鹿児島は、"鹿児島というひとつの国"のように思います

  • 文:鈴木修司
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BEAMS JAPANの鈴木です。前回は自己紹介と書籍『銘品のススメ』の宣伝で終わってしまいましたが、今回から日本各地を旅して出合ったモノコト、ときにはヒトについてお話させて頂きます。

今年に入って既に2回も訪れた鹿児島県ですが、これだけ日本中を旅していて実は訪問は7、8年ぶりのことでした。以前は年に数回訪れていたのですが、あまり意味はなく縁遠くなってしまい、久々の鹿児島でした。鹿児島を訪れてみて改めて思ったことは、「日本中で鹿児島ほど固有の文化が色濃く残る場所はないのではないか」ということ。はたまた、「鹿児島は、鹿児島というひとつの国のように思う」ということです。私の悪い癖で説明がどんどんわかり難くなってしまっていますが、鹿児島には魅力的で独特なモノやコトがまだまだ沢山あるのです。この2回の鹿児島でもさまざまな場所を訪れたのですが、特に印象的に残っていることをいくつかご紹介致します。

他の地域でもそうなのですが、常に私が気にかけているものが、ご当地の“縁起物”です。縁起物には、その土地の文化や地域性がぎゅっと詰め込まれているので、意外に発見の多いものです。以前より気になっていた鹿児島の縁起物といえば、“鹿児島神宮”で頂ける“鯛車(たいぐるま)”というモノです。

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鯛車は鯛の形につくった玩具(がんぐ)にクルマをつけたもの。幼児が転がして遊び、古くから祝い物などにも用いられた。

ご存知の方もいらっしゃるかもですが、その風貌がとても愛らしく、モチーフそのままにめでたそうな(めで鯛!)、足にクルマのついた郷土玩具です。九州全般に見られる“キジ車”と呼ばれる郷土玩具は、大体がなにかしらの鳥のカタチをしていて、なぜか鹿児島だけが魚なのです。しかも、鯛です。そこにも鹿児島人の独特の気風を感じてしまいます。そんなことを話し出すとキリがないのですが、一地方の郷土玩具を見ていくだけでも、色んなことが見えてくるのです。「だから、日本は面白い!」、脱線しそうなので話を戻します。“鯛車”を製作しているのはたったの一軒で、基本的に手に入るのは“鹿児島神宮”でのみ。そんな希少なモノなのです。ちなみにこちらは製作している方に特別に頂いた、普段はつくることのないミニサイズで、余った材料からつくられたものです。

そして、今回の鹿児島の旅では、別の縁起物との出合いもありました。まずは、“帖佐人形”の座り犬です。日本各地に土人形の産地は点在していますが、鹿児島の土人形と言えばコチラ!

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鹿児島県の伝統的工芸品「帖佐人形」の座り犬。

歴史を辿ればかなり古いものです。ここでそれを話すと長くなるので割愛しますが、その中でも特に意味のある“犬”で普段とは違う“橙色”のものを製作頂くことで話を進めていて、試作品が出来上がっていたのです。お世辞抜きによい仕上がりで満足ですが、実はこの秋に予定している特別な企画のためのもので、BEAMS JAPAN各店で発売しようと考えています。

もうひとつは、新たな鹿児島の縁起物。先にお話した秋の企画のために新しくつくり出したものです。鹿児島きっての港町、いちき串木野にある“亀崎染工”さんが製作した鯛のカタチをした小型のクッションですが、もとは大漁旗の絵柄の一部であった鯛を抜き出して、それをクッションにカスタムしたものです。勝手に「愛でたいクッション」と呼んでいるのですが、人気爆発の予感です。

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大漁旗の絵柄の一部であった鯛を抜き出した、チャーミングなデザインのクッション。

このように古くから伝わるもの、現代のニーズに合わせて新しくつくり出したもの、それらを同じ目線で見て選ぶ、時には製作段階から入っていくこともあり、それが私の生業です。「楽しそうな仕事ですね」とよく言われるのですが、自分で言うのもなんですがホント、楽しいです。

最後に余談で、来週に鹿児島県は奄美諸島を訪れる予定です。かなりの商談や打合せが入っているのですが、最大の楽しみは泥染めで知られる“金井工芸”さんにお願いしている新たな企画物の仕上がりを確認しに行くことです。それと、以前に行ってお気に入りのサンドウィッチが美味しいカフェでお茶することですね。

鈴木修司

BEAMS JAPAN クリエイティブディレクター

1976年、三重県松阪市生まれ、ビームスと同い年です。年間120日近くを旅に費やし、日本各地の様々な場所で魅力的なモノ・ヒト・コトに関わる仕事をしています。肩書きは“BEAMS JAPAN”のクリエイティブディレクター、日本に関係することあれば比較的なんでも来いのスタンスです。大学などで講師を務めることも。『銘品のススメ』著者、『都道府県おでかけ図鑑』監修。

鈴木修司

BEAMS JAPAN クリエイティブディレクター

1976年、三重県松阪市生まれ、ビームスと同い年です。年間120日近くを旅に費やし、日本各地の様々な場所で魅力的なモノ・ヒト・コトに関わる仕事をしています。肩書きは“BEAMS JAPAN”のクリエイティブディレクター、日本に関係することあれば比較的なんでも来いのスタンスです。大学などで講師を務めることも。『銘品のススメ』著者、『都道府県おでかけ図鑑』監修。