どんでん返しが大きな話題を呼び、『シックス・センス』で一世を風靡したM.ナイト・シャマラン監督。以降、熱狂的なファンを持つ一方で、新作が公開されるたびにアンチからの声も聞こえてくるユニークな存在だ。最新作『オールド』の公開を前に、好意的に受け止められたものから賛否両論を巻き起こしたものまで、過去の作品を振り返ってみたい。
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傑作と名高い2作
『アンブレイカブル』(2000年)
フィラデルフィアで列車衝突事故が発生。乗客乗員131人が命を失うなか、デヴィッドだけが無傷で生き残る。彼の前に現れた骨形成不全症を患うコミックのコレクター、イライジャは、デヴィッドは不滅の肉体を持つ“アンブレイカブル”だと語りはじめるーー。
『シックス・センス』に続いてブルース・ウィリスが主演を務めた作品。しがない警備員として働くデヴィッドが自分に与えられた役割とは一体何なのかを探っていく物語は、シャマランのヒーロー論とも言えるものかもしれない。本作でも敬愛するヒッチコックと同じく、シャマラン自身がカメオ出演。『アンブレイカブル』と世界観を共有する『スプリット』『ミスター・ガラス』との3部作となっている。
『サイン』(1999年)
妻を事故で失って以来、信仰心を失ってしまった元牧師のグラハム。弟と子どもたちと暮らす農場のトウモロコシ畑に、巨大なミステリーサークルが現れる。一家が地球外生命体の侵略に立ち向かうSFホラー映画。
息子は喘息を患い、娘は常に水の入ったコップを部屋に置き、元野球選手の弟はホームランを打ったバットを大事にしている。どんでん返しに頼らずすべての出来事が“サイン”としてつながっていく構成で、アルミホイルで作った帽子を被るシーンや明らかに弱そうな宇宙人の造形には、どこかシュールな可笑しさも。メル・ギブソンが父親を演じ、この出来事をきっかけに家族が再生していく物語としての見応えもある。
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否定派も多数な2作
『レディ・イン・ザ・ウォーター』(2006年)
多国籍な人たちが住むアパートの管理人が、プールで見つけた不思議な女性。恐ろしい怪物に追われている水の精霊であることがわかり、住民たちは力を合わせて彼女を守ろうとする。透き通るような美しさでヒロインを演じるのは、『ヴィレッジ』でも主演を務めたブライス・ダラス・ハワード。
ほとんど前置きもなく語られるシャマラン流のおとぎ話に没入することができれば、忘れがたいファンタジー映画に。しかしシャマラン本人が世界を救おうとする人物を演じるというナルシストぶりについていけない、と振り落とされる可能性もある。ゴールデンラズベリー賞では最低監督賞と自身が演じた役柄で助演男優賞を受賞した。
『ハプニング』(2008年)
各地でミツバチが姿を消し、人々が次々と自殺していくという異常事態が発生したアメリカ。フィラデルフィアに住む高校教師は、妻と友人の娘とともに逃避行を続ける。人々がビルから身を投げるシーンや、銃で自殺を図る人の足元だけが映し出されるシーンが衝撃的。植物が揺れる様を切り取るだけで不穏なムードを漂わせるあたりにも、シャマランらしさを感じる。
マーク・ウォルバーグを主演に迎えながらもストーリーは淡々と進み、エンディングを迎えてもパニックを引き起こした原因ははっきりしないまま。環境破壊への警鐘なのか、それとも神の手による人口の管理なのか、観客に委ねる展開が賛否両論を呼んだ。
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最新作『オールド』(2021年)
18年の『ミスター・ガラス』以来となる新作が公開に。ある家族が向かった先は、人里離れた秘境のビーチ。美しい景色が広がる浜辺でバカンスを過ごしたのも束の間、不思議なことが起こりはじめる。漂着した死体はいきなり腐敗が進み、幼かった子どもたちは急速に成長。
その場所が一日で年老いていくビーチであることに気づいた人々は脱出しようと試みるが、その度に意識を失ってしまう……。ガエル・ガルシア・ベルナル、ビッキー・クリープス、トーマシン・マッケンジーら、国際的なキャストが集結。シャマランが時間をめぐる奇妙なミステリーに挑み、老いや死についての新たな物語を紡ぎ出してくれそうだ。
『オールド』
監督/M.ナイト・シャマラン
出演/ガエル・ガルシア・ベルナル、ヴィッキー・クリープスほか 2021年 アメリカ映画
配給/東宝東和
8月27日より全国の映画館で公開。
https://old-movie.jp/