MOODMANと申します。週末はクラブでDJを、平日は広告業にてクリエーティブディレクターを務めております。1990年代の前半からそのような生活スタイルなので、かれこれもう30年になりますでしょうか。日常と非日常を行き来しながら、気がつくと社長シリーズ全盛期の森繁久彌さんを越える年齢になってしまっていることに気づき、愕然としています。
このコラムでは、日々のアナログ体験を備忘録的に書き留めていければと思っております。思い起こせば、1978年。デジタルとアナログという方式の違いをはじめて認識したのは、シチズンのコンビネーションクオーツ式腕時計「デジアナ」でした。出発点があのあたりなので、デジタルがどこまで進化しようとも、アナログとのハイブリッドがなんだか好み。
さて、第一回目は、関東が緊急事態に入る少し前。春日部周辺を、アナログレコードを求めてひとりぶらりとフィールドワークした日の記録です。
8:00 AM ホテルニュー越谷
地元の駅を出発し、東武スカイツリーラインに揺られて春日部方面へ。越谷を通過するあたりで、スネークマンショーの「ホテルニュー越谷」をカセットテープで聞きつつ気分を盛り上げます。少年期のすり込みは強いもので、越谷と聞くだけでちょっと大人な妄想が膨らんでしまいます。
9:30 AM 煮干乱舞
お目当てのレコード屋さんに行く前に「朝ラー」で腹ごしらえをすることにしました。春日部駅の一つ手前の武里駅で降りて、セメント系煮干ラーメンの有名店「煮干乱舞」へ向かいます。注文したのは、濃厚タイプの中華そば(醤油)とうずらのトッピング(うず乱舞)。この日の煮干しは千葉平子、広島天竺鯛とのこと。しっかり目が覚めました。駅前の喫茶店「ジョイ」は残念ながら開店前だったので、早めに春日部へ。
10:10 AM ぷらっとかすかべ
春日部駅に着いたら、まず、観光案内所「ぷらっとかすかべ」に立ちよってみました。クレヨンしんちゃん情報で溢れる館内を歩き回り、フィールドワークに有益そうなマップやパンフなど、オンラインでは得られない情報をゲットします。スタッフさんに軽く会釈をすると、なぜか熱心なクレヨンしんちゃんファンと思われたようで、しんちゃん情報を厚めにインプットされました。
10:30 AM ジーンズ・夏
春日部は彫刻の街とのことなので、公式のアートマップを参考に路上に無造作に並ぶ彫刻たちを一つ一つチェックしてみました。気になったのは古利根公園橋の「ジーンズ・夏」という裸体像で、「ジーンズの硬い木綿と肉体とが織りなすシワ」にインスパイアされた作品とのこと。ムード音楽のジャケのような世界観にクラクラします。まだ11時前です。
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11:00 AM A-1ミュージック
開店時間ちょうどに、本日の目的地<A-1ミュージック>に到着です。もう10年以上前になりますが、ムードコーラス研究家の秘密博士さんに教えていただいた老舗です。店内にはインストのムード歌謡が静かに流れています。棚をランダムにチェックしたところ、7インチコーナーに幸がありそうだったので小一時間かけて深掘りしてみました。ご近所の方でしょうか、レコードを売りに来た人がひとり、レコードを買いに来た人がひとり。会計の際、店長さんとお話ししたところ、若い頃から通っているお客さんが最近ラッパーとしてご活躍していて嬉しいとのこと。アナログは世代を超えて人を繋ぐ。ちょっといい話ですね。結局、7インチ22枚、12インチ1枚を購入しました。
1:00 PM 南桜井
レコードを買い終わってもフィールドワークは続きます。この日はもう一ケ所、行かなくてはならない場所がありました。首都圏外郭放水路…いわゆる「防災地下神殿」です。春日部を離れ、東武鉄道野田線で南桜井駅へ。駅から神殿までは、徒歩40分ぐらいです。住宅地を抜け、森のトンネルをくぐると、プチ田園地帯が広がります。風景の変化が面白いので徒歩がお薦めです。
