魅力あふれる滋賀で、スローな旅を楽しめる「最新宿」とは?

  • 文: 小長谷奈都子
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滋賀と聞いて思い浮かぶのは? 日本一大きな琵琶湖に、それを囲むような山々。比叡山延暦寺や日吉大社といった荘厳な神社仏閣や、戦国武将ゆかりの城跡などの奥深い歴史文化。鮒ずしをはじめとする伝統の湖魚料理、近江牛といったグルメ。佐川美術館、ミホ・ミュージアムに加え、近頃、滋賀県立美術館がリニューアルオープンを果たし、湖岸沿いのグランピング施設の充実ぶりも見逃せない。

日本一の観光地・京都の隣にあってあまり知られていないが、実は、滋賀は多彩な魅力にあふれる土地。いまの時代、スローな旅を楽しむにはぴったりの目的地だ。その滋賀にわざわざ足を伸ばして泊まりに行きたい新しい宿が次々と誕生している。湖畔の眺めを独り占めできる宿、近江八幡の八幡堀を庭のように散策できる宿など、日常を離れてゆったりと静かな時間に身を浸せる、とっておきの3軒をご紹介。

#01.120年前の旅籠を改装した、1棟貸切の湖畔の宿。

福田屋

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2階の和室からの眺め。空と湖のブルーに癒やされる。この部屋の手前にベッドルームがあり、そこからも景色を眺められる。1階にも和室があるため、2家族での利用も可能。

湖西エリアの高島市今津町に2020年7月オープン。かつて宿場町として栄えたこの地で、いちばんの店構えを誇ったという旅籠「福田屋」が、解体、改修を経て1日1組の宿として生まれ変わった。1階のダイニングルームやデッキ付きのお風呂、2階の和室から望めるのは、空と琵琶湖だけという贅沢な景色。食事は、一流ホテルで研鑽を積んだ主の西村一樹が、地元の生産者から直接仕入れた季節の食材をリクエストに合わせて調理。春はタケノコや山菜、夏は天然の鮎、秋は新米、キノコ、イノシシ、冬は寒モロコなど、四季を通じて近江の豊かな食材を楽しめる。刻々と変化する琵琶湖の景色に癒やされながら、土地の恵みを堪能。そんな自然に抱かれるような滞在で、心身ともにリラックス&リフレッシュして。

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1階の土間にあるレストラン。オープンキッチンからできたての料理が運ばれる。裏口を出ればすぐ琵琶湖で、夏は湖水浴を楽しめ、テラス付き浴室へ直行できるのもうれしい。

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夕食に供される八寸は、郷土料理の鮒ずしやビワマス、鯉の造りなどを盛り込んだもの。

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宿の中ほどに設えられた囲炉裏で、炭火焼きやお鍋を囲む時間も忘れがたい旅の記憶に。

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今津は日本海からの荷を京都、大阪へ運ぶ港として栄えた宿場町。その旧街道沿いに立つランドマーク的存在だった築120年以上の歴史ある建物をリノベーション。

福田屋 Fukudaya

滋賀県高島市今津町今津76
TEL:0740-22-0029
1室2名利用時料金¥100,000(1泊2食付き、税・サービス料込)
※定員6名で、1名追加¥35,000(税・サービス料込)
チェックイン:15:00 チェックアウト:10:00
http://fukudaya.jp

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#02.近江八幡のお堀沿いで、地産地消を味わい尽くす。

旅籠 八…

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無骨さや儚さをコンセプトにした「石の間」。庭を眺めながら湯船に浸かってリラックスできる。ちなみに「木の間」には醤油樽を作る職人が手がけた高野槙の大きな浴槽がある。

1585年に豊臣秀次が開いた城下町で、近江商人発祥の地として知られる近江八幡。その繁栄を支えた水路、八幡堀沿いに立つ築190年の畳屋をリノベーション。京都の鞍馬石をくり抜いた岩風呂が存在感を放つ「石の間」、八幡堀や庭に臨む数寄屋造りの離れ「木の間」という2部屋に、蔵を改装した日本料理「溜ル」、アートカフェ氵(さんずい)を備える宿として、2020年11月にオープン。梁や土壁、襖など当時の意匠を残しながら、遊び心のある和紙や藍色の漆喰などで整えた空間が個性的。レストランでは滋賀産コシヒカリ「丸子米」を信楽焼の土鍋で炊いたごはん、近江牛の藁焼き、カフェでは近江の銘茶、と地産地消を存分に楽しめる。八幡堀の散策や日牟禮八幡宮の参拝も、庭のように気軽に行ける距離感がうれしい。

