吉井和哉が手がけるオリジナルウイスキー「YAZŪKA」。稀代のロックスターはなぜいま、自らの人生を投影したウイスキーをつくろうと思ったのか?
日本を代表する稀代のロックスター、吉井和哉と、日本で最も小さなクラフトウイスキー蒸溜所でありながら、世界中のウイスキーフリークに注目される長濱蒸溜所。両者の奇跡的な邂逅から生まれたオリジナルウイスキーシリーズ「YAZŪKA(ヤズーカ)」が、ついに8月19日にリリースされる。
物語の発端となったのは「ウイスキーがつくりたい」という吉井のひと言だった。
「父が他界したのは自分がまだ幼い頃でした。父が亡くなって今年でちょうど50年になるんです。人は死んで50年経つと本当にゼロになるという話もどこかで聞いていて。だからそんなタイミングでウイスキーが出せたらいいなと思っていたんです」
そう話す吉井がウイスキーに深く魅了されたのは、30代の終わりにソロ活動のPV撮影で訪れたスコットランドでのことだ。
「当時の自分はミュージシャンとしても、さまざまな葛藤を抱えていた時期で、先の見えない人生に迷っていた。そんな時にスコットランドのバーで地元の人に勧められて飲んだのが、スコットランドのアイラ島でつくられるラガヴーリンというシングルモルトでした。そのスコッチはとてもスモーキーで薬のような独特の味わいがあり、エジンバラの港町の景色や匂いが自分の行き詰まった感じと重なって、とてもドラマティックに思えたんです」
その日を境にシングルモルトウイスキーは、吉井の人生に欠かせない〝相棒〞となる。そしていつしか、「自分の人生を表現するようなウイスキーをつくりたい」という考えも抱くようになっていた。父の没後50年を契機に、あふれ出たウイスキーへの思い。そんな吉井の願いにいち早く応えたのが、滋賀県長浜市にある長濱蒸溜所だった。
古くは城下町として栄え、いまも風情ある景観を残す湖北の町。もともとは醸造したビールをその場で飲めるブリューイングパブとしてオープンした長浜浪漫ビールに、併設されるかたちで誕生した小さなウイスキー蒸溜所だ。今回のウイスキーのブレンドを手がけたのは、蒸溜責任者兼ブレンダーの屋久佑輔。
「打ち合わせを重ねていく中で、テーマとして決まった『Father』と『BEAUTIFUL』という楽曲。さらには吉井さんの人生を象徴するキーワードをパズルのように組み合わせ、香りや味のイメージを組み立てました」
長濱蒸溜所が所有するのは、自社蒸留のモルト原酒に加え、スコットランドをはじめとする数々の外産ウイスキー原酒だ。そうした膨大な選択肢の中から、ブレンダーの屋久がそれぞれのテーマに合わせて原酒を選びブレンド。試行錯誤を重ねて試作したサンプルを吉井とともにテイスティングし、味わいの方向性を決めていったという。
さらにこのウイスキーを特別なものにしているのが、音楽とウイスキーを結ぶ熟成環境だ。長濱蒸溜所の伊藤啓社長が説明する。
「ブレンドに使用する原酒は、『Father』ならバーボン樽、『BEAUTIFUL』ではシェリー樽に、それぞれ詰め替えて半年以上の追加熟成を施しています。樽を置いたのは、県のバックアップで借り受け、ひそかに熟成庫として使用していた廃道のトンネル。さらにはそれぞれのテーマとなった楽曲のオリジナル音源をピュアオーディオで流し続け、楽曲がもつ世界観を染み込ませるようにして熟成を行ったのです」
そうして完成したのが、吉井の父の命日にリリースされる「Father」と「BEAUTIFUL」だ。
「このウイスキーの香りを嗅ぐと人生の節々の風景が浮かぶ」
そう本人が話す通り、吉井和哉の人生そのものが投影された貴重なウイスキー。吉井ファンはもちろん、音楽とウイスキーを愛するすべての人にとっても、スペシャルな一本になりそうだ。
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「UTANOVA Billboard」
2021年8月11日(水)/12日(木)Billboard Live YOKOHAMA
8月29日(日)/30日(月) Billboard Live OSAKA
9月8日(水)/9日(木)Billboard Live TOKYO
※各日2公演
1st:OPEN 14:00/START 15:00
2nd:OPEN 17:00/START 18:00
問い合わせ先/長濱蒸溜所 www.romanbeer.com/whisky