結婚前のカップルや新婚夫婦から聞く最も多い悩みが、「お金」の問題だ。結婚後にもめないためにも、お互いの意思を確認しておくことが重要だ。リスクモンスター株式会社が20~40代の女性に実施した「離婚したくなる亭主の仕事」についてのアンケートを見てみよう。夫の仕事について、妻に不満があるのが43%、不満がないのが57%だった。年代別で比較すると、30代(44.5%)が最も高く、次いで20代(42.5%)、40代(42.0%)と続いている。結果を見ると、どの年代でも4割以上の女性が夫の仕事に不満を抱えているようだ。夫の年収別に不満の有無を見ると、夫の年収が低くなるほど妻の不満は高くなる傾向にある。
1位 給料が低い:74.0%
2位 残業が多い:35.3%
3位 福利厚生が不十分:22.5%
さらに夫の年収別に転職希望の有無も見てみよう。300~500万円の間だと、転職してほしいと感じるようなのだ。反対に、年収が600万円以上だと、夫に転職してほしいと考える女性は2割未満となっている。年収にそこまで不満を持たない場合は、特に転職してほしいとは思わないのだ。
1位 300万円以上400万円未満:39.8%
2位 300万円未満:36.4%
3位 400万円以上500万円未満:31.8%
また同調査では、妻の就業状況別に夫の仕事に対する「不満」「転職希望」「離婚意識」の有無も調査している。すべての項目で、専業主婦よりも共働きの妻の方が回答率が高い結果となった。自分が働いている分、夫の年収には敏感になるのだろう。結婚とお金の関係について考えるべき3つのポイントを紹介しよう。
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ポイント1: 金銭感覚が似ていることが重要
結婚するとなると、お相手の金銭感覚も合っていないと辛くなる。「恋愛にお金は関係ない!」なんていう方もいるが、家庭を運営していくにはお金の知識は大切だ。とても気の合う相手と結婚しても、浪費ばかりでパートナーを銀行口座のように考えているようでは、長続きしない。ずっと長く幸せでいられるには金銭感覚が似ていることも大事な要素だ。
お金の使い方には「消費」「浪費」「投資」の3つの考え方がある。この3つに対する考え方が大幅にずれていないことが「感覚が似ている」と、いうことだ。「消費」「浪費」に関しては日常の買い物を見ていれば、どんなことを消費と思うか、浪費と感じるかなどわかりやすいだろう。特に「浪費」に関しては、価値観の差が出やすい。注意して見るべきポイントだ。「投資」についてもよく見極めが必要だ。女性の場合、美容関連を投資だと思っている節がある。ある程度は必要だが、大金をかけ過ぎていないのか見極める必要はある。いずれにしても「消費」「浪費」「投資」の3つの考え方が大幅にずれていると「金銭感覚が違う」という結論に至ってしまうのだ。
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ポイント2: 結婚の幸せは年間60万円程度と心得よ
結婚とお金の関係を調べるために書籍『オイコノミア ぼくらの希望の経済学』を読んでみたところ、「結婚式にお金をかける」のは、離婚防止になるようだ。なぜ「離婚防止」なのかというと、結婚式で大きなお金をかけると再婚するのに、またお金がかかるから離婚しない方が良いと考える人が多いためとのこと。例として、15世紀のイギリスでは妻の実家から年収2年分を持参した記録や、アフリカの部族で、夫から妻の家に牛を贈る習慣が紹介されている。筆者は、結婚式をそのように考えたことが無かったので印象的だった。
さらに、結婚によって得られる幸福感の計算式もあった。タイ出身の経済学者が考えた式で日本円で計算すると、得られる幸福感は年に約60万円なのだ。これは、思っていたよりも安いと感じた。月額にするとたったの5万円だ。少し冷静に考えてみよう。毎月5万円収入が増えらた少し贅沢できるかな、という金額ではないだろうか。そう考えてみると結婚とは、「ちょっとの幸せ」だと考える方が結婚生活は、長く続くのかもしれない。逆に考えてみても、毎月の5万円がなくなってしまうのは、少し寂しい。たかが5万円、されど5万円ということだ。その位に考え相手に依存し過ぎないことも大事なポイントだ。
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ポイント3: 尊敬婚の可能性も考えてみる
かつては結婚すると男性が女性を食べさせるというのが普通だった。なので「自分より年収が高い男性がいい」と考える女性が多かった。ところが最近の男性は「自分と同じ年収、あるいは上でもよい」という人が増えているのだという。実際に、女性のほうが年収が高いカップルも多くなってきている。「尊敬婚」と呼ばれているようだ。尊敬婚は、「結婚したらお金がかかる」という男性の悩みと、家事や育児を分担したいという女性の悩み、これがお互いクリアできるのだ。
また結婚と個人のお金を混同している人も気になる。「結婚前の貯金って、誰のお金なんですか?」と、新婚の女性に聞かれたことがあった。誤解しているようだが“結婚しても自分のお金は、自分のお金”だ。なぜなら税金は、個人にかかるのだ。世帯単位の課税ではない。結婚前に自分が働いて貯めたお金は、あなたのお金だ。ただし、結婚して一緒に住むマイホームや子どもの養育費と教育費等、夫婦の夢を叶えるためには力を合わせて、お金を出し合うということだ。尊敬婚の場合家計の負担は、妻の方が重くなるかもしれない。そういう場合は、夫の家事労働の比率の負担で調節となる。
ただしこんな調査もある。英バース大学の研究者が6000組のカップルを分析した結果なのだが、妻の収入が世帯年収の40%を超えると、夫のストレスが大きくなるという論文だ。男女平等の世の中とはいえ、「夫の方が稼ぎが多くなくてはいけない」という古い価値観はまだ残っていると考えられる。尊敬婚を受け入れられる男性は、まだ少ないのかもしれない。
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家事は手抜きができる時代に
ただし今後、家事の負担は減っていくと考えられる。掃除や食器洗いは機械任せにできる時代だ。先日見たモデルルームでは、お風呂に自動洗浄機能がついていた。風呂掃除もなくなるのだ。洗濯も乾燥まで全自動もできるし、洗濯代行にお願いすることもできる。食品や日用品の買い物も宅配サービスで十分だし、料理も炒めるだけなどのミールキットならば、小学校の高学年の子どもでも作ることができる。家事は手抜きできる時代になったのだ。家事をしない罪悪感は、なくなっていくと感じる。
コロナ化で時短勤務が進んでいる。お互いの仕事や年収に対する不満があるのならば、妻も夫も副業をして補填することも考えられる。1円にもならない家事労働に時間を割くよりも、1円でも多く稼ぐことで夫婦間の不満もなくなるのでは、ないだろうか?
【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/