オニツカタイガー創業者・鬼塚喜八郎の卓越した創造性は、生み出された靴だけでなく、会社の経営にも反映された。ここでは知られざるエピソードとともに振り返る。
画期的な商品を生み出した、独自の経営戦略とは?
鬼塚喜八郎は経営者としても素晴らしい見識をもった人物だった。創業まもないころ、大企業に立ち向かうために事業を一点に集中することを決めたのも彼。「どんなに硬い鉄板や岩も、一点に錐を揉み込むようにすれば必ず穴は開けられる」と考えた。鬼塚はそれを「キリモミ商法」と名づけ、創業からしばらくは、バスケットボールシューズの開発に全精力を集中し、画期的な製品を生み出した。また、会社が規模も小さく、資金もなかったころに鬼塚が考えたのが名づけて「頂上作戦」。競技用シューズの購買層を4層に分類し、そのトップ層の要求を満たすシューズを徹底して研究することで、下の層にも拡販していくと考えた。そしていちばん下の層は価格競争になるため、ターゲットにしないことも決めた。
※この記事はPen 2020年4/15号「オニツカタイガー完全読本」特集より再編集した記事です。