クリエイターカップルの「ドイツ式」コーヒータイムとグリーンのある暮らし

  • 写真:ジャンニ・プレッシャ
  • 文:河内秀子
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コーヒーの香りとこだわりの植物に囲まれた、居心地のよい住まいに流れる時間は特別なもの。クリエイターたちのセンスあふれる空間をのぞいてみよう。

ティム・ラベンダ(左、Instagram:@timlabenda)とハネス・クラウゼの仕事場兼リビングは、グリーン効果でまるでリゾートのよう。奥の背の高いイチジクの木には、ゆるやかに空間を仕切る効果もある。

異素材ミックスのインテリアに映える、厳選の植物

南向きの大きな窓から差し込む光に、伸びやかに葉を広げるファンパームの緑がまぶしい。ファッションデザイナーのティム・ラベンダと、パートナーである心理学者のハネス・クラウゼの家には、グリーンと深煎りのコーヒーが欠かせない。

「自然の中にいるのが好きなので、つい植物を買ってしまう」というラベンダは、前の家では緑を集めすぎてジャングルのようにしてしまい、引っ越しを機にお気に入りの鉢を厳選した。数が少なくなったことで、植物の個性が引き立ち、空間の中で置くべき場所が見えてきたという。

「ファッションデザインと同じく、インテリアでも素材感のミックスにこだわっている」というラベンダは、毛羽立った厚みのある葉をもつイチジクの木と、透け感のあるファンパームの鉢の間に、艶やかな赤に輝く石のテーブルを置いた。足元には毛足の長いラグでアクセントを。有機的なフォルムが面白いボッチの照明が天井からふわふわと漂い、クラシックなデザインの椅子を引き立てる。

リモートワークで毎日家にいるふたりの日常を彩るのは、コーヒーの香りだ。ルーティンを守りたいクラウゼは、平日はきっかり7時45分に起き、深煎りの豆を挽いてカプチーノを淹れる。週末は、クラウゼいわく「ドイツ式」のコーヒータイムだ。実家で祖母がやっていたように、ちょっと凝った菓子を焼いたらコーヒーをたっぷりと淹れてテーブルを囲み、会話を楽しむ。「カフェ・クレンツヒェン(コーヒーの輪)」という風習だ。クラウゼが焼いたお菓子を見て、ラベンダはテーブルコーディネートを考えるという。

「鮮やかなグリーンを見るとリゾート気分でリフレッシュできるんです」とラベンダ。仕事でよく行っていたイタリアに思いを馳せながら、ジノリのカップで深煎りのコーヒーを飲む。コーヒーとグリーンという強い味方を得て、ふたりは豊かなステイホームを楽しんでいるのだ。

奥の枝ぶりがユニークなフィカス・オードリーがイサム・ノグチの「AKARI」と並び、リズムをつくる。ハンス・J・ウェグナーのロープと羊の毛皮を使った椅子も異素材ミックスのインテリアにぴったり。

カプチーノ派のふたり。クラウゼのラテアートの腕前はバリスタ並み。日本のチュートリアル動画を見て練習したそう。「朝、ラテアートがうまくいくと、今日はいい1日になる気がする」という。

ミッソーニで働いていたラベンダは、イタリアを思い起こさせる器「ジノリ1735」(マシン上のカップ)が好き。お気に入りはフィレンツェのグッチガーデンで限定販売されたコラボカップ。

南向きの窓から日の光が差し込む、温室のような寝室。壁の一部は、グッチの壁紙に合わせて緑色に塗った。しなやかな鶴の絵にすらっとしたフォルムの観葉植物、ストレリチアの鉢が呼応する。

※この記事はPen 2021年7月号「コーヒーとグリーン、ときどきポッドキャスト」特集より再編集した記事です。