「大人の名品図鑑」スニーカー編#3
空前のスニーカーブーム。毎日のように新作が発表され、バブルと言っても過言ではない状況だ。スニーカーはもはや自分を表現する大切なツール。ファッションを超えた文化=カルチャーに近い存在だ。今回は、名品と呼ばれるスニーカーが誕生した時代背景やその特徴、アイコンとして登場する映画などについて紹介する。
日本発のファッションブランド、オニツカタイガーが鬼塚商会として創業されたのは1949年。創業者は鬼塚喜八郎。戦後復員してきた彼は当時の若者に夢を与え、スポーツを通じて健全な青少年を育成することを考えて、スポーツシューズの製作に挑んだという。
タコの吸盤をヒントに製作されたバスケットボールシューズやマラソン・駅伝専用シューズ、マメのできない魔法のランニングシューズなど、次々と革新的なスポーツシューズを開発し、世界的なブランドへと成長した。77年に総合スポーツ用品メーカーを目指して、友好関係にあった2社と合併、社名をアシックスと改めたことで「オニツカタイガー」というブランドは一旦消滅するが、国内外からの復活を望む声が起こり、2002年にブランドが復活した。新生オニツカタイガーがターゲットにしたのはファッションで、シューズだけでなく、服や小物まで含むトータルで展開され注目を浴びた。当時、レトロスニーカーのブームもあり、同ブランドの名品「メキシコ 66」が海外でブレイクし、さらに映画『キル・ビル』(03年)でユマ・サーマンが「タイチ」を着用したことで、人気ファッションブランドとなった。
英国王室のウィリアム王子やブルース・リー、アンディ・ウォーホル、フレディ・マーキュリーといった多くの有名人にもオニツカタイガーの靴は愛用されているが、今回紹介するのはアメリカを代表する俳優ダスティン・ホフマンが映画で履いたオニツカタイガーだ。
この企画のためにネットでリサーチしているときに、偶然ホフマンがオニツカタイガーを履いている写真を発見した。その写真はホフマンが「M-65」と思われるファティーグジャケットにチノパンを合わせ、足元には同ブランドのジョギングタイプのシューズを履いているカット。写真をオニツカタイガーに送って調べてもらうと、77年にオニツカタイガーからジョギングシューズとして初めてリリースされた「モントリオールⅡ」というモデルであることが判明した。
しかしホフマンのこのスタイル、このジャケット、どこかで見た覚えがある。もしかしたら彼がメリル・ストリープと共演し、第52回アカデミー賞の作品賞を獲得した映画『クレイマー、クレイマー』(1979年)での写真ではないかと思い、映画を再び観てみた。するとジョアンナ(メリル・ストリープ)との離婚問題に悩むテッド(ダスティン・ホフマン)が、女友達と公園のベンチで話し込むシーンなどでこのシューズを履いていた。しかし映画ではシューズが落ち葉などに隠れてしまい、モデルやオニツカタイガーストライプを確認することは難しかった。今回発見したオフショットと思われる写真と重ね合わせることで、この映画で同ブランドの「モントリオールⅡ」が使われていることがわかったのだ。
驚くことに映画で使われた「モントリオールⅡ」の後継機「MOAL 77 NM」がいまでも製作されている。しかも日本製で。巻き上げ形状のトゥとヒールも当時と同じイメージで変わらない。ソールのヘリンボーンパターンも踏襲されている。さらに、ホフマンが映画で履いたカラーリングに近いものまで揃っている。オニツカタイガーファン、映画ファンならずとも見逃せない一足ではないか。
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