美しいトロピカルな海岸が続くブラジル北東部。なかでもペルナンブコ州のポルト・デ・ガリーニャスは、海水の透明度が高く、浅瀬にもサンゴ礁が多いためシュノーケリングに人気の海岸だ。
海の豊かな生態系を維持するために欠かせないサンゴだが、水質の汚染や温暖化による海水温の上昇によってブラジルでもサンゴが白化するなどして著しく減少している。
ペルナンブコ連邦大学のプロジェクト「ビオファブリカ・デ・コライス(サンゴのバイオ工場)」は2015年の立ち上げから、3Dプリンタを利用してポルト・デ・ガリーニャスのサンゴを救う活動に取り組んでいる。
「パンデミックによる海水浴客の減少で、昨年以降、事故によるサンゴの破損は例年に比べて少ないですが、過水温の上昇によるサンゴの消失は続いています」とプロジェクト・リーダーのフダン・フェルナンデス生物学博士は語っている。
ビオファブリカ・デ・コライスによるサンゴの救出方法は、折れたサンゴや、一部切り取った白化の進むサンゴを、3Dプリンタでつくった生物分解性プラスチックの土台に差し込み、観光客の立ち入らないエリアで保護、経過観察し、回復後に土台ごと元のサンゴ礁に戻すというものだ。サンゴの日々のケアや観測には地元の漁師やダイバーとの共同作業で取り組み、3Dプリンタによる土台づくりは世界自然保護基金WWFブラジル支部からの資金援助で行っている。
現在、保護に取り組んでいる2種類のサンゴのうち、絶滅の可能性が高いMussismilia harttiiは、4カ月で倍の大きさになるなど確かな手応えをつかんでいる。
しかし状況が深刻であることには変わりはない。国連の気候変動政府間パネルは、報告書で2030年にも世界の気温が産業革命前に比べて1.5度上昇すると警告しており、生態系への多大な影響が懸念されている。サンゴ礁については70〜90%が死滅すると、同報告書は警鐘を鳴らしている。
フェルナンデス博士は、サンゴ礁の危機について、社会全般を対象とした情報発信と啓蒙の必要を訴える。ポルト・デ・ガリーニャス海岸には毎年約200万人の海水浴客が訪れており、地元コミュニティーとプロジェクトチームが連携して、観光客がサンゴの保護に携われるエコツアーを打ち立てたいと語っている。
https://biofabricadecorais.com/