日本人の給料は安い。米住宅都市開発省は、サンフランシスコ市で世帯年収約1400万円(139,400ドル)を「低所得」に分類しているという。米国内有数の所得が高い地域だが、日本で所得が最も高い港区でも平均所得は1,217万円だ。大卒1年目の年額基本給は、アメリカ629万円、スイス902万円で、日本は262万円。なぜこんなに安いのか。
日本は、モノの値段も安い。企業が儲からないから賃金が上がらない。すると消費が増えない。だから物価も上がらない。こうして20年間にわたってデフレが続いてきた。海外26カ国に出店する100均ショップのダイソーが100円でものを売っているのは日本だけ。アマゾンのプライム会員の年会費は、日本4,900円、アメリカは12,300円。
給料が安くても、モノが安いならそれでいいのか。そんなことはない。日本の不動産は格安だと海外資本に買われ、国際市場で取引される魚介類は、高騰しすぎていて手が届かない状況になりつつある。給料が安ければ、世界から優秀な人材を招くことができず、企業の技術力は落ちていく。
閉塞的な状況を変えていくには、政府や企業、そして個人もやり方を変えていかなくてはならない。個人にとって大切なのは「自分のキャリアは自分でつくる」という意識だ。日本では「自分で賃上げを求めたことはない」人が70%にのぼる。転職による年収変化では、日本は増えた人が45%だが、アメリカ、フランス、デンマーク、中国は70%以上だ。安いニッポンの寒々しい実態が浮かび上がる。