アイウエアブランド、ジンズの創業地である群馬・前橋で、同社の田中仁CEOが主導する、気鋭の建築家を起用したプロジェクトが複数進行している。藤本壮介による白井屋ホテルに続き、4月には永山祐子が手がけた「ジンズ パーク」が竣工。赤茶色の銅板で覆われた三角屋根が印象的な建物は、地域住民が集う新たなコミュニティの拠点として注目されている。
永山は、多くの建築家を輩出してきた青木淳の事務所出身。入所当時、アトリエ事務所としては珍しい4年卒業制度が設けられており、26歳の若さで独立した。その後は店舗やホテルなどの商業施設を中心に、期間限定のパビリオンやアートイベントなど、多様なプロジェクトに携わってきた。
そうした活動の中でテーマのひとつとなっているのが“光のデザイン”だ。ターニングポイントとなった「ルイ・ヴィトン 大丸京都店」では、ファサードの仕上げに特定の光のみを通す偏光板を使用。人の動きによって縦格子の見え方が変化する不思議な現象を表現した。既成概念にとらわれない素材使いと光環境のコントロールで、独創的な空間をつくり出したのだ。
現在は「ドバイ国際博覧会 日本館」の他、東京駅前の「トウキョウトーチ」や新宿・歌舞伎町のミラノ座跡地の再開発など、ビッグプロジェクトも進行中。いま最も目が離せない建築家だ。
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永山祐子が携わってきた代表的な建築
【光のデザイン】
自然光や照明を駆使した空間演出を得意とする永山。「ルイ・ヴィトン 大丸京都店」ではファサードに偏光板を用い、「玉川髙島屋S・C本館グランパティオ」では669個の裸電球を繊細なコードで吊って、幻想的な光を表現した。
【再生プロジェクト】
横尾忠則の作品を展示した美術館「豊島横尾館」をはじめ、旅館や住宅、ギャラリーなどさまざまな建物のリノベーションに携わってきた永山。建物が歩んできた物語を生かし、独創的な発想で新しい魅力を吹き込んでいる。
【パビリオン】
近年は国際的なイベントでパビリオンや大型のインスタレーションを手がけるなど、永山の活躍の場は広がっている。「ドバイ国際博覧会 日本館」では三次元の格子と膜を用いて、風で揺れ動く立体的なファサードを考案した。
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永山祐子 Yuko Nagayama
1975年、東京都生まれ。98年、昭和女子大学卒業後、青木淳建築計画事務所(現AS)に入所。2002年に独立、永山祐子建築設計を設立。JIA新人賞、東京建築賞優秀賞、照明デザイン賞最優秀賞など受賞歴多数。20年から武蔵野美術大学客員教授。
【師匠】青木 淳
日本を代表する巨匠。ルイ・ヴィトンの店舗を数多く手がける他、京都市京セラ美術館なども設計。
【弟子】丸 恭子(丸恭子一級建築士事務所)、川嶋洋平(川嶋洋平建築設計事務所)、野口理沙子(イスナデザイン)