元来ニンニク入り餃子は大阪で誕生したという。関西の底力をご覧あれ。
1. 餃子立山/梅田
旨味が増す、餃子と日本酒のマリアージュ
岸和田に本店がある「餃子立山」が、梅田スカイビルの近くに2号店をオープンしたのは2014年のこと。看板商品の立山餃子は、青森県田子産のニンニクが効いた野菜たっぷりの餡に、豚肉など2種類の部位と背脂でコクと旨味をプラス。もっちりとした皮とサクサクの焼き目がやみつきになるおいしさだ。餡は最低1日、できれば3日は寝かせたいと店主の松本圭央さん。寝かすことで、肉と野菜の甘みが存分に引き出される。
ニンニクなしの野菜餃子、鳥餃子、しそ餃子、スープ餃子など変わり餃子も豊富に揃う。圧巻なのは海老餃子だ。すり身と粗みじん、プリっとした大きさと3通りに切られたエビの食感と旨味が、噛むごとに薄皮からあふれ出す。小ぶりなのであれもこれもと欲張っても大丈夫。
そして、餃子にはぜひ日本酒を合わせてほしい。伊丹にある日本酒とワイン専門店の日ノ出から、この店の餃子に最も合う日本酒を仕入れている。お薦めは広島の特別純米酒「龍勢ロイファー」。最良の酒は水のごとしというが、この酒を口にしたとたん驚くこと必至。水よりももっとなめらかにのどや胃に沁み渡る。
「ロイファー」はドイツ語で走者を意味する。日本酒は冷やではなく、ぬる燗で呑むのがいい。旨味と香りを引き立て合う組み合わせに酔いしれるはずだ。
餃子立山
住所:大阪府大阪市北区大淀南1-4-19
TEL:06-6346-5889
※店舗情報が変更となる場合があります。事前に確認をお薦めします。
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2. 南平/心斎橋
ミナミの繁華街、ひと口で頬張る浪速の心意気。
大阪といえば名物のひと口餃子を忘れてはいけない。発祥は北新地の「天平」だが、双璧をなすのがこちら、来年創業40周年を迎える「南平」だ。ミナミの中心、飲み屋が並ぶディープな雑居ビルの奥にある。
「ひと口で完結するように、具と皮の量を同じ比率にしています」と社長の上西克彦さんが語るように、女性でもひと口でいけるサイズで、三角形に折られた餃子が1人前で15個。サクッと香ばしく焼かれた愛らしい姿に反して、意外とピリ辛の味わいにビールが進むこと請け合いだ。
タレは酢醤油と自家製ラー油、そして紹興酒を好みで配合する。紹興酒を入れることによって酢の酸味がまろやかになるそうだ。
深夜3時まで営業しているので、ミナミで飲んだあとの〆の味として郷愁を覚える浪速っ子も多い。サラリーマン時代に足繁く通った常連が定年後にまた訪れたり、親子二代で通い続ける客もいる。
長く続けていく秘訣はと問うと「季節によって野菜の水分量も違うので配合を変えるし、天気の湿度によって焼き色も変わる。完成形だと思っても、常にもっとおいしくできないだろうかと日々研究しているうちに」と上西さん。
わずか10gほどの小さな餃子に込められた、飽くなき情熱が老舗たるゆえん。大阪に来たら一度は食べてほしい、ミナミの心意気を感じる餃子だ。
南平
住所:大阪府大阪市中央区心斎橋筋2-3-5 日宝ファインプラザ1F
TEL:06-6211-1332
nanpei.jp
※店舗情報が変更となる場合があります。事前に確認をお薦めします。
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3. 餃子の勝/豊中
カリッ!トロッ!「焼き師」15年のスゴ腕を堪能せよ。
大阪の行列の絶えない老舗中華料理店に18年間在籍したうち、15年もの間、餃子の焼き師をしていた平野勝太さん。昨年7月に豊中にオープンしたのが「餃子の勝」。既にファンも多いが、彼の餃子への探求心は果てしない。
「15年間、餃子の焼き番をしてましたが、その店の配合は一切教わっていないんです。ベストの味を見つけるため、塩1ℊずつ足して手探りしてきました」と、現在も開店前に毎日、試食を重ねている。味に納得できない時には、4皿以上食べる日もあるという。「試食を繰り返していたら、スタッフ3人ともオープンしてから半年で10㎏太りました(笑)」
具はキャベツ、白菜、ニラ、ショウガとニンニク。豚肉は背脂も入れるシンプルな配合。だからこそ素材に気を使う。その日のキャベツの甘さによって、塩気をもつ皮と甘みがある皮と2種類を使い分けるというこだわりよう。餡は包んで成型してから1日寝かせる。そのほうが、皮と中の餡がしっとりと馴染むそうだ。
丸い鉄鍋で10分〜12分間じっくり焼き上げ、皮はトロっと、焼き目はカリッとした絶妙な焼き加減は、まだ35歳の若手ながら、熟練した職人技を感じさせる。
店長を含め、スタッフ3人が極真空手や柔道などの経験者。厨房には20㎏のダンベルが置かれ、合間に鍛えている。味と技で勝負する男気ある餃子を味わうならここだ。
餃子の勝
住所:大阪府豊中市本町1-4-3
TEL:06-7175-1164
※店舗情報が変更となる場合があります。事前に確認をお薦めします。
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4. ギョーザ&ビール 541+(コヨイ)/新町
多彩なアレンジに悩むこと必至の、日・中・韓餃子。
大阪の裏ミナミではここ数年、新感覚の餃子を出すバルが増えている。2013年オープンの「541+」が提供するのは、単なる餃子ではない。白菜、ニラ、もやし、玉ネギなどのほか、韓国のマンドゥにヒントを得て韓国春雨や木綿豆腐を入れた餡に、中国の花椒塩を効かせ日本式のハネつき餃子に仕上げるという、日中韓のいいとこどりの三位一体餃子なのだ。
店主の浅野周平さんは、つなぎにラードやニンニクを使わない。毎日大量の手で刻んだ野菜たっぷりのヘルシー餃子を、花椒塩や野菜、果物を配合したドロっとした自家製濃厚タレ、酢に粗挽きコショウといった3種のタレでいただく。その味の変化が楽しく、飽きることなく箸が進む。
10種類以上ある創作餃子も人気だ。定番の焼き餃子、水餃子、蒸し餃子、揚げ餃子のほか、写真のネギ塩ダレ餃子やフレッシュな青唐辛子を丸々1本使う青唐辛子の辛辛餃子、また炙りチェダーチーズの焼き餃子など、ネーミングだけでも垂涎もののメニューが並ぶ。どんな調理法でもおいしくなるようにと、特注している皮はもちもちだ。関西クラフトビールの先駆け的存在である、箕面ビールが工場直送で全シリーズ呑めるのも嬉しい。瓶詰めスパークリングワインもあり、こちらも人気だ。
まずは冷蔵庫から自分で瓶を取り、今宵はどの餃子からいくか悩むのも実に楽しいものだ。
ギョーザ&ビール 541+(コヨイ)
住所:大阪府大阪市西区新町1-14-2 新町中央ビル1F
TEL:06-6567-8671
http://541koyoi.com
※店舗情報が変更となる場合があります。事前に確認をお薦めします。
この記事はPen 2016年4/15号「1冊まるごとおいしい餃子。」特集より再編集した記事です。