幼い頃からピアノを習い、現在キーボーディスト、作曲家として活躍する江﨑文武さん。憧れの音楽家を追う中で、彼らが着ている服にある共通点を発見した。それは、自分のスタンダードを決める明確な理由だった。
「大学の大先輩であり敬愛する音楽家の坂本龍一さん、いちばん好きな作曲家であるトランペット奏者の三宅純さんなど、昔から憧れのアーティストが白いバンドカラーシャツをよく着ている気がして。私もそんな大人になれたらと思い、集め始めました」
ドキュメンタリー番組で三宅さんが着ていたイッセイミヤケに始まり、ファッション関係の友人のアドバイスで購入したジル サンダーなど、シャツの評判がいいブランドの“立襟”を手に取るようになったという。
「着る服が決まっていると朝が効率よく進み、一日のリズムが整います。いまではバンドカラーシャツを着ると仕事モードに切り替わります。毎日違う服を着る楽しさもあるけど、私は安定してクオリティの高い服を着たい」
信頼するつくり手のマインドが宿ったものを身に着けると、自分もいい作品を手がけることができる。そんな魔法を信じながら、今日も白シャツに袖を通す。
※Pen2020年9/15号「あたらしい定番と、自分のための定番」特集よりPen編集部が再編集した記事です。