近年、日本各地で多様なコンセプトを掲げるホテルが生まれている。今年4月にはJR水道橋駅近くに「トグルホテル水道橋」が開業。総武線の車体を思わせる黄色とグレーのストライプの外観や、客室ごとに異なるバイカラーで彩られた内装はクライン ダイサム アーキテクツ(KDa)が担当。
事務所を主宰するアストリッド・クラインとマーク・ダイサムはロンドンのRCA(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート)で出会い、バブル全盛期に次々と発表される革新的な建築に魅せられて来日。世界的な建築家・伊東豊雄の事務所を経て、1991年に独立した。現在は途中加入した久山幸成との3人体制で、長年にわたり建築やインテリアなど幅広い分野でグローバルに活動している。
有名企業やトップブランドの建築を多く手がけてきた彼らだが、それらは銀座や原宿、代官山など東京の街を象徴するランドマーク的な存在となっている。そのひとつが設計コンペを勝ち抜いて実現した「代官山T-SITE」だ。ブランドロゴである“T”をモチーフにしたグラフィカルなファサードに加え、書店を中心に多様な業態を複合させた滞在型店舗が話題に。さらに2016年には、“ソーシャル”を軸とした複合型施設をバンコクで手がけるなど、自由な発想で常に新しい価値観を提案し続けている。
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クライン ダイサム アーキテクツが携わってきた代表的な建築
【グラフィカルなファサード】
人々が行き交う都心でも目を惹かせる印象的な外観もKDaならでは。頭文字のTや大小異なるアルミの菱形、ダイヤ型のウッドピースなど、ブランドを連想させる幾何学モチーフを連続させたファサードが特徴。
【星野リゾート】
装飾を施した2枚の葉が折り重なるように開閉するドーム型のチャペルを手がけて以降、3つの円錐形の大屋根が突き出たユニークな形状の滞在施設「ポコポコ」など、長年にわたり星野リゾートの施設を担当。
【ソーシャル複合施設】
国際色豊かなメンバーが揃うKDaだけに、海外案件も多い。「T-SITE」の海外版ともいえるバンコクの巨大複合施設は、書店を中心にレストランやコワーキングスペース、保育施設などソーシャル機能を備える。
Klein Dytham architecture
英国のRCAで出会ったイタリア出身のアストリッド・クラインと英国出身のマーク・ダイサムが1988年に来日。伊東豊雄建築設計事務所を経て、91年に独立し、クラインダイサムアーキテクツを設立。96年に久山幸成が主要メンバーとして加わる。
【師匠】伊東豊雄
革新的な建築で50年以上にわたり日本の建築界をリードし続ける巨匠建築家のひとり。