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数寄屋造りの離れ「木の間」の寝室。寝具は、1925年創業の京都の大東寝具工業から。街を散策するための散策着や室内着、タオルなどは肌触りのよいオリジナルを用意。

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日本料理「溜ル」の季節の献立(¥24,200〜)からの一品「近江牛と野菜の出汁しゃぶ」。宿泊客以外も要予約で利用可能。カウンター8席と6名まで利用できる個室がある。

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朝食はお茶と梅干しで身体を整えてからスタートする。

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旅籠八…があるのは、近江八幡市八幡伝統的建造物群保存地区。白壁の旧家や土蔵が立ち並び、往時の繁栄の面影を残す八幡堀は、映画のロケ地や観光スポットとしても有名。

旅籠 八… Hatago Wakatsu

滋賀県近江八幡市玉屋町6
TEL:0748-36-2745
1室2名利用時料金「石の間」¥108,900〜、「木の間」¥145,200〜(1泊2食付き、税・サービス料込)
※ともに定員3名で、1名追加¥40,535(税・サービス料込)
チェックイン:「木の間」13:00、「石の間」15:00 チェックアウト:10:00
https://wakatsu.jp

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#03.伝統の鮒ずしを使った懐石を、奥琵琶湖の絶景とともに。

湖里庵

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1階の食事席。建築は、建築家として大阪で活動する7代目の弟、左嵜晋吾が担当。この地で生まれ育ち、四季の移り変わりや光の射し方、風の通り道など熟知しているからできた、自然を最大限に活かした設計。ふすまは滋賀県東近江市永源寺の野田版画工房によるもの。

琵琶湖の北端に近い、高島市マキノ町にある1784年創業の鮒ずしの老舗、魚治。斜向いに立つ料亭旅館の湖里庵は6代目が始め、現在は7代目左嵜(さざき)謙祐が看板を守る。2018年の台風で全壊した建物を建て直し、この春、新たなスタートをきった。館内には檜や桂、栗などの無垢材が贅沢に使われ、1階が食事席、2階が1日1組の宿泊スペースとなる。食事席や客室から臨む琵琶湖の美しさは息をのむほど。北に進むに連れ、湖面の透明度も青さも増しているようだ。伝統の鮒ずしを使って“いま”を表現した懐石料理と、その源泉である美しい自然をともに楽しめるなんて、この上ない贅沢。客室にはフィン・ユールやカイ・クリスチャンセンといった北欧の名作イスやソファが配され、ただただのんびりと過ごしたくなる。

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建て替えで一時閉店中に大津市のホテルでポップアップ営業をした際、客の反応をダイレクトに感じられるカウンター料理に刺激を受け、新たにカウンター席を設えたそう。

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食事は宿泊客以外も利用可能。昼夜ともに提供するのは「鮒寿し懐石」(¥14,300)。写真はその中の一品で、鮒寿しとも和え、本モロコの南蛮漬けなどを盛り合わせた八寸。左嵜は京都の嵐山吉兆で修行した。

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2階の客室。畳やソファで、湖を眺めたり、読書をしたり、思い思いの時間を過ごせる。寝室はふすまで3室に分かれ、洗面機能付きトイレもふたつあるため、2世帯や2家族でも。

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一幅の絵を眺めているよう。「湖里庵」は、顧客だった作家の遠藤周作が、自らの“狐狸庵先生”という呼び名をもじって命名。館内の本棚には遠藤作品、近江の歴史や地理の本が並ぶ。

湖里庵 Korian

滋賀県高島市マキノ町海津2307
TEL:0740-28-1010
営)12:00〜、17:00〜(食事のみの場合)
休)火曜、第1・3水曜
1室2名利用時料金¥108,900〜(1泊2食付き、税・サービス料込)
※定員6名で、1名追加¥54,450〜(税・サービス料込)
チェックイン:15:00 チェックアウト:10:30
www.korian.jp

※この記事はmadamefigaro.jpからの転載です。