Pen Onlineをご覧のみなさま、こんにちは。
前回に続いてこのコラムでは、スタイリストと、スタイリングという作業について綴ってみたいと思います。
大まかに言って、スタイリングとは服の組み合わせを構築、提案する仕事だと思われているでしょうし、それは間違いないのですが、それ以外の部分もとても大きな仕事だと思うので、ここに記している次第です。
ファッション撮影やファッションショーのディレクションを、編集者やフォトグラファー、ファッションデザイナーと共に組み上げていくのも重要な仕事です。
着用者と服が決まっていても、スタイリストの果たせる役割はまだまだあります。
写真やイメージの表現方法の提案、開発、ページレイアウト。同じ服だとしても、撮影直前のボタンの開け方、留めるか否か、パンツ丈の設定、ヘア&メイクの方向性、撮影後の写真セレクトによって、実際の印象は時に大きく、時に微妙に作用して来ます。
たとえばTシャツ一枚着るだけでも、それが写真になる場合、ネック位置のズレがあるかないかで、着こなす人がきっちりした人か、少し緩さの出た人か、微妙に印象が変わってきます。このあたりは写真、グラフィックデザインでも、どういったニュアンスが表現されようとしているのか、ということが重要になると思います。そういった人格のイメージを確固として掴めているかどうかが、最終的な仕上がり、また読者へ届くかどうかという「結果」に繋がると考えられますよね。
その上に、パンツやアクセサリー、小道具なども組み合わせると、無限にバリエーションが存在し得るので、ある程度の想定となる「イメージ」が必要になります。
そのイメージを共有し、具現化していく作業をスタイリストは行います。イメージの設定は、とても大きく、重要な行程です。
たとえば、ブランドが発表するひとつのコレクションの構築に費やされている、リサーチと製品に至るまでの道のりは、多くのファッションデザイナーを題材にした映画などで垣間見ることができますが、それは人生そのものと言える作業の堆積だと考えてもおかしくないでしょう。
その重要なコレクションの世界観を、エディトリアルとして再構築する行程には、コレクションの洞察と、その翻訳力、瞬発力のある表現力が求められます。
服やアイテムのあしらい方にしても、すべてのディレクションに対して、どう対応しているか、確認した上で進めていきます。
その辺りの具体的な作業について、次回は綴ってみたいです。