『孤独のグルメ』第10話レビュー。五郎が"孤独のグルメ"を志向する理由を考える

  • 文:絶対に終電を逃さない女
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Ⓒテレビ東京

『孤独のグルメ Season9』第10話は、五郎の白飯好きが特に強調された回だった。舞台は栃木県宇都宮市の居酒屋「庄助」。3人のフレンドリーな女将さんが営む、民家のような落ち着いた雰囲気が魅力的な小さなお店だ。

下戸の五郎はお決まりのウーロン茶を飲みながら、「ご飯って書いてないけど、あるかなあ」「すいません、ご飯ってありますか?」と真っ先にご飯があるかどうかを確認する。あるとわかると、「よし、白飯があるならもうこっちのもんだ」と、意気揚々と庄助ギョウザ、ハムカツ、きゅうりの漬物、もつ煮を注文。

待っている間、お通しの枝豆を食べながら「酒は飲めずとも、酒のつまみは好きな俺」と心の中でつぶやく五郎に共感する。私も五郎と同じく酒は飲めないが、子どもの頃から父の酒のつまみのさきいかやチーズかまぼこなどをおやつとして食べていたくらい、酒のつまみは好きだ。「庄助」のような個人経営の渋い居酒屋やオシャレなバーの雰囲気も好きだし、お店の人や他の常連客と仲良くなったりといったエピソードもなんだか風情があって憧れる。でもやはり飲めないので、1人で飲み屋に入る勇気はない。

10話での五郎は、自分が下戸であることを気にする様子もなく居酒屋に入り、「白いご飯さえあれば、どこだってパラダイスだ」と豪語し、いつものように食事を楽しむ。居酒屋などで飲んでいる人たちは、白いご飯は食べないし、そもそもあまり食べない印象がある。私は人と飲みに行くたびに内心「普通に晩ご飯食べたい」と思いながら、みんなあまり食べないので合わせて我慢しているが、やはり酒を飲まない人は食べるしかないのではないか。五郎を見習って、居酒屋でがっつり食べてみたい。

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飲酒と人間関係

そう考えると、そもそも五郎が食べることが好きで、とりわけ1人での食事が好きなのも、下戸であることが関係しているのかもしれない。私の近しい友人には、人並み以上に酒を飲むような人がいないのだが、これはおそらく偶然ではない。大学1年の頃は周りに酒が好きな人は多くいたが、いつのまにか飲まない人ばかりになっていたからだ。酒を飲むか飲まないかは人間関係に影響する。特に男性で下戸となると、肩身の狭い思いをした経験も多いのではないだろうか。飲めないぶんだけ食べることが好き、というだけでなく、五郎が1人で外食をする“孤独のグルメ”を志向しているのは、そういった影響があるとも考えられる。

食生活や人間関係に影響すれば、必然的にライフスタイル全体に関わってくる。逆に飲める人であっても、度が過ぎれば悪い方向に作用することもよくあるわけで、飲めても飲めなくても、酒は人生を左右するといっても過言ではないのかもしれない。

アルコールに弱い体質は変えられない。だからこそ、もつ煮をご飯に乗せてかき込み「あ〜、もつまんま、最高」と至福の時を過ごす五郎を見て、居酒屋での“孤独のグルメ”にも挑戦してみたいと思った。

宇都宮場面写真009.png
次回放送は9月17日(金)深夜0時12分からスタート!Ⓒテレビ東京

絶対に終電を逃さない女

1995年生まれ、都内一人暮らし。ひょんなことから新卒でフリーライターになってしまう。Webを中心にコラム、エッセイ、取材記事などを書いている。『GINZA』(マガジンハウス)Web版にて東京の街で感じたことを綴るエッセイ『シティガール未満』、『TOKION』Web版にて『東京青春朝焼恋物語』連載中。
Twitter: @YPFiGtH
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【第二話】『孤独のグルメ』第2話の聖地巡礼レビュー。井之頭五郎に「攻めの姿勢」の大切さを学ぶ
【第三話】『孤独のグルメ』第3話の聖地巡礼レビュー。東麻布で外国料理店のもつ“力”を感じる
【第四話】『孤独のグルメ』第4話の聖地巡礼レビュー。井之頭五郎の「デカちゃん」ぶりを思い知らされる
【第五話】新型コロナに感染した人間が、『孤独のグルメ』を見て思うこと
【第六話】『孤独のグルメ』第6話の聖地巡礼レビュー。半月ぶりの外食は「普段使いしたい」店で
【第七話】『孤独のグルメ』第7話の舞台は「貴州火鍋」。五郎の桁違いの体力に理解が追いつかない
【第八話】『孤独のグルメ』第8話の聖地巡礼レビュー。名物店主と焼きまんじゅうを高崎の街で味わう
【第九話】『孤独のグルメ』の聖地巡礼を続けてきて、気づいたこと