ウォーキングの効果を最大化するための「6つのステップ」

  • 文:中野ジェームズ修一
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ウォーキングを効果的に生活に取り入れて、習慣化するにはどうしたらいいのか?実践的なアドバイスをする『定年後から始めて一生歩ける! 最大効果のウォーキング』(中野ジェームズ修一 著/CCCメディアハウス刊)より一部抜粋。ウォーキングを習慣化し、効果を最大化するための「6つのステップ」をお届けする。



STEP1    歩くタイミングを決める


人は大抵、知らず知らずのうちに行動をルーティン化しているもの。起きたあと、顔を洗う→朝食をとる→歯磨きをする→着替える……などというように毎日、およそ同じ順番で進めていく。こうした行動パターンの中にウォーキングを溶け込ませてしまうと習慣化しやすくなる。

まず「どのタイミングがいいか」を自分の生活リズムに合わせて考えてみよう。成功例が多いのは「起床後」や「帰宅後すぐ」だ。起床後の場合は、朝のルーティンにそのままプラスできるので生活習慣の流れに組み込みやすくなる。帰宅後すぐのタイミングもおすすめだ。家に帰って少し休もうとすると落ち着いてしまうので、荷物を置いて着替えたら即座に出かけるようにする。歩いた後、すぐに入浴すると爽快だ。ビジネスマンでは、ランチタイムを利用する人もいる。メリハリがつけやすく、仕事の能率が上がりやすいようだ。

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STEP2    30分歩けるようにする


生活に溶け込ませることを目標に1日5分から始めたとしても、そのままでは運動強度が足りないので「1日30分」まで延ばしていくことを次の目標にしよう。「30分×1回」でもいいし、「10分×3回」でもかまわない。

そこに達するまでの過程には決まったスケジュール設定はないので、途中で挫折しないように自分のペースで延ばしていくのがいいだろう。

最初から「キツいけど頑張った!」というギリギリの目標設定をするより、終わったあとに「もうちょっと歩きたかったな」と思えるような腹八分目的なところでやめておくのが継続のコツ。そうすると、次回へのモチベーションが上がるからだ。アスリートがレベルアップを目指すのであれば自分を追い込むことも必要だが、一般の人が健康を目指すなら、とにかくマイペースで継続することが第一だ。運動強度を急に高めるとどうしてもヘトヘトになりやすく、次にやるのがおっくうになりがちだ。運動強度を徐々に高め、少しずつ歩く時間を増やしていけば、30分歩けるようになる。

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STEP3    30分の中で強度を上げる


30分歩けるようになったら、その30分の運動強度を上げていくようにする。自分がきちんと運動効果のあるレベルのウォーキングができているかどうかは、歩いているときの心拍数を測ってチェック。

 測ってみて心拍数があまり上がっていなかったら運動強度を上げよう。そのときの基本は、「歩くスピードを上げること」と「歩幅を広げること」だ。

運動レベルにするための目安となるスピードは時速5.4~6.6㎞。一般の人は時速4㎞台で歩いている場合が多いので、「時速5.4㎞で歩いてみましょう」 と指導すると、その速さに驚く人がいるが、運動効果を期待したいのであれば、そのくらいのスピードを目標にしておこう。

時速5.4㎞で30 分歩くとすると、距離は2.7㎞になる。スマホの地図アプリなどで調べれば家から目標地点までのおよその距離はわかるので、このコースなら1周約3㎞、このコースなら片道1.5㎞などと見当をつけておくとスピードの調整がしやすくなる。最初はキツいと思っていても、慣れてくればそれほど無理な速さではないのがわかるはず。時速5.4㎞にしたとき、「この速さなら、歩くより走ったほうがラクだ」という人もいるがそんなことはない。通常、時速7㎞(1㎞=8分 34 秒ペース)くらいまでは、走るよりウォーキングのほうがラクで、そこを超えると走ったほうがラクになるといわれている。

またランニングはスピードを上げてもそれほど酸素消費量は変わらないのに対して、ウォーキングではスピードを上げれば上げるほど酸素消費量が上がることが わかっている。かなり厳しい速さではあるが、時速7.5㎞くらいにすると、ウォーキングでランニングと同じくらいのエネルギーが消費される(ランニングのペースは個人差があるが、時速8㎞くらいから始める場合が多いだろう)。

そこまでにするのは厳しいという人も、できれば時速6㎞(1㎞=10分ペース)くらいを超えるペースで歩くことを目標にしていきたいところだ。

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STEP4    歩いた距離を測る


30分のウォーキングの中で、歩く速度をスピードアップしていくと自然に距離が延びていく。そこで次の段階としては、時間は変えずに距離を延ばしていこう。漫然と30分歩くだけだと運動強度を上げづらいが、30分で○○まで歩く」という目標なら立てやすいし、達成感も得やすく、運動のモチベーションになる。

