発酵で実現。フードロスをなくす店のつくり方

  • 写真:ジャンニ・プレッシャ(P1)、内藤貞保(P2)
  • 文:河内秀子(P1)、小長谷奈都子(P2)
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これからの食の店舗運営に求められるのは、ロスを極力減らす工夫と少しの手間。ベルリンと京都、それぞれの取り組みを追う。

Berlin/発酵などの手立てを活用し、余剰食材に再び光を当てる
イスラ・コーヒー・ベルリン

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イスラ・コーヒー・ベルリンは、前の入居店舗が残していった家具をリサイクルして活用。 

「イスラ・コーヒー・ベルリン」は、サーキュラーエコノミー(循環型経済)を実践する、街で人気のカフェだ。たとえば「オレンジ蜂蜜ケーキ」と好相性のカプチーノ。カプチーノをつくる際に出る余剰ミルクは店内で発酵させ、ホエイとフレッシュチーズにしてケーキづくり他に活用する。ネギの硬い部分はネギオイルにし、人気メニューのサンドイッチなど、味つけのアクセントに。ひと手間かけることで、普通なら捨ててしまう食材を甦らせている。こうして生まれる料理のおいしさをきっかけに、フードロスの存在に気づく食べ手も多いというのも納得だ。

こだわり商品>使う部位を分け、食材の汎用性をUP

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左:ポロネギの白い部分はサンドイッチの具に、青い部分はオイルと合わせてアイオリソースにと余さず使う。 右:白菜に余り野菜を混ぜて仕込む「自家製キムチのグリルチーズサンドイッチ」(7ユーロ)。味の決め手はアイオリソース。キュウリの余材からなる「自家製レモネード」(3.50ユーロ)と。

<看板メニュー>余剰ミルクが生む、しっとり美味なケーキ

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カプチーノ用のフォームドミルクをつくる際、少しずつ出てしまう余剰ミルクを集めてヨーグルトマシンで発酵させ、フレッシュチーズとホエイに分けて再利用。ホエイを使うことでしっとり感が増した「オレンジ蜂蜜ケーキ」3.20ユーロ。奥はカプチーノ3ユーロ

<循環ポイント>冷蔵庫に並ぶのは、二次利用を待つ食材

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レモネードをつくった後のレモンの皮を使って、レモン胡椒に。ラディッシュの葉は他の青菜に混ぜて。食材の残りは発酵させたりソースにすることで二次利用。店で出す野菜中心の料理には冷蔵が不要なものも多く、消費エネルギーを抑えるのにひと役買っている。

イスラ・コーヒー・ベルリン

住所:Hermannstrasse 37, 12049 Berlin
TEL:なし
営業時間:8時30分~16時(月~木) 8時30分~17時(金) 9時~17時(土、日)
定休日:無休 
www.facebook.com/Islacoffeeberlin
※店舗情報が変更となる場合があります。事前の確認をお薦めします。

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Kyoto/昔ながらの知恵“量り売り”で、スローな買い物を促す
ゼロ・ウェイスト・キョウト 寺町夷川本店

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もとケーキ店の扉や棚を再利用したゼロ・ウェイスト・キョウトの店内。食材の他、パンやスイーツも販売。山田製油の練りごま、千丸屋の乾燥湯葉など京都ならではの品が多い。

老舗の茶舗や古美術商が軒を連ねる京都・寺町通に誕生した、食のセレクトショップ。米、豆類、有機野菜、味噌など、つくり手の顔が見える食材を取り揃え、昔ながらの量り売りを行う。客は容器や空き瓶などを持参して買い物する。必要な分だけを購入することで食品ロスをなくし、個包装やプラスチック容器を避けることでゴミの削減を目指す取り組みだ。併設のカフェでは、店内で販売する生鮮食品や乳製品などを無駄にしないよう、惣菜や保存食に調理して提供。スローなショッピングが懐かしくて新しい、 “ゼロ・ウェイスト”の発信地となりそうだ。

<こだわり商品>器を持って買いに行く、納豆と豆腐

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上左:京都の老舗・藤原食品と協同した納豆のサブスクサービス。「京納豆」(北海道産大粒、滋賀県産赤大豆 各250ℊ)¥1,000、初期費用の容器代(¥1,200)が別途必要。 上右:店内中央に佇む「豆腐の泉」。昔、鍋を持って買いに行った時代を彷彿させる仕掛け。京豆腐の名店、久在屋の「京まち豆腐」1丁¥292

<看板メニュー>無添加の旬野菜は、惣菜へ積極的に転用

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個包装しないぶん、傷みの早い有機野菜や大豆製品は、ハーブやスパイスを効かせた惣菜に変身させる。シチリア産クスクスとトマトスープ、惣菜が付いた「有機クスクスプレート」¥1,500、この店限定のドメーヌヒデのロゼワイン「もったいない」グラス¥800

<循環ポイント>規格外の変形野菜は、保存食や調味料に変身

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変形野菜を保存食や調味料に活用。瓶は再利用するのでラベルレスに。野菜くずはコンポストへ。左から、「じき宮ざわ」と共作の「薄酢垂惣酢 ウィズ ゼロ・ウェイスト・キョウト」300ml ¥1,555(容器代別、量り売り価格)、「自家製ハリッサ」¥974、「塩レモン」¥864

ゼロ・ウェイスト・キョウト 寺町夷川本店

住所:京都府京都市中京区久遠院前町673-1 
TEL:075-366-4134
営業時間:10時~20時
定休日:月 
https://zerowaste.kyoto
※店舗情報が変更となる場合があります。事前に確認をお薦めします。

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※この記事はPen 2021年10月号「捨てない。」特集より再編集した記事です。