貴重な原画も初公開!遊び心にあふれた世田谷文学館の『イラストレーター 安西水丸展』

  • 写真・文:はろるど
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『イラストレーター 安西水丸展』会場風景。当初の8月31日までの会期を延長し、9月20日まで開催されている。展示室内の撮影もOK。

村上春樹の本の装丁や『がたん ごとん がたん ごとん』の絵本で知られ、漫画『ガロ』での連載や『アマリリス』といった小説でも幅広く活躍した安西水丸。身近なものを素材にして描いた、シンプルで洗練されたイラストレーションは、いまもなお多くの人々に愛され続けている。

その安西の幼少期から晩年に至る足跡を辿るのが、世田谷文学館で開催中の『イラストレーター 安西水丸展』だ。装画や絵本、漫画にエッセイ、広告や立体物に至る作品は実に500点。それに加えて生涯に渡って旅を好んだ安西にちなみ、旅にまつわる原稿や旅先で求めた民芸品や郷土玩具など130点の資料も展示している。また千葉県の千倉で過ごした幼き頃の思い出や、関係の深かった嵐山光三郎や村上春樹、和田誠とのエピソード、さらには大好きなカレーライスやお酒といった嗜好までも紹介されていて、もはや安西の全てが丸裸にされていると言って良い。びっくりするほど充実した回顧展だ。

デザイン事務所「DO.DO」(ドド)による会場構成が面白い。壁に安西が数多くコレクションしたスノードームなどのモチーフを描いたり、覗き穴や顔はめスポットなどを設置。さらに展示室内に安西を象ったパネルやシルエットが8カ所ほど隠れている。細かく区切った順路も自由なスペースは、ちょっとした迷路を彷徨うようで、冒険心すらくすぐられる。作品を見れば見るほど、奥へ進めば進むほど、安西のイラストレーションの世界の中へどんどんのめり込むような空間が築かれている。

展覧会は2016年から全国巡回している内容をパワーアップ。2020年末に発見された小説『アマリリス』や、村上春樹共著『ランゲルハンス島の午後』といった貴重な原画も初めて公開されている。「小さい頃よりずっと絵を描くことが好きだった」との言葉を残す安西の作品には、絵を描くことの楽しさや喜びが強く反映されている。それをぐっと凝縮しつつも、おもちゃ箱をひっくり返したような遊び心にあふれた展覧会を世田谷文学館で楽しみたい。

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『ぼくと3人の作家』コーナー。同い年の編集者で漫画や絵本の仕事をともに手掛けた嵐山光三郎、ジャズ喫茶経営中からの知り合いで「兄弟のようだ」と語る村上春樹、さらに高校時代から憧れの存在でライバルでありパートナーでもあった和田誠に関する作品が並んでいる。

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幼少期からの作品と資料などを紹介する『ぼくの来た道』。学校で賞をとった水泳大会のポスターに目を奪われる。3歳から中学校卒業直前までを千葉県の千倉で過ごした安西は、広い海や里山の自然、それの野鳥の声といった豊かな自然環境こそが、自身の想像力や美意識を育んだとしている。
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千倉で過ごした家を「骨董品のような家」だと回想し、「素朴な和が好きだ」と語る安西。鎌倉のアトリエに鳥取の民芸家具を置き、自作の掛軸や屏風を飾っていたという。まるでアトリエにお邪魔したかのような設えだ。
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生涯に渡って国内外の様々な場所を訪ねた安西。東京会場オリジナルのコーナーである『たびたびの旅』では、旅の持ち物や旅先で求めた郷土玩具など展示している。安西は電車での移動を好み、いつでも旅に出られるように、カメラや双眼鏡、手帳などを入れる鞄をそばに置いていた。
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会場出口。『がたん ごとん がたん ごとん』の汽車に乗って旅立つ安西の姿がパネルで表現されている。休日の14〜16時は混雑のために入場規制をする場合あり。閉館1時間前の17時以降は人出も落ち着いて撮影もしやすいが、書籍やオリジナルTシャツなどが並ぶミュージアムショップは17時半にクローズするので注意したい。

『イラストレーター 安西水丸展』
開催期間:2021年4月24日(土)~9月20日(月・祝)
開催場所:世田谷文学館 2階展示室
東京都世田谷区南烏山1-10-10
TEL:03-5374-9111
開館時間:10時~18時 ※入場、及びミュージアムショップの営業は17時半まで
休館日:月。但し8月9日・9月20日は開館し、8月10日は休館。
入場料:一般¥900(税込)
※臨時休館や展覧会会期の変更、また入場制限などが行われる場合があります。事前にお確かめください。
https://www.setabun.or.jp