今はスマートフォンやスマートウォッチのアプリで、スタート地点とゴールをマーキングすれば簡単に距離を測ることができるので、ぜひ利用しよう。

一般的に、ウォーキングでは距離よりも歩いた時間を意識している人が多いのに対して、ランニングでは距離と速度を意識している人が多い傾向がある。「10㎞を65分で走った」「月間200㎞走破を達成した」など、いろいろな目標設定をできるからだ。そこからさらに「ハーフマラソン(21. 0975㎞)で2時間半を切りたい」といった目標も立てられる。将来的にランニングに移行するならそう   いった考え方に慣れておくと、スポーツとしてのウォーキングにさらに近づける。


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STEP5    同じ距離の中でイージーとハードを繰り返す


距離が延びてきたら、歩き方にも工夫を加えよう。心肺機能を鍛えるために行う「インターバルトレーニング」というものがある。ランニングを例に取ると、一定の間隔ごとに「速いラン」と「ゆっくりのジョグ」を交互に繰り返しながら走る方法だ。ずっと同じ負荷がかかっているより、イージーとハードが交互にくるほうが心肺に負担がかかり、負担が大きい分だけ効果が期待できる。

 

時間あるいは距離の一定間隔で、ゆっくりと速いを切り替えるようにするのが基本だ。ただし街中でそれをやろうとすると、途中で信号待ちになってしまうなどの不具合も出てくる。あまり正確さにこだわらず、ざっくりと「速い ⇄ 遅い」を繰り返す意識で取り組めば大丈夫。ウォーキングの場合でいえば「3分ごと」とか「信号があるごと」に「ゆっくり歩き」と「速歩」を繰り返すようなやり方がいいだろう。それだけで、漫然と歩くよりも運動としての意識が生まれ、効果が上がってくる。ハード部分に坂道や階段を組み入れるやり方もある。

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STEP6  ジョギングと筋トレを取り入れる


さあ、ここまで来れば「歩くだけでは物足りない」と感じる方もいるはず。 いよいよ、ウォーキングからランニングへステップアップするときだ。

ランニングというと急にハードルが高く感じる方もいるが、ステップ5のインターバルトレーニングですでに速歩を取り入れているので、その部分をランニングに置き換えるだけ。それならできるのでは? ゆっくり歩いたら少し走る。またゆっくり歩いて少し走る。「速歩」と「ジョギング」を交互に行うわけだ。

この場合も、厳密に3分ごとなどと決める必要はない。速歩のスピードが上がってきたとき、そのままジョギングに移行して、つらくなってきたら無理せず速歩に戻す。それぞれの時間を均等にしなくていいので、最初は「速歩の中にジョギングを混ぜる」くらいの意識でいいだろう。ウォーキングの効果を最大にするには、とにかくいかにして体に負荷をかけていくかが重要なので、調子の良いとき   は速歩やジョギングを多めにして高負荷にし、疲れているときはただのウォーキングにする、というように、自分でアレンジしていけばいいのだ。


▶筋トレをプラスする


同じ距離の中で速歩やジョギングをするパートが増えると、必然的に早く終わるようになる。つまり、もともと30分かかっていた距離を、28分、25分と早く終えられるようになるのだ。そうしたらコースを見直して距離を延ばすことのほかに、私がおすすめしたいのは筋トレを取り入れることだ。

 「この距離は25分でいけるな」と思ったら、最初の5分を筋トレにあてるのだ。

 そもそもウォーキングは、加齢に伴って減少する筋肉を維持、育成することがもっとも重要な目的。とくに、一生歩くためには下肢の筋力アップは絶対に欠かせない。しかし、歩くだけでは筋力アップ効果はあまり期待できないのだ。

そこで筋トレを組み合わせることが最善の策になる。準備運動がわりに下肢の筋トレを行えば、血液が温められて最初からスピーディーに歩けるという効果も生まれる。

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『定年後から始めて一生歩ける! 最大効果のウォーキング』中野ジェームズ修一 著 CCCメディアハウス ¥1,540(税込)

【執筆者】中野ジェームズ修一

PTI 認定プロフェッショナルフィジカルトレーナー米国スポーツ医学会認定運動生理学士(株)スポーツモチベーション 最高技術責任者(社)フィジカルトレーナー協会(PTI ) 代表理事「理論的かつ結果を出すトレーナー」として数多くのトップアスリートやチームのトレーナーを歴任。特に卓球の福原愛選手やバドミントンのフジカキペア(藤井瑞希選手・垣岩令佳選手)、マラソンの神野大地選手の個人トレーナーとして広く知られている。2014年からは青山学院大学駅伝チームのフィジカル強化も担当。ランニングなどのパフォーマンスアップや健康維持増進のための講演、執筆など多方面で活躍。近年は超高齢化社会における健康寿命延伸のための啓蒙活動にも注力している。自身が技術責任者を務める東京都・神楽坂の会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB 100」は、無理なく楽しく運動を続けられる施設として、幅広い層から支持を集め活況を呈している。主な著書に『医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本』(日経ビジネス人文庫)、『青トレ』(徳間書店)などベストセラー多数。