生麺や乾麺、繊細な極細や太切りの田舎風など、通販できる蕎麦は多種多様。食べ方に合わせて種類を選ぶと、蕎麦をすする楽しみは倍増するはず。
瑞々しい柑橘の香り漂う、「すだち蕎麦」で気分爽快
うだるような暑い日にぴったりなのが、輪切りにしたスダチを一面に並べた「すだち蕎麦」。いまや一年を通じて入手できるスダチだが、旬を迎える8月から9月頃には最も香りがよくなると言われている。そこで、この夏は、乾麺を自宅にストックしておいて、新鮮なスダチが手に入ったらすだち蕎麦をいただこう。
お薦めの乾麺は太めの田舎蕎麦。輪切りにしたスダチは、つゆに浸ったままにしておくとエグみが出てしまうので、食べ始める前に取り除くのが一般的。つまり、蕎麦とつゆに移ったスダチの香りを楽しみながら味わうものなので、噛みごたえのある田舎蕎麦のほうが素のままで飽きずに食べることができるだろう。
乾麺は水に10〜15分程度浸してからゆでるのが、生麺のような食感に仕上げるコツ。蕎麦をゆでたら、冷水でヌメリをしっかりと洗い流す。スダチの香りを殺さないように、あっさりめのつゆをかけ、たっぷりとスダチを並べて召し上がれ。
太郎兵衛 そば本舗
住所:山形県寒河江市本町2-6-44
TEL:0120-14-2207
www.tarobe.co.jp
食欲のない日に最適な、ネバネバ系「ぶっかけ」
オクラやナガイモといった粘りのある野菜には免疫強化や胃腸を保護する働きがあり、夏バテ防止のためにも積極的にとりたい食材だ。また、ツルッと食べられるため、食欲のない時にも最適。そんな栄養価の高いネバネバ食材をたっぷりのせた「ぶっかけ」は、まさに夏場の点滴のような蕎麦だ。
野菜の他、ナメコや納豆、とろろ昆布などのネバネバ食材もプラスして、ネギや大根おろしなど薬味を添えれば、満足度の高い一杯が完成。「ぶっかけ」には、やや濃いめのつゆが合うため、蕎麦も力強い香りを誇る在来種などを選ぶのがいいだろう。「こそば亭」の生蕎麦は、細切りながらコシが強く、歯切れが心地いい。ゆでる時には、麺を切らないように注意しながら優しくかき混ぜて、ゆでた後は氷を入れた冷水でしめるのがポイント。ただし、冷水に漬けすぎると麺が硬くなるため、5〜8秒を目安に引き上げるように調理するといい。
古流手打ちそば処 こそば亭
住所:新潟県妙高市大字美守681-1
TEL:0255-72-8628
www.kosobatei.jp
香ばしい「胡麻クルミ」タレが、より蕎麦の味を引き立てる
鰹出汁が効いた、醤油ベースのスタンダードなつゆに飽きたら、ぜひ試してほしいのが「胡麻クルミ」のつけダレ。まずは香りを引き出すためにクルミを炒り、胡麻と一緒にすり鉢でする。そこへ味噌と砂糖少々を加えて混ぜ、ペースト状にする。さらに、あっさりめのめんつゆを加えて延ばしていき、好みの濃さに仕上げる。すり鉢がない場合は、ブレンダーやミキサーなどを代用するとよい。麺つゆは一気に加えずに、濃さを確かめながら少しずつ加えていくのがポイント。
胡麻とクルミの香ばしさが凝縮されたタレに合わせるならば、蕎麦の風味が強く感じられる挽きぐるみがお薦めだ。さらに、細切りであれば、たっぷりとタレが絡むので、双方の味わいを存分に楽しむことができる。ひと口すすれば、濃厚なタレの香りと、奥深い蕎麦の香りがあいまって、長い余韻が口いっぱいに広がっていく。食中酒を合わせるなら、焼酎や泡盛のオン・ザ・ロックがお薦めだ。
そば富泉
住所:埼玉県川口市北原台3-10-23
TEL:048-235-2788
www.tomisen.com
極太麺の食感を楽しむなら、 ストレートに「もり」がお薦め
蕎麦自体の食感や味わいを堪能したいのであれば、やはり「もり」が王道。柚子の皮を練り込んだ柚子切などの変わり蕎麦、布海苔を用いたへぎ蕎麦、あるいは上品な甘みが楽しめる更科など、季節や地方によって、さまざまな個性を楽しめるのが蕎麦の魅力。なかでも北海道の極太ちぢれ麺は特にお薦めしたい。
勢いよくすすり上げるのは困難なほど、豪快に波打った麺。まるで蕎麦がきのような弾力のある食感は、「蕎麦の醍醐味はのど越しのよさ」というイメージを見事に覆す。箸で引き上げてツルツルいただくのではなく、もぐもぐと噛み締めて食べるのだが、その味わいもまた独特。やや土っぽい蕎麦の香りが、噛めば噛むほどふんわりと立ち上ってくるように感じられる。
個性的な蕎麦に、手の込んだ薬味は不要。刻みネギやもみじおろし、ワサビがあれば十分だ。つゆではなく、塩を少しつけて食べてみるのもよい。
手打ちそば さくら
住所:北海道札幌市清田区平岡公園東1-12-5
TEL:011-882-8131
http://shop.soba-sakura.com
※Pen2020年8/15号「夏の麺喰い。」特集よりPen編集部が再編集した記事です。