餃子とタンメンはなぜ相性がいいのかという疑問。どちらもおいしいと評判の店を食べ歩き、見えてきたこととは?
1. 來々軒/木場
タンメンのスープを使って、餃子を蒸し焼きに。
創業して57年。二代目の荒張好衛さんは元同店の常連客。脱サラして店を引き継ぎ、先代からの味を守る。タンメンのスープは鶏ガラをべースに、煮干しや干しエビ、鯖節など7種類の出汁や香味野菜をブレンド。あっさりした中にもジンワリと舌に馴染む。ほどよく歯切れを残した野菜と太麺との相性もいい。途中で自家製ラー油を入れるのが常連客の流儀。もっちりした皮と野菜の甘みが美味い餃子との名コンビぶりを、堪能してほしい。
來々軒
住所:東京都江東区東陽3-21-4 ライオンズマンション1F
TEL:03-6458-6368
www.rairaiken.co.jp
※店舗情報が変更となる場合があります。事前に確認をお薦めします。
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2. 宝家/木場
野菜たっぷりの餡がジューシー
木場駅から歩くこと数分。看板にひと際大きく書かれた「餃子」の文字が目印だ。とはいえ、餃子専門店ではなく、中華そばにもやし炒め、炒飯まであるいわば、昔ながらの町場の中華料理屋さんといった風情。だが、看板に偽りなく、のし立て、包み立て、焼き立ての焼き餃子は、わざわざ食べに行くだけの価値あり!の逸品だ。一方のタンメンはあっさりめ。ランチにはタンギョウセットのAランチ(餃子3個とタンメン)が¥800とお得になっている。
宝家
住所:東京都江東区東陽3-20-5 1F
TEL:03-3645-4336
※店舗情報が変更となる場合があります。事前に確認をお薦めします。
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3. タンメンしゃきしゃき 新橋店/新橋
口に広がる、キャベツの甘み。
本店は錦糸町にあり、新橋には2011年5月にオープン。33歳の若き主人が、知人の店で食べたタンメンの味に感動し専門店を始めたそうだ。それゆえ、メニューは潔くタンメンと餃子のみ。店名通り、シャキシャキの野菜が小気味よいタンメンが美味い。野菜をスープで茹でることでスープに野菜の甘みが付き、さらに丼にはラードを忍ばせて味にコクを付けている。老舗のそれに比べてかなりパンチがある一品だ。生から焼く餃子も野菜の旨味が持ち味となっている。
タンメンしゃきしゃき 新橋店
住所:東京都港区新橋4-6-7
TEL:03-3437-7222
※店舗情報が変更となる場合があります。事前に確認をお薦めします。
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最初にのれんをくぐったのは、1958年創業の老舗、宝家。ここの餃子は、注文が入ってからつくり始める。奥様が皮をのし、主人が具を包み、素早く鉄鍋で焼き上げる。その一連の流れが、実に手慣れていてよどみない。
「どんなに忙しくとも、この工程だけは絶対に譲れません」と言い切る主人、山上豊彦さんの口調に、老舗としての矜持きょうじが感じられる。見れば、具には白菜、キャベツ、ニラ、長ネギと大量の野菜。肉は少なめで、代わりにラードを加えて旨味とコクをプラス。薄めの皮にふんわりと包まれた餃子は、ふわっとした独特の食感が特徴だ。口中ににじみ出る野菜の甘みに、ゴマ油や落花生油の香りがせめぎ合い、インパクトある味わいに仕上がっている。
一方、來々軒の餃子はといえば、もっちりした肉厚の皮に餡がみっしりと詰まっている。皮にはもち米が入っているそうでかなりモチモチ。かなりグラマラスだ。そしてやはり具は野菜がメイン。キャベツにニラなど10種類の野菜を使用。これを、タンメンと同じ清湯チンタンで、味を染み込ませつつ焼き上げていくのが來々軒流だ。野菜の甘みを活かした餃子と、野菜を茹でて仕上げるタンメンは、なるほどよく合う。そういえば、宝家のタンメンも、野菜は炒めずに茹でていた。
野菜使いに関連性があるのかも、と思いつつ、次に訪れたのは新橋。その名も、タンメンしゃきしゃきである。こちらの餃子も、ふっくら豊満な肉厚系。カリッ、モチッの皮にかぶりつけば、肉汁というよりも、野菜の旨味が舌に馴染む。具はキャベツ率がかなり高いようで、店長の古坂大地さんいわく、「豚肉1に対してキャベツが10」も入るそうだ。タンメンの野菜もやはり茹でるタイプと、共通項も多い。
どうやらタンギョウ自慢の店は、肉汁派ではなく野菜の甘み系の餃子が多いようで、そこが「タンメンの美味い店は餃子も美味い」という説に行き着くのかも――とは、あくまでも筆者の想像。タンギョウで評判の店を巡り歩き、ぜひこのおいしい方程式の答えを探り当ててほしい。
※この記事はPen 2016年4/15号「1冊まるごとおいしい餃子。」特集より再編集した記事です。