2:00 PM 防災地下神殿
憧れの「地下神殿」に到着です。ご存知、首都圏の水害を軽減するために用意された巨大な治水施設。初心者なので4つの見学コースから「気軽に参加!地下神殿コース」を選択しました。受付を済ませ、「調圧水槽」の入り口へ。コロナ感染防止のため、見学者は限定です。そっけない扉をくぐり115段の階段を降りるとそこは別世界。太さ2m高さ18mの柱が立ち並びます。大きいって強い。あっという間に1時間が過ぎました。
3:30 PM ブックオフ
地下神殿の余韻に浸りながら、江戸川沿いを歩いて駅方面へ…と思っていたら、遠方にブックオフの看板を発見。見つけてしまったら仕方がありません。チェックインしてみました。16号春日部庄和店です。レコードコーナーもありましたが、すでにどなたかが抜いた形跡があり、意外と値段も高かったのでスルー。動作未確認ですが8mmフィルムの機材が充実しておりました。
4:30 PM 百畳敷きの大凧
消化不良のままブックオフを出たところ、今度は「道の駅1km」の看板が目に止まります。1kmならと環状道路沿いに歩き始めたところ、視界に突如、「百畳敷きの大凧」が…。15メートル×横11メートル。由来は、江戸時代の養蚕の豊凶占だそうです。確かに巨大ですが、地下神殿の後で感覚が狂っているのか、普通に感じます。それにしても、行けども行けども道の駅らしき建物が見えず、若干不安に。空も暗くなってきました。
5:00 PM 道の駅庄和
なんとか、道の駅にたどり着いてタバコを一服。物販コーナーをざーっとみた後、「麦ぼうず」といううどん屋さんで「すったてうどん」を注文。「すったて」とは「すりたて」の意味だそうです。すり鉢で胡麻、味噌、大葉、胡瓜、茗荷などをすり合わせ、つけ汁に合わせていただく。冷や汁のような味わい。お腹が満たされたところで、フィールドワーク終了。家路につきましたが、よく考えると今日、麺類しか食べてませんね。ではでは。
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春日部で出会ったレコード3選
■「たけさと音頭/ 春日部音頭」
今回フィールドワークした「武里」のご当地コンテンツを発掘しました。春日部市がベッドタウン化した昭和50年に、「武里団地」の入居10周年を記念して作られたソノシートです。A面に武里、B面に春日部の音頭が収録されています。新興住宅地である武里団地の子供たちにも故郷の感覚を…。70年代、日本の都市郊外から生まれたニュータウン音頭も、時が経ち、立派に故郷の一部に。武里駅前の電気屋さんなど、ご近所スポンサーの宣伝もグッドです。
■「朝日ソノラマ 第25号」
1962年発売のソノシートブックです。興味深かったのは、ドドンバ、パチャンガ、スクスクなど、60年代に流行した海外のリズムに対抗して日本独自の新リズム「ドンドン」が登場したという記事。2小節めの第2拍子と第3拍子に「ドンドン」というアクセントをつけるのが特徴で、民謡からジャズまで幅広くアレンジ可能とのこと。ダンサーは「ドンドン」に合わせドンケツするそうです。ドンドンverのずっこけたコーヒールンバがエキゾチックで素敵でした。あまり聞いたことないビート感。
■鈴木章治とリズム・エース「恋のブルース/素敵なあなた」
鈴木章治とリズム・エースといえば、灰田勝彦さんの「鈴懸の径」を4拍子にアレンジしたカバーが有名ですが、その全国ヒットの少しあと、1959年に発表したシングルがこちらになります。日本のベニーグッドマンと呼ばれた鈴木章治さんのクラリネットはもちろんとして、ヴィブラフォンは南部三郎さんでしょうか、ちょっと硬めなところがエキゾチックです。マーティンデニーの作品だと「Quiet Villege」とか「Afro-Desia」とか、あのあたりが1959年ですね。