強力な粘着力を持つウルシの樹液をコーティング素材とする漆塗りは、酸やアルカリに強く、抗菌性も極めて高いといわれる。高級食器やアクセサリーなどに利用されてきた日本古来の伝統技法だが、この漆に銀箔をまぶしたダイヤルを持つ新作が「シチズンコレクション」から登場した。柔らかな印象を与える白を基調にした「繭色(まゆいろ)」と、紅葉する森林が日没時に迎える薄暮をイメージした「鈍緋色(にびひいろ)」の2モデル。
「繭色」は、ダイヤルとなるメタルプレートの表面に白い漆を塗り、そこに銀箔をまぶしてから、さらに白く塗装。それによって「白班(しらふ)」と呼ばれる独特の模様が表れる。もうひとつの「鈍緋色」は、漆を塗布したメタルプレートに硫化させた銀箔を貼り、その上からぼかし塗装を施すことで、この銀箔の彩が斑柄となって浮かび上がる。鈍(にび)は灰色、緋色(ひいろ)は濃い赤の意味。この2色が混淆した独特の深い色味をベースに、銀箔の斑(まだら)が豊かな表情を見せてくれる。
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1枚ずつ異なる、手仕上げのダイヤル
これらの技法は、漆工芸の老舗である坂本乙造商店(1900年創業)とシチズンの共同開発であり、1枚1枚のダイヤルを手作業で仕上げていることから、完全に同じものはないという。どちらのモデルも、時分針にシャーブなエッジのドフィーヌ針を採用。「繭色」は針の峰を中心とする両面ともにポリッシュのミラー仕上げだが、「鈍緋色」では片面を艶消しのマットに磨き分けており、いずれも針の立体感が高く、視認性に優れている。
ムーブメントは自動巻きでパワーリザーブは約40時間だが、そのインジケーターを10時位置にレイアウト。ゼンマイ残量が分かるので、時計を腕から外した時に便利。下方に降りたパワーリザーブの針を、リューズの手巻きで上げていくのも機械式特有の面白さではないだろうか。3時位置には日付表示、さらに6時位置には24時間表示も装備。昼夜が分かるだけでなく、1日の時間経過を量的に把握できる。
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特別なダイヤルの普段使いモデル
「シチズンコレクション」は、日常生活のどんなシーンにも違和感なくフィットするベーシックデザインが基本コンセプト。いわば普段使いをテーマにした腕時計であり、だからこそ機能も充実しているのだが、今回の2モデルは漆に銀箔という特別なダイヤルをコンビネーション。ビジネスからプライベートに至るまで、どんな状況に遭遇しても心が萎縮したり怯むことのないように、世界が高く評価する日本の伝統技法をアレンジしたとも考えられる。少なくともそのように意識して腕に巻けば、自信と誇りが生まれるのではないだろうか。
問い合わせ先/シチズンお客様時計相談室 TEL:0120-78-4807