江戸時代後期に活躍し、いまや世界の「HOKUSAI」として高い人気を誇る浮世絵師、葛飾北斎。その生誕260年を記念して、東京ミッドタウン・ホールにて開催中の『特別展「北斎づくし」』がいよいよ佳境を迎えている。
会場へ足を踏み入れた途端、あっと驚くような気持ちにさせられるかもしれない。床から展示台に壁一面、さらに天井から吊り下げられたバナーに『北斎漫画』がプリントされた展示室に並ぶのは、全15編、約500冊にも及ぶ『北斎漫画』だ。しかも通常、見開きのみで展示されることの多い作品の全てのページを公開している。その数、実に883ページ。人物や花卉草木、鳥獣虫魚から目に見えない妖怪や幽霊などが描かれていて、北斎の描いた森羅万象を一度に鑑賞することができる。
さらに驚くのは『北斎漫画』のみならず、『冨嶽三十六景』の46点と『富嶽百景(初編~3編)』の102図も同じく全て公開されていることだ。まさに『北斎づくし』のゆえんだが、これが実現したのは世界一の『北斎漫画』コレクターである浦上蒼穹堂の浦上満が膨大なコレクションを提供したことによっている。またとない機会であるのは言うまでもない。
浦上と並んで、空前絶後の北斎展を実現させた3名のクリエーターがいる。それが建築家の田根剛とアートディレクターの祖父江慎、それにエディターの橋本麻里だ。田根による斬新な空間デザインはもちろん、会場グラフィックを担った祖父江による新聞サイズの超大判特製カタログも画期的だ。また橋本が監修し、浦上や田根のインタビューも収録した音声ガイドも、展示室内の解説を補完して余りあるほどに充実している。空間、グラフィック、そして解説のいずれとも、北斎が見聞きしたら手を叩いて喜ぶに違いないと思うほどだ。
会期も残すところ1カ月を切り、すでに大きな話題を集めている『特別展「北斎づくし」』。人気の浮世絵師だけに過去に何度も展覧会が開かれてきたが、質量ともにかつてない切り口であることは間違いない。豪華なクリエーターらによってさらに魅力が引き出された画狂の絵師、北斎の凄みのある作品世界を、稀有な展示空間で是非目の当たりにしてほしい。
---fadeinPager---
『生誕260年記念企画 特別展「北斎づくし」』
開催期間:2021年7月22日〜9月17日
開催場所:東京ミッドタウン・ホール(ミッドタウン・イースト B1)
東京都港区赤坂9丁目7-2
TEL:050-5542-8600(ハローダイヤル)
開館時間:11時~19時 ※入場は閉館の30分前まで。
休館日:8月24日、9月7日
料金:一般¥1,800 ※事前予約制
※臨時休館や展覧会会期の変更、また入場制限などが行われる場合があります。事前にお確かめください。
https://hokusai2021.jp/