【Color of Japan 日本の魅力、再発見】神秘的な<常磐色>が息づく屋久島の森

  • 文:岩崎香央理
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<屋久島:360° VR映像>
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<屋久島:エリア映像>
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断続的に降る雨と雨の合間に、けぶるような霧が流れる鬱蒼とした森。「月のうち、三十五日は雨」と、文豪・林芙美子が小説『浮雲』に書き表した屋久島は、旅人にとってときに試練となる荒れた気候こそが、世界的にも稀なる多様性の森をつくり上げてきた。


冬も葉を落とさない常磐木(ときわぎ)である杉は、世界自然遺産・屋久島のアイデンティティ。<常磐色>と称される茶みを帯びた濃いグリーンは、常緑樹である杉や松の佇まいを連想させ、長寿と繁栄の願いが込められた色だという。


常磐色の森の主、屋久杉に会いに「白谷雲水峡」を歩いていこう。島の北部を流れる白谷川の上流域に広がる、苔むした神秘的な渓谷。入り組んだ杉の気根や歪曲する幹、山肌と一体化した花崗岩の表面を、苔はどこまでも這い上がり覆い尽くしている。その繁殖力の、なんと旺盛なことだろう。屋久島は、1,000メートル級の高峰が40以上も身を寄せ合う山岳島。その宿命ともいえる霧とスコールが、森の精である苔類を生き生きと保ってくれる。


朽ちて倒れた老木や伐採された切り株の上に、新たな株が更新した二代杉。幹と幹が根元で融合した合体杉や、ほかの木に取り憑いて成長する着床植物。ダイナミックな生命力に圧倒されながら山道を辿ると、やがて森のオアシスのような「ウィルソン株」が迎えてくれる。中が空洞になった太古の切り株には祠が祭られ、水が湧き出る。疲れた旅人を束の間休ませてくれる癒しのスポットだ。
倒木が土に還る途上のごとき自然のトンネルをくぐって、険しいルートはなおも続く。一日がかりのロング・トレイル。雨が叩きつけても歩を止めず、高みを目指した旅人だけが森の最奥で出合える、それが屋久島のシンボルであり、誇り高き「縄文杉」なのだ。

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<ウィルソン株>
伐採時の樹齢は2,000年以上と推定される、巨木の切り株。内部から空を見上げ、ハート型に見えるポイントを探そう。

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<倒木のトンネル>
倒れた老木やねじれた幹、絡み合う気根がところどころに奇妙なアーチを形成する。

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<屋久杉>
屋久島では、樹齢1,000年以上の杉を「屋久杉」と呼ぶ。最長老の縄文杉は樹齢7,200年との説もある。

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<白谷雲水峡>
世界遺産区域には含まれていないが、屋久島らしい景観が人気のトレッキングコース。花崗岩を削る渓流と苔むした森を抜け、辻峠を経て絶景ポイントの太鼓岩へと至る。

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