ハイジュエラーが手がける機械式腕時計はそれぞれ独特の個性を備えているが、「キング・オブ・ダイヤモンド」とも称されるハリー・ウィンストンはとりわけアバンギャルドといえるだろう。人気定番の「HW オーシャン」は、オフセンターに配置された時分計をシンボルとするラグジュアリーなスポーツコレクションであり、レトログラードをはじめとして多彩な複雑機構を搭載してきた。その特徴的なケースに先端素材を導入。2021年の新作として「ザリウム バリエーション」が登場した。
「ザリウム」はチタンの元素でもあるジルコニウムをベースにした革新的な合金であり、宇宙工学や医療器具などに使用されている。軽量で硬度が高く、傷がつきにくい。腐食に強く低アレルギーということから腕時計にも最適だが、加工は困難といわれる。ハリー・ウィンストンでは、これをケースに採用した「プロジェクト Z」シリーズを2004年から展開。新作の「ザリウム バリエーション」は、この特殊合金だけでなく、2016年に発表された「プロジェクト Z10」の独創的なデザインが融合されている。
大胆極まりないオープンワークに圧倒されるが、これはニューヨークのマンハッタンとブルックリンを結ぶ鋼製の吊り橋・マンハッタンブリッジ(1909年開通)にインスパイアされたという。トラス構造(三角形を連ねた骨組み)を模したモチーフをアレンジしている他、両側にアーチ型(弓状)のレトログラード機構を配置。左側は秒表示で、針が下部の30秒に到達すれば瞬時にゼロ位置に戻って同じ動きを繰り返す。右側は曜日で、こちらは逆に下部のM(月曜日)から始まって上部のS(日曜日)を表示し終えれば、やはり針は瞬時にMにジャンプして戻り、再び1週間がスタートする。
ザリウム製ケースはサテン仕上げで金属の質感と肌合いを強調するなど、基本構造やスタイルは「プロジェクト Z10」を踏襲しているが、ダイヤルをオレンジまたはイエローで彩っていることが異なる。ベースカラーをブラックとして、時分計のインデックスからレトログラードのアーチ、30秒の数字なども塗色。曜日表示で日曜にあたるSも色つきなので視認性にも寄与。通常の時計の6時位置にブリッジがクロスする格好で日付表示が配置されているが、こちらも塗色された三角がアクセントになっている。
針もすべて色つきなので、その動きによって鮮やかな色彩が見せる光景が変わってくる。レトログラードの秒針が30秒ごとに戻る瞬間を見るのも楽しみになるはずだ。
ハリー・ウィンストンの時計は、本店が所在するニューヨークの絢爛とダイナミズムを巧みに取り入れてきた。「ザリウム バリエーション」では、マンハッタンブリッジだけでなく、イエローまたはオレンジのカラーリングがコンテンポラリーな軽快感を印象づける。このオープンワークの向こうに、ニューヨークの活気に満ちた街並が見えるような気がするのである。
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