必要なくなった素材や捨てられる運命だった品も、異なる目線から見ると、日常を彩る宝物に変わる。新たな命を得て輝く再生プロダクトを紹介する。
光の透過を味わう、不純物のない素のガラス

デザイン事務所のドロワーズが廃材をなくすために立ち上げたブランド、ウォーター。円柱や半円のガラスの塊「ハモン」シリーズは、不要になった工業ガラスを溶かし、不純物を取り除いて再生したもの。特に用途は特定しておらず、重石としてドアストッパーやブックエンドとして使う他、箸置きにしてもいいし、窓辺に置いてガラスに透過する光が揺らめく様子をただ眺めるのもいい。ライトイエローグリーンの3つは蛍光灯、ブルーグレーはブラウン管のガラスを再利用した。
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流れ着いた“最後のかたち”を、ただ愛でる

海辺で拾った漂流物に真鍮のオブジェを組み合わせていくアーティスト、オートゥルノトゥルス。尾崎紅、種村太樹のふたりの審美眼に叶った原型を採取しては、尾崎がデザインを決め、種村がひとつずつ真鍮を叩いてかたちづくっていく。「波や風に削られたモノを見ていると、どのように生きてこのかたちに至ったのか、ずっと想像していられる」と種村は語る。自由に鑑賞してほしいとの思いから、揺らぎや抜け感を大切にデザインしている。
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名作の価値を、現代アートでさらに引き出す

廃番になったものや店舗の展示サンプル、規格外のB品など、“訳あり”で一般流通に乗せられなかったマスターピースに、新しい命を与えるプロジェクト「Re:(リ)」。長年親しまれてきたクラシックデザインの価値を、現代のアートワークでさらに高めることを目的に、東京のショップ、シボネが継続的に企画。今春開催された第1回目はアルヴァ・アアルトによるアルテックの名作「スツール60」に、福岡在住のイラストレーター、トーヤメグが挑戦。座面や脚にハンドドローイングを描いた他、布張りの座面には刺繍も施した。
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いつもの暮らしに溶け込む、備前の伝統

土の素朴な表情や窯変が描き出す有機的な文様で知られる備前焼。その正統な血筋を引く窯元が、現代の食卓でも日常的に使える器をと発表したのがこの「ヌー」だ。主となる製法、素材などは古来の伝統を守りつつも、明解かつスタイリッシュな手法でものづくりのあり方を追求。陶土には、田土(ひよせ)と呼ばれる土に加え、同じ備前エリアで採取される三石蝋石(みついしろうせき)を配合。これまで備前内では使われていなかった蝋石を使用することで、新たな地産地消のあり方を提示している。
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ドラム缶を裁断&再生、一点モノの家具に

金属製のシェードをよくよく見ると、文字が描かれていたり、数字が刻印されていたりする。このシェードの素材に使われているのは、オイルなどを貯蔵しておくためのドラム缶。長年使用された後で廃棄されたものを裁断し、ランプシェードにリ・デザインしている。シェードの形状は一定だが、使われるドラム缶の部材がすべて異なるので、いわばすべてが一点モノ。シェードの内側など、あえて個性が際立つようにデザインされているので、自分のテイストに合ったものを探し出す楽しみもある。
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築80年の木造建築を、美麗な容器へと循環

日本の伝統的なものづくりの技や素材のよさを、現代的な文脈へと巧みに転換する金沢在住のデザイナー、原嶋亮輔。彼が手がけた「ジャパン・ボトル」は、一見なんの変哲もない木製ボトルのようだが、素材に使われているのは、なんと築80年を超える古民家の本柱。ろくろ挽きで丹念に削り出すことで、廃材だった柱から美しいケヤキの木目を引き出し、漆を施して表情を際立たせた。モノの価値だけでなく、日本古来の木造建築の循環をも考えた、注目すべきプロジェクトだ。
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見慣れたタイルを、“マス”から“モノ”に

タイルと聞くと、ツルっとして四角く平たいものを想像しがちだが、実は色、かたち、触感ともに自由にアレンジでき、市場には多様なデザインが揃う。そんな製品の魅力を知ってもらおうと、タイルの産地、多治見のメーカーが始めたのが「タイル キオスク」だ。業者向けの製品から、窯元に残っていたデッドストック、プロトタイプなど、オリジナリティあふれるタイルを1点から販売している。大量生産の陰にある、プロダクトそのものの魅力に気づく貴重な機会だ。
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環境先進国から届いた、機能的なプロダクト

バルト三国最北の国、エストニア。総人口約133万人という小国ながら、いち早くデジタル政策を展開するなど、その先進性が際立つ。環境に対する意識も高い同国で人気のエコプロダクトが、この「ウォフ」だ。リサイクルPETを85%使用したPETフェルトは軽量な上に、高い堅牢性を誇るため、写真の収納ボックスはスツールやテーブル代わりに使うことも可能。同素材のハンガーは、衣服の型崩れを防ぐとともに、フェルト故にすべり止めの効果も発揮してくれる。
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目を惹く色彩の源は、廃棄プラスチック

色鮮やかなグラデーションが目を惹く椅子「マキシマム」の素材に使われているのは、廃棄プラスチックだ。フランスのメーカー、マキシマムは、製造の工程で規格外とされ、捨てられるプラスチックがフランス国内で1日6万5000トン以上におよぶことに着目。廃材を集め、炉で溶かして金型に流し込んで、新しく椅子に再生している。各地の工場から原料を取り寄せるため、カラーはまちまちだが、好みの組み合わせを選ぶという楽しみ方も。脚は写真の金属製の他、木製も揃う。
※この記事はPen2021年10月号「捨てない。」特集よりPen編集部が再編集した記事です。