【Penが選んだ、今月の読むべき1冊】
デザインの世界では、2000年代頃から万人に対する正解のない時代が始まっていた。表現や役割が多様化し、快適さや実用性などの枠組みを超えたデザインに価値を見出す気運が高まってきたのだ。
本書を読むと、改めてデザイン界の新たな流れに驚かされる。著したのは、デザインジャーナリストとして長年取材を続けてきた土田貴宏。2011年から19年までに行った、100組ものデザイナーや建築家へのインタビュー集だ。土田は現状をこう見ている。
「1990年代以降、嗜好の多様化や商業主義的デザインへの反動があります。特に大量生産・大量消費の弊害は、多くのデザイナーが意識している。新しいデザイナーほど少量生産や環境負荷の低い素材の使用、他者との共生などに積極的です。量産品を手がけるにしても、サステイナビリティに配慮し、社会貢献を意識しています」
本書に収められた、ロンドンのデザインユニット、スタジオ・スワインの次の発言からも、こうした姿勢が顕著だ。
「デザイナーは、ものがあふれる世の中でさらにものをつくるという矛盾に気がついています。(中略)デザインがものを減らすためのツールであるという考え方が好きです」
本書のタイトルにあるコンテンポラリーデザインとはなにか? 土田に訊いてみた。
「形態や機能よりコンセプトに重きをおき、それを更新し続けるデザインです。革新性や独創性が自由に発揮される新しい流れとして定着していくと考えます」
コンテンポラリーデザインという言葉をキーワードに活動する日本のデザインユニット、we+もコンセプトを重視しているという。インタビューでの「デザインとアートの中間という位置づけで、社会に問題提起しうるものを目指している」というwe+のコメントに、目が開かれていく思いがする。
本書が伝える、デザイン界が創出する新たな価値は、ぜひ知っておくべきものだ。