1日1万歩の思い込みから脱却せよ! “ウォーキングの常識”3つの「ウソ」とは?

  • 文:中野ジェームズ修一
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「神話」というと大げさだが、ウォーキングには、確かな根拠もないのに広く信じられている思い込みのようなものがたくさんある。そこで、効果的なウォーキングのアドバイスをする『定年後から始めて一生歩ける! 最大効果のウォーキング』(中野ジェームズ修一 著/CCCメディアハウス刊  )より抜粋。再検証した3つの「ウソ」をお届けする。


1.健康維持のためには「1日1万歩」歩けば大丈夫 ⇒ ウソ  


「1日1万歩」は、厚生労働省が「300キロカロリーのエネルギーを消費するための身体活動量」の目安として1万歩を提示したのが大きかったのだと考えられる。しかし、そもそも誰もが1日300キロカロリーのエネルギー消費を目標にすべきなのかという問題がある。


だらだらと1万歩歩いても意味はない

1万歩が多いか少ないかではなく、「自分にとって負荷のある」運動をすることが大事なのだ。たとえば、寝たきりの人なら起き上がるだけでも負荷になるし、歩けなかった人が5m歩くのは大きな負荷になる。だが、ふだんから歩 ける人がただ1万歩歩いても、身体機能を高めるための負荷にはならない。


大切なのは歩数より心拍数  

何歩歩いたかということよりも、負荷を考えた歩き方をするほうが大切。そのカギを握るのが「キツさ」や「心拍数」、そしてウォーキングと組み合わせる運動の内容だ。


▶次ページに2つめの「ウソ」

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2.有酸素運動は20分以上続けないと脂肪が燃えない ⇒ ウソ


有酸素運動とは酸素を消費しながらある程度継続して行う中程度の負荷をかけた運動のことで、ウォーキングやジョギングなどが含まれる。何年か前までは、有酸素運動は20分以上続けることで脂肪が燃焼されるようになるといわれていたが、今ではこの説は誤りだとされている。20分以上続けなければ脂肪燃焼しないなどということはない。

 

継続時間は関係ない! 有酸素運動+筋トレなら、短時間でも効果大!

ゆえに、20分以上継続して行うことにこだわらなくても、たとえば20分間の運動を10分、5分、5分に分けて行っても運動効果は同じだ。また、5分の筋トレと10分のウォーキングを組み合わせるなど、より効率よく運動効果を得られるようにメニューを工夫すれば、効果的な運動を時短で行うこともできる。


▶次ページに3つめの「ウソ」

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3.歩く前にしっかりストレッチすればケガをしない   ⇒ ウソ


ウォーキングの前にアキレス腱伸ばしや肩回りのストレッチをしている人を見かけるが、ウォーキング前にストレッチをする必要はない。運動の前になぜ準備運動をするかというと、筋肉の温度を上げることで体を動きやすくするため。だが、多くの人が準備運動として行っているストレッチは「静的ストレッチ」(反動をつけずにゆっくり行うストレッチ)と呼ばれるもので、これには筋肉を温める効果はない。


準備運動は必要なし!

ウォーキングは、ほかの運動と違って開始後すぐに高いパフォーマンスを要求されるわけではないので、静的ストレッチをするよりは、ゆっくり歩きだして、少しずつ体を温めていけばそれ自体が準備運動になる。


ストレッチをするならウォーキングのあと!

ストレッチは、準備運動として行うのではなく、ウォーキングが終わったあとに行うようにする。運動して緊張状態にある筋肉をほぐすためだ。筋細胞の自己修復を助けることになるのでケガをしにくくなり、疲労回復しやすくなる。

『定年後から始めて一生歩ける! 最大効果のウォーキング』中野ジェームズ修一 著 CCCメディアハウス ¥1,540(税込)

【執筆者】中野ジェームズ修一

PTI 認定プロフェッショナルフィジカルトレーナー米国スポーツ医学会認定運動生理学士(株)スポーツモチベーション 最高技術責任者(社)フィジカルトレーナー協会(PTI ) 代表理事「理論的かつ結果を出すトレーナー」として数多くのトップアスリートやチームのトレーナーを歴任。特に卓球の福原愛選手やバドミントンのフジカキペア(藤井瑞希選手・垣岩令佳選手)、マラソンの神野大地選手の個人トレーナーとして広く知られている。2014年からは青山学院大学駅伝チームのフィジカル強化も担当。ランニングなどのパフォーマンスアップや健康維持増進のための講演、執筆など多方面で活躍。近年は超高齢化社会における健康寿命延伸のための啓蒙活動にも注力している。自身が技術責任者を務める東京都・神楽坂の会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB 100」は、無理なく楽しく運動を続けられる施設として、幅広い層から支持を集め活況を呈している。主な著書に『医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本』(日経ビジネス人文庫)、『青トレ』(徳間書店)などベストセラー多数。