キャンピングカーで転々と暮らすのではなく、トレーラーハウスで同じ場所にとどまる理由とは?注目のYouTuber夫妻を、愛知県豊川市に訪ねた。
愛知県 豊川市
大場英己さん・大場千恵子さん
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キャンプやアウトドアの愛好家だろうという取材前の予想は、あっさりと覆された。「JAYCO(ジェイコ)」というアメリカのメーカー製トレーラーハウスで暮らす大場英己さんと千恵子さん夫妻は、キャンプやバーベキューの経験がほぼゼロだという。
トレーラーハウスで暮らすようになってから、一度だけ和歌山県のキャンプ場に行ったことがあるけれど、「外に椅子もテーブルも出さずに、中でカップうどんを食べていました」と、英己さんは笑う。トレーラーハウスは、英己さんの実家で給水や下水処理といった〝ルーティン〞をこなす時の他は、ほぼ動かない。
このような生活をするきっかけは、千恵子さんからの提案だった。「ミニマリスト的な生活に興味があったところに、『TED』のディー・ウィリアムスさんの講演でタイニーハウスの存在を知ったんです。主人に相談したところ、トレーラーハウスなら移動もできると言われたんです」
結婚してから4年間、3LDKのマンションで暮らした夫妻は、トレーラーハウスを2度見て購入を決意。2017年の夏からトレーラーハウスで生活するようになった。英己さんが大型トレーラーを牽引する運輸会社に勤めていることも、トレーラーハウスでの生活にスムーズに移行できた理由のひとつだった。
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昨年秋には、より大きなモデルに買い替えたそうで、日本では最大級のトレーラーのリビングで、いまの暮らしぶりについて訊いた。家庭用エアコンや冷蔵庫、電子レンジなどを動かすための電気は、ソーラーパネルとポータブル電源、それに必要最低限の発電機で賄っているという。
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室外の100Wのソーラーパネル4枚と、室内に据え置かれる1000Wのポータブル電源2基は、アメリカのジャクリ社製。取材日は、曇りときどき晴れといった天気だったけれど、午後2時の時点でポータブル電源は79%まで充電されており、夕方には100%に届くとのこと。英己さんは、この充電量なら朝までエアコンとテレビが使えるという。
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「電気は引いていないのに、光回線はつながっています」と、英己さんは笑う。光回線を引くには家が必要になるため、犬小屋サイズの箱を“建てた”という。左のWi-Fiのルーターの下にもポータブル電源があり、右の発電機か太陽光発電の電気で作動。
「ジャクリの製品が優れていますね。ソーラーパネルは曇りでも発電するし、ポータブル電源は充電しながら電気を使える。最近はもっと高性能のポータブル電源が登場して、現時点でも電力会社の電気は使っていませんが、このままいけば発電機も使わない、完全なオフグリッド生活が可能です」
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草を刈る手間を減らし、千恵子さんを楽にした“功績”が認められ、当初は2頭だったヤギは4頭に増えている。
敷地内の柵で囲まれたスペースで草を食んでいる4頭のヤギは、昨年まで暮らしていた660坪の土地で、草を刈る労力を減らすために飼い始めたもの。最先端の太陽光発電の技術と、古来からの家畜との共存というふたつの方向から、サステイナブルな生活にアプローチしている点が興味深い。
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ガスコンロ(3口)の下にはガスオーブン、そして頭上には電子レンジ。千恵子さんは不便を感じないとのこと。「必要なものだけの暮らしは快適です」と語る。
将来は気に入った土地を購入し、定住することも視野に入れている。定住といっても家ごと移動する自由は残されるし、自分たちだけで持続可能な生活を完結できる可能性もある。
お気に入りの土地にトレーラーハウスを引っ張っていき、暮らす。そんな単純で自由な生活に、新しい可能性を感じる。
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※この記事はPen 2021年9月号「新しい住みかの見つけ方」特集より再編集した記事です。