸品だ。
ファッションレポーター/フォトグラファー
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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