薄い碁石をそのまま大きくしたような独特のフォルムに、温もりを感じさせるレトロなスタイル。腕時計好きにはお馴染みの「マックス・ビル」シリーズを代表的なロングセラーとするドイツの名門時計ブランド、ユンハンスが創業160周年を迎えた。これを記念して発表された限定モデル「FORM A Edition160(フォームAエディション160)」は、「マックス・ビル」とは対照的な薄型のフラットなケースにブラックダイヤルのコンビネーション。2017年に登場したミニマルでスタイリッシュな「フォームA」をベースモデルとして、ユンハンスが所在するシュバルツヴァルトをイメージしたという。
ドイツ南部でフランスに隣接するシュバルツバルトはドイツ語で「黒い森」を意味しており、針葉樹が密生する地域。この豊富な森林資源を活用した木製クロック製造が17世紀頃から活発になり、ユンハンスはその量産化で大成功を収めた。腕時計の分野でも世界初の電波時計を開発するなど、高い技術力に定評がある。160周年記念モデルは、こうした同社の発展を長く見守ってきた地域への感謝が込められている。
記念モデルの「FORM A Edition160」は、ブラックダイヤルで黒い森をイメージさせるだけでなく、レッドまたはベージュをアクセントカラーにした2タイプがある。前者は12時位置のダブルバーインデックスと下部のロゴ表記を鮮やかなレッドにして直線的に配置。都会的な緊張感が漂う。その一方でストラップは布地の肌合いが分かるウールとレザーの組み合わせ。レッドのステッチも印象的だが、時計の6時位置下のボタンのようなオーナメントが洒脱だ。時分針もレッドなので視認性は極めて高い。
アースカラーのベージュモデルも同じ部位に塗色しているが、レッドに比べて落ち着きがある。レザーのストラップも木肌模様をアレンジ。レッドモデルが同地域の都会とすれば、このベージュモデルは黒い森に踏み込んだ時の自然を表現しているといっていい。どちらのモデルもパワーリザーブ約38時間の自動巻きムーブメントを搭載。ケースバックには「1861 2021 EDITION160」の文字と、黒い森に棲息するヨーロッパオオライチョウまたは松の年輪が描かれている。
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冒頭で紹介した「マックス・ビル」とは対極にあるように見えるが、どちらも「機能がフォルムを決定する」というバウハウス哲学を継承。シャープな機能主義はドイツの工業デザインに共通しているが、ユンハンスは温かみを感じさせる要素が加わっていることが特徴的といえるかもしれない。「マックス・ビル」はバウハウス最後の巨匠とされる彼が半世紀以上前の1961年にデザイン。独特のヴィンテージ感が際立って見えるが、記念モデルのベースである「フォームA」はスーツにもカジュアルにも似合うコンテンポラリー。デザインポリシーは同じでも、時代に合わせてアップデートされたといえるだろう。さらにブラックとレッドまたはベージュが個性を彩る。TPOを問わず、ファッションを現代的にセンスアップしてくれるモデルではないだろうか。
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