クリエイティブなビールづくりに挑む、東京の個性派醸造所

  • 写真:穂苅麻衣(BOIL)
  • 文:小久保敦郎
  • 編集:石﨑貴比古
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東京にも、知る人ぞ知る個性派マイクロブルワリーがある。奥多摩と三鷹の醸造所2社に、目指すものを訊いた。

全国にマイクロブルワリーが爆発的に増えた功績のひとつは、ペールエールやヴァイツェンなど、それまで日本にはなかったスタイルのビールがつくられるようになったことだろう。加えて、国内で新たにブルワリーを設立した醸造家のなかには、ビールづくり=クリエイティブな表現の場として捉える人が増えてきた。

東京・奥多摩にブルーパブを構える「バテレ」の醸造長・辻野木景さんは、毎週3種類のビールを仕込む。翌週もまた、異なるビールを3種類。「まったく同じものはつくりません。試したいことが多すぎて」と、試行錯誤を重ねながら理想の味を目指す。

三鷹にタップルームを併設する「オージーエーブルーイング」も、多様なビールづくりに積極的だ。オリジナルのレシピとラベルでつくったコラボビールは既に100種類以上。地元産のホップも生産者とともに開発中だ。

また、瓶や缶での提供に加え、量り売りコーナーを設けるブルワリーも増加中。テイクアウトに便利なグロウラーも注目されている。クラフトビールの醍醐味は〝いつもの〞ではない味に出合えること。クリエイティブなビールづくりに挑む醸造家たちが生み出す、個性豊かな味わいの数々。その楽しさに目覚めた時、ビールの奥深さが見えてくるはずだ。

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VERTERE

常にレシピを変える創造的な味を、自然豊かな奥多摩から発信

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缶ビールの製造ラインは最低限のみ機械化されたもの。1本ずつスタッフがチェックしながら進める様子は、マイクロブルワリーならでは。

バテレがあるのは、奥多摩の濃い自然を肌で感じられる環境。その理由を「気持ちいい場所で飲むビールは美味いですから」と、醸造長の辻野木景さんは語る。6年前、古民家をDIYで改装し、寸胴鍋で始めたビールづくりも徐々に設備を拡充。噂を聞いた地元の若者が集まり、スタッフも増えた。いまは10本の発酵タンクで理想の味を追い求める。「仕込むのは、季節に合わせた味わいと、その時に自分が気になっているもの。あえて定番商品はつくらないんです」

ここのビールは一期一会。先入観にとらわれず、五感で味わうのが正解だ。

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醸造長の辻野さん。「JR青梅線の終着駅ですが、春から秋はキャンプや山登りで訪れる人がけっこう多いです。缶ビールはお土産用に喜ばれています」 

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「ユークレア」1パイント¥1,100。シトラス、白ぶどうのアロマとフレーバーが印象的。

バテレ

住所:東京都西多摩郡奥多摩町氷川212 
TEL:0428-85-8590
営業時間:11時~19時30分L.O.
定休日:月~金
http://verterebrew.com
※新型コロナウイルス感染防止など諸事情により、店の営業日時や提供するサービスの変更などが行われる場合があります。

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OGA BREWING

クラフトビールの基本形で、初めて飲んだ人も笑顔になる

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スペースや初期投資の都合で設備を簡素化するマイクロブルワリーが多いなか、発酵前の工程で使う釜を3つも設置。そのぶん、多様なビールづくりが可能となっている。

代表の小笠原恵助さんとビールとの関わりは長い。若き日にビールの楽しさを知り、ビアバーを経営。しだいに、自分がつくったビールで人々を笑顔にしたいという思いが強くなり、2019年に東京・三鷹にブルーパブを開いた。ビールを知り尽くした彼が目指したのは、クラフトビールの基本形。

「初めての人が飲んでおいしいと思える味。大好きなビールへの恩返しです」

定番商品を主軸に据えつつ、「レシピのアイデアは無限大」と小笠原さん。Jリーグやアニメなどとコラボしたビールは100種類以上。ビールで人の輪をつなげている。

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ビールはコンセプトからつくるという小笠原さん。「どんなシーンで飲むのかイメージし、レシピを組み立てていく。コラボビールも双方でアイデアを出してつくります」 

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「三鷹ペールエール」330ml、¥605。バランスを重視した定番品。

オージーエーブルーイング

住所:東京都三鷹市下連雀4-1-16 
TEL:0422-29-8210
営業時間:15時~21時30分L.O.(月、水~金)、11時~19時30分L.O.(土、日、祝)
定休日:火
https://oga-brewing.com
※新型コロナウイルス感染防止など諸事情により、店の営業日時や提供するサービスの変更などが行われる場合があります。

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お気に入りのビールは、グロウラーで持ち帰ろう

グループで飲食店に集い、楽しくビールを飲むのがはばかられる今日この頃。家飲みの需要が高まり、そこに対応するべく生ビールの量り売りを始めたビアバーも増えている。店で用意する容器に詰めて持ち帰るなど、提供方法はさまざま。ただ容器の持ち込みが可能な場合、最適といえるのが保冷機能を備えたグロウラーだ。

グロウラーとはビールの持ち帰り容器のことで、リユースできるエコなボトル。瓶製は比較的安価なものの、移動時間が長い場合は温度管理が難しい。その心配から解放してくれるのが、真空断熱構造のグロウラー。ビールを注ぎ入れた時の炭酸と温度を長時間キープする優れモノだ。

現在日本で販売されている商品はアメリカ製が主流。多くのメーカーが参入しているのも、ビールの量り売りが生活の中に根付いている国ならでは。家飲みだけでなく、キャンプなど屋外の集いにグロウラーでクラフトビールを持参すれば、喜ばれること間違いなしだ。ブルワリーオリジナルのものなど、お気に入りを見つけてみよう。

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1913年創業のスタンレーは信頼感抜群。伝統のグリーンが武骨ながら新鮮だ。保冷効力は24時間。「クラシック真空グロウラー」1.9L、¥8,800/ビッグウィング TEL:06-6167-3005

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片手で開閉できるキャップが革新的。炭酸の内圧を逃がす仕組みで吹きこぼれも防止。保冷効力36時間。保温18時間。「RevoMax2」950ml、¥5,940/コレド TEL:03-5643-9277

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近年注目を集めるグロウラー専門ブランド、ドリンクタンクス。オプションのケグキャップを付ければビアサーバーに変身。保冷効力45時間。「Growler 2.0」1.9L、¥18,150/サントレーディングジャパン TEL:0467-73-7076

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※この記事はPen 2021年9月号「新しい住みかの見つけ方」特集より再編集した記